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海外先進事例に学ぶ「顧客経験価値を改善する次世代金融サービスとは?」

2012年6月20日(水曜日)

1.環境変化に対応した新金融サービスの必要性

少子高齢化や所得格差の拡大、それに付随する消費者の価値観の変化に伴い、今や様々な業態でそのサービス提供形態が大きく変化しています。例えば、コンビニ業界は、公共料金の代金収納をはじめ、今ではほとんどの店舗にATMを設置するなど、単なる日常品の小売店から金融機能の一部を担うサービス拠点として進化しています。こうした流れの中、金融機関もそのサービス提供形態を変化させる必要があると考えます。これまで、日本の多くの金融機関は店舗における来店者数の多さ、それに付随して発生する事務の多さ、煩雑さに対応するため、効率性を重視したサービスを提供することに主眼を置いてきました。しかしながら、現在、多くの金融機関では単純事務をATMやインターネットバンキングにシフトしてきたことにより、顧客とのリレーションが希薄化していることが問題になっていると考えます。

コンビニのような異業種とのサービスが競合する中、金融機関も従来のトランザクションの効率化を重視したサービス提供からの変化が求められています。すなわち、金融機関としてターゲットとしたい顧客を見極め、その顧客がどのような商品やサービスを望んでいるのかを明らかにした上で提供することが求められています。海外金融機関では、市場の環境変化に合わせて、特定の顧客層に狙いを定めてサービス提供を行うことで成果を上げている金融機関が存在します。

2.海外先進事例にみる顧客経験価値改善に向けたアプローチ

2.1 若年層・学生専用のインターネットバンキングによる顧客の獲得:PNC Virtual Wallet

特定の顧客に対して、専用のサービスを提供することで良い経験を与える事例として、米国の金融機関PNC Bankが2008年より開始したPNC Virtual Walletが挙げられます。同行のサービスは、若年層、特に大学に通う学生をターゲットとし、彼らにとって便利で使いやすいインターネットバンキングサービスを提供することにより優良顧客として囲い込み、将来的にも活用してもらうことを目指しています。

PNC Virtual Walletが提供するサービスの特徴としては以下のポイントが挙げられます。

  • まず1点目に、個人の家計管理を簡単に行えるようにした点です。カレンダー形式で毎月の収支を管理し、取引履歴より預金残高が不足する危険な日"Danger Day"を教えます。また、金利の異なる複数口座間での資金移動を自由に行うことができ、余裕資金を手軽に貯蓄に回すことができます。
  • 2点目に、学生とその両親を巻き込んだサービス提供も特徴的で、口座の取引状況を学生とその両親が確認し、例えば、教科書の購入代金で必要な金額と期日をカレンダー上に入力すると、それを確認した両親が振り込むことが可能です。
  • 3点目に、直感的でわかりやすい操作画面が挙げられます。PNC Virtual Walletでは、前述のカレンダー上での収支計算や口座間での資金移動をビジュアライズされたわかりやすい画面で操作でき、スマートフォンやタブレットPCにも対応しています。

PNC Virtual Walletでは、学生や若年層にとって利便性の高い専用サービスを提供し、将来にわたって長く取引を行ってもらえることを目指しています。ATMの設置台数は全米で6番目に多く、支店のある地域以外にも積極的にATMを設置することにより利便性を確保しています。こうした取り組みが功を奏し、PNC Virtual Walletはその誕生当時から注目を集め、この4年あまりで100万口座を獲得しました。

2.2 対面型デバイスを用いた新型店舗での接客:Royal Bank of Canada

カナダ最大の金融機関であるRoyal Bank of Canadaでは、新型の店舗において接客専用の対面型デバイスを活用し、近隣顧客の注目を集めています。このデイバスはテーブル型端末と呼ばれるもので、iPadに代表されるタブレット型PCをテーブルに埋め込んだ形をしており、操作はiPadと同じく画面上をタッチすることで可能となります。

この端末では、動画などを用いて自店行員や金融商品・サービスの紹介、資産運用シミュレーション、そして子供向けのパズルといった機能が提供されています。その他、興味深い活用方法として、店舗近隣の住民に配布されたダイレクトメールを活用したキャンペーンが挙げられます。このキャンペーンでは、ダイレクトメールの裏側にある専用コードをテーブル端末の画面上で読み込ませることで、その場でキャンペーンに当選したかどうかをお知らせし、当選者にはコーヒーチェーンのクーポン券がプレゼントされます。このダイレクトメールキャンペーン自体に商品勧誘の意図はなく、まずは近隣住民に来店してもらい、そこで行員がコミュニケーションを図ることを目的としています。テーブル型端末は、あくまで顧客とのコミュニケーション手段であり、顧客との会話を通じて、その金融ニーズを探り出し、徐々にその関係を深化させていくのです。Royal Bank of Canadaでは、このキャンペーンを実施したところ、従来のキャンペーンと比較して、そのレスポンスが5倍に向上しており、その後のセールスでも良い結果を残しているとのことです。

3. 国内金融機関におけるアプローチ例

ここまで見てきたように、海外の金融機関ではそれぞれの顧客に対して特別な経験を与えるようなサービスを提供することによって、彼らを優良顧客として囲い込みを行い、末永く活用してもらうことを目指しています。今回ご紹介したサービスはどれも先進的であると同時に、それぞれの顧客のニーズに合ったサービスを提供しているのが特徴的です。こうしたサービスを提供するに際しては、どのような顧客に対して、どういうサービスを、どう提供していくのか詳細な検討が必要です。現に上記のサービス事例では、どちらも1年以上のリサーチ期間を設け、外部機関を活用し詳細な検討を重ねた上でサービス提供を行っています。

富士通総研では、単なる海外事例の情報提供だけでなく、個々の金融機関が置かれた環境や自行の戦略を踏まえた上で海外金融機関の先進事例から導き出される知見を適用し、新たな金融サービスを企画するご支援を行っています。例えば、新しいインターネットバンキングを企画する取り組みを地域金融機関のお客様と共同で実施しております。この他、新たな金融サービスの提供や顧客への提供チャネル改善に向けての検討が必要な際には、お気軽にお問い合わせください。

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松原SC

松原 義明(まつばら よしあき)
(株)富士通総研 金融・地域事業部 シニアコンサルタント
2007年 富士通総研入社。入社より一貫して金融業界向けのコンサルティング、調査業務に従事。現在は海外金融機関における先進サービスに関する調査業務、国内金融機関におけるソーシャルメディア、スマートデバイス活用に関するコンサルティングを実施。