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車にも、家にも、街にも、新エネルギー産業を創造する蓄電池

2012年7月31日(火曜日)

1.新たなエネルギー産業に欠かせない蓄電池

低炭素社会の構築に向け、蓄電池の重要性が高まりつつあります。蓄電池は充電して繰り返し使える電池のことで、二次電池とも言います。蓄電池は、これまで主にパソコンや携帯電話等のモバイル機器用に使用されており、私たちの生活にとても身近なものとして存在しています。それが、蓄電池の大容量化や高密度化に向けた技術開発が進展してきたことにより、エコカー減税の対象車である電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)といった車載用電池や、スマートシティに欠かせない定置用蓄電池としても活用されるようになってきています。

車載用としての蓄電池は、エネルギー密度が重要になります。特に電気自動車は、ハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車と比べると、電気のみを動力として走行するため、電池容量の大きいことが重要な要素になります。電池を大きくすれば一定の容量は確保できますが、自動車に搭載できる電池のスペースは限られるため、小さなサイズで大きな容量であることが求められるのです。エネルギー密度向上のための技術は日々進化し続けていますが、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車市場に続いて、電気自動車市場も立ち上がってきました。さらに、自動車だけなく、鉄道や船舶への応用も始まりつつあります。JR東日本では、蓄電池駆動電車システムの実用化を目指した取り組みが行われていますし、商船三井等では、太陽光発電と蓄電池(リチウムイオン電池)を活用したハイブリッド船の開発も行われています。

定置用としての蓄電池は、昨年度の東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故による電力不足に伴い、停電対策・節電対策として、その重要性が改めて認識されました。節電は、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building and Energy Management System)で各機器の電力消費量を「見える化」して節電を促したり、自動的に制御したりすることでも可能になってきていますが、蓄電池を使うことにより、夜間に蓄電池に電気を貯めておき、電力需要の高まる昼間、利用することが可能になります。これまで電気は、発電したら使わなくてはならないものであり、大量の電気エネルギーを安価に貯めることは難しかったのですが、大型の蓄電池が登場したことにより、電気を使わない場合は一定のエネルギーとして貯めることができるようになってきました。これにより、電力消費量を平準化でき、ピークカットが可能になります。

電力消費量の平準化だけではありません。再生可能エネルギーの導入においても、蓄電池は重要な役割を果たします。太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーは、天候によって発電量が大きく左右されるため、安定的に電力を供給することは容易ではありませんでした。しかし、蓄電池を利用することにより、こうした問題を解決することが可能になるのです。

この他、防災の観点から、太陽光発電などの再生可能エネルギーと蓄電池を併せて導入することも考えられています。また、家庭用としては、電気自動車を蓄電池として活用することも行われつつあります。

CO2削減やエネルギーの効率化には、消費電力の見える化や消費電力のコントロールといった省エネだけではなく、太陽光発電のような再生可能エネルギーによる創エネと、これまで述べてきた蓄電池による蓄エネの連携が重要だと言われています。省エネ機器の使用や消費電力の見える化による節電では限界があるため、時間を超えて電力を融通できることが求められているからです。また、再生可能エネルギーの本格的導入には時間がかかることが予想されるため、当面は、作った電気をいかに有効に活用するかということが課題になります。こうしたことからも蓄電池がポイントになると言えるでしょう。

スマートシティやスマートコミュニティ構想では、地域でのエネルギー需給の効率化が検討されていますが、そこでは創エネと発電したエネルギーの蓄エネ、そして、それらの需給バランスをコントロールする制御システムが必要とされています。

このように大きく期待される蓄電池ですが、普及に向けては、まだ発展途上にあると言えます。車載用では、さらなるエネルギー密度の向上が課題となっており、現状の蓄電池の次の世代の電池(経済産業省では革新的二次電池、文部科学省では次々世代二次電池と言う)の研究開発が進められています。さらに、車載用と定置用に共通して挙げられる大きな課題はコストです。電気自動車では全体のコストの約半分を電池のコストが占めるとも言われています。また、定置用蓄電池の価格は現在、家庭や小規模事業所向けのものでも100~200万円もするため、電気料金の削減分で回収するのは難しい状況です。経済産業省では、予算総額210億円をかけて、本年から定置用リチウムイオン蓄電池を購入する家庭や一般事業者に補助金を出しており、自治体も含め、補助を行う等、蓄電池の普及促進の取り組みを行っていますが、それもまだまだ十分とは言えない状況です。

【図1】蓄電池市場の広がり
【図1】蓄電池市場の広がり

2.蓄電池導入促進のポイント

蓄電池の導入促進には、コスト低下が課題ですが、この課題を解決する方法も考えられています。

1つは二次利用です。二次利用とは、例えば、車載用として利用した蓄電池を、その後、定置用として再利用することです。蓄電池は、充電と放電を繰り返す過程で劣化し、電池容量が低下していきます。劣化すると、車載用のように高エネルギー密度を必要とするものには使えなくなりますが、定置用は一定の電池容量を保持していれば良いため、残存容量が未使用時の70~80%あれば、十分利用可能です。そこで、蓄電池のコストを二次利用による収入でカバーすることにより、車載用蓄電池の価格を下げようというのです。

日産自動車では、EV「リーフ」の電池の残量や温度の推移、いつ何回充電したかといった情報をデータセンターに収集、解析しており、こうしたデータを活用して二次利用の事業化を推進しようとしています。また、オムロン、旭化成ホームズと共同で、将来的な電気自動車の電池の再利用を視野に入れた住宅用蓄電システムの開発にも取り組んでおり、今後、こうした自動車メーカーと住宅メーカーの連携も拡大していくと見られます。

コストを下げるポイントの2つ目は、異なる特性を上手く組み合わせることです。蓄電池には、鉛蓄電池やリチウムイオン電池、大型のナトリウム硫黄電池(NAS電池)等、様々な種類があります。また、電気を貯めることができる蓄電装置(デバイス)としては、蓄電池の他にもキャパシタや燃料電池等もあり、それぞれが異なった特長を持っています。異なる蓄電池や蓄電デバイス同士を上手く組み合わせて使うことにより、機能や性能の向上を図り、利用者の経済的負担を軽くすることが可能になります。

例えば、電気自動車におけるリチウムイオン電池とリチウムイオンキャパシタの連携はその良い例と言えます。電気自動車では、車がスピードを落とす時の力をモーターに伝えて発電し、電気エネルギーとして回収して(回生エネルギー)、エネルギー効率を向上させています。現在、電気自動車のバッテリーには主に高エネルギー密度であるリチウムイオン電池が用いられていますが、リチウムイオン電池は充放電を繰り返すことで劣化するという特性があります。この弱点を克服するために、電気エネルギーを瞬時に貯め込むことができ、また、充放電を繰り返してもほとんど劣化しないという特長を有するリチウムイオンキャパシタを組み合わせて活用することが考えられています。

旭化成FDKエナジーデバイスは、リチウムイオン電池とリチウムイオンキャパシタを組み合わせたハイブリッドバッテリーを開発し、リチウムイオン電池の劣化を抑えることに成功しています。

このようにして、電池の寿命を延ばし、長く使うことが可能になれば、利用者の経済的負担を軽くすることができます。また、電池の長寿命化は、先に述べた二次利用を実現する上でも、非常に重要になってきます。どちらもライフサイクルを通して電池の価値の最大化を図ることがポイントになっているのです。

3.蓄電池の利活用を支えるシステム

二次利用を実現するには、電池の状態や使用履歴の情報を収集し、劣化の度合いを予測、残価を評価する技術が必要です。蓄電池の情報を収集、解析し、評価するシステムは社会インフラの1つとして、ICT企業に大きな役割が期待されています。

また、異なる蓄電池・蓄電デバイスを組み合わせて利用するためには、用途やタイミングに応じて適切に使い分けるための制御システムが必要です。今後、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタに代わる蓄電池や蓄電デバイスが開発され、それぞれ、その時々で適切な使い分けが求められるでしょう。その際には制御システムが重要になると考えられます。

蓄電池を利活用するためのシステムは、産業競争力の強化の面からも重要です。民生用のリチウムイオン電池では、日本のメーカーが世界シェアトップを走ってきましたが、韓国・中国の追い上げが目覚ましく、昨年、韓国には逆転されました。今後も、成長が期待される車載用や定置用の大型電池市場の覇権を巡り、激しい競争が繰り広げられるでしょう。政府も、本年1月に「蓄電池戦略プロジェクトチーム」を設置し、具体的な政策の検討を行っていますが、蓄電池単体で、コスト競争力に優れた韓国・中国と戦うのは難しいと言えます。蓄電池単体ではなく、システムとして開発を考えていくことが必要でしょう。サービスも含めて付加価値の高い仕組みを作ることが、今後はより一層重要になると考えられます。

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長谷川 誠 (はせがわ まこと)
【略歴】株式会社富士通総研 環境事業部 シニアコンサルタント
入社以来、技術経営(MOT)関連の調査研究やコンサルティングに従事。
最近は、環境関連技術の出口戦略策定支援、ICTのヘルスケア分野への適用、先端技術を活用した新規ビジネス企画を担当。