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マイナンバー法案国会提出へ!官民含め早急にシステム改修の準備を!

2012年6月13日(水曜日)

2012年2月14日、マイナンバー法案が閣議決定され、国会へ提出されました。法案が成立すれば、2013年に第三者機関が設置され、2014年10月に個人にマイナンバーの通知、2015年1月以降にマイナンバーの利用が開始される予定となっています。当面、社会保障と税における適用が中心となりますが、マイナンバーは社会全体に大きな影響を与え、将来の日本を支える重要な基盤となるでしょう。すでに総務省や自治体ではシステム改修の検討を始めていると思いますが、民間企業でも人事や経理などシステムへの影響について検討をすべきでしょう。ここでは直近の2015年1月をターゲットに考えていきます。

1. 自治体においては税業務を中心に大きな影響が

最初に、自治体について見ていきましょう。まずマイナンバーを導入するための準備作業として、番号の通知と番号カードの交付を行う必要があります。自治体においては、2014年10月頃から番号の通知事務が開始され、2015年1月から番号カードの交付が開始されます。番号通知については住基ネットの時と同様な手順となるでしょうが、番号カードの交付については若干の注意が必要です。番号カードは原則として全員に交付され、住基カードと異なった番号が記載され、写真も貼付されます。しかし、ICカードなのかプラスチックカードになるのかは未定です。いずれにせよ、住基ネットのシステムを改修せねばならず、今後の政省令の行方をウォッチしながら、運用を詰めていく必要があるでしょう。

2015年1月からのマイナンバー利用では、まず税業務が大きな影響を受けることになるでしょう。すでに、総務省の番号制度に係る地方税務システム検討会では調査研究報告書(*1)を公表し、自治体における地方税システムへの影響について取りまとめを行っています。住民基本台帳システム、住民税システム、宛名管理(住登外)システム、収納滞納管理システムをはじめ、固定資産税など各種税システムへの影響が考えられます。マイナンバー付きの確定申告書が税務署に提出されると、税務署では所得税の申告情報や法定調書の情報をマイナンバーで集約し、その情報を電子データとして市町村に送信することになります。市町村ではそのデータを受信してマイナンバーをキーとして住民と突合し、住民税の課税のための情報としてデータベースに格納します。同様に、企業からの給与支払報告書や年金保険者からの公的年金支払報告書がマイナンバー付きの情報として送付されてきます。そして、所得税の納税義務が無い人の住民税の申告書もマイナンバー付きで受け付けることになます。マイナンバーを使って住民のデータと突合・集約する業務プロセスに変更するだけでなく、給与支払報告書等の課税資料の調査や扶養親族の調査についても、マイナンバーを使った業務プロセスに変更する必要があるでしょう。システム面においても、そのような業務運用を前提としたシステムの改修が必要となってきます。ただし、番号利用開始日の属する年分の所得税や住民税から開始することになっており、2015年1月1日が番号利用開始日であるなら、実際にマイナンバー付きの申告書や給報が送付されてくるのは、2016年1月以降ということになります。

2. 社会保障関連業務、法人番号、職員向け業務にも注意を

また、法案第6条(利用範囲)で規定されている事務で自治体に関するものを取り上げると、年金の資格取得や確認、国民健康保険の保険給付の支給や保険料の徴収に関する事務、介護保険の保険給付の支給や保険料の徴収に関する事務、福祉における児童、母子家庭、障がい者などに関する支給事務や生活保護の決定・実施、災害対応における被災者生活再建支援金の支給に関する事務などについて利用されることになっています。当然ながら、これらに関するシステムに改修が加わります。

そしてマイナンバーだけではなく、法人には法人番号が付番されることに注意しなければなりません。前述した税や社会保障関係で、宛名としての法人に法人番号を付番するだけでなく、業者管理や契約管理などにも付番が必要になるでしょう。

以上は自治体の住民向け業務に関する影響ですが、職員向けの業務についても影響が出てきます。民間企業と同様、自治体も職員に対して源泉徴収事務や特別徴収事務などを行っていますので、源泉徴収票や給与支払報告書の作成、共済組合への事務手続きなどはすべてマイナンバー付きで実施することになります。人事給与システムなどの改修作業が必要になるでしょう。また、税務当局に提出する申告書、届出書、調書等に番号を記載することになりますので、財務会計システムへの影響も考慮する必要があります。

3. 民間企業においても、人事・経理でマイナンバーの影響が

次に、民間企業の場合について見てみましょう。民間企業の場合は、特に人事給与や経理の関係でシステム面での影響が出てくると考えられます。

法案第6条(利用範囲)の範囲で考えると、年金においては、年金の資格取得や確認、給付を受ける際に利用されることになっており、厚生年金、共済組合における年金の給付の支給に関する事務のほか、確定給付企業年金や確定拠出年金の給付の支給、農業者年金の給付の支給に関する事務にも適用されることになります。厚生年金や共済組合の手続きだけでなく、企業年金においてもマイナンバーを付番していく必要があります。

労働保険には、雇用保険と労災保険がありますが、雇用保険における資格の取得や確認、労災保険における保険給付の支給や社会復帰促進事業などにも活用されることになっています。労働保険関係の手続きにおいては、従業員のマイナンバーを活用することになるでしょう。

医療保険や介護保険においては、保険給付の支給や保険料の徴収に関する事務に適用されることになっており、被保険者やその被扶養者をマイナンバーで管理することになるでしょう。

税においては、税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等、自治体へ提出する給与支払い報告書等にマイナンバーを記載することになります。ただし、2015年1月1日が番号利用開始日とすれば、源泉徴収については、その月から開始となりますが、源泉徴収票や給与支払い報告書の提出は翌年からとなります。調書等について見てみると、金融の実務においては、調書提出義務のある金融取引について、マイナンバーを記載したうえで税務当局へ資料を提出することになります。このような金融取引を管理するシステムでは、マイナンバーを管理するためのシステム改修が必要になるでしょう。一般の企業においても、個人宛の報酬などの支払い調書はマイナンバー付きで提出することになり、システム化しているところは改修が必要になります。

4. 医療情報についても、政府の動きを注視すべき

今回の法案では、医療情報など機微な情報については扱っておらず、来年の通常国会に提出される特別法案でその内容が審議されることになります。しかし、政府のロードマップを見る限り、医療情報に関するマイナンバーの利用開始時期は社会保障や税と同じく2015年からとなっており、病院などではその検討状況について今から注視していく必要があるでしょう。

この特別法については、社会保障サブワーキンググループと医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会が検討を行うことになっており、実務的な執行指針については厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会で検討されることになっています。ここでは、患者等の権利と医療等のサービス提供側が負うべき義務、患者等の自己情報コントロール権の確保、医療等のサービス提供側の免責、情報の取得と利活用などが主なテーマとなることと思われますが、病院などでは医療情報システムにいかなる影響を及ぼすか、注意を払って見ていくことが必要です。

政府のロードマップでは、2016年から情報連携基盤とマイ・ポータルの運用開始を予定しています。しかし、これらについてはまだ運用方法も不明確です。まずは2015年からの第一次利用を円滑に進めていくため、官民含め早急にシステム改修の検討とその準備を実行していくべきでしょう。

そして、給付付き税額控除制度や統合的な医療情報システムなど、諸外国のレベルに追いつくためのスタート地点にようやく到達することができるのです。

注釈

(*1) : 番号制度に係る地方団体の税務システムのあり方に関する調査研究報告書

関連書籍

「マイナンバー(共通番号)制度と自治体クラウド」地域科学研究会

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【調査・研究】


榎並 利博(えなみ としひろ)
(株)富士通総研 経済研究所 主席研究員
【略歴】1981年 東京大学卒業、富士通株式会社入社、96年 富士通総研へ出向、2010年より現職。2002年度~2003年度 新潟大学非常勤講師、2006年度~2007年度 中央大学非常勤講師、2007年度~2008年度 早稲田大学公共政策研究所客員研究員、2009年度~現在 法政大学非常勤講師。
【著書】「マイナンバー(共通番号)制度と自治体クラウド」地域科学研究会 2012年、「自治体クラウド」学陽書房 2011年、「共通番号(国民ID)のすべて」東洋経済新報社 2010年、「市民が主役の自治リノベーション」ぎょうせい 2007年、「自治体のマネジメント改革」ぎょうせい 2005年など