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ソーシャルメディア活用のポイントは“アジェンダ設定力”

2012年5月9日(水曜日)

企業におけるソーシャルメディアの活用が進んでいる。公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会が実施した昨年11月の調査結果によると、企業サイトにおけるソーシャルメディアの公式ページ・公式アカウント開設率は69.5%に達した。ただ、話題になっているから開設したものの、反応が少なく今後どうすれば良いのか分からないという声も聞かれる。企業はソーシャルメディアにどのように取り組めば良いのだろうか?

1.ソーシャルメディアは繋がりを支援するグラフ機能を持つ

まず、企業における取り組みを考える前に、ソーシャルメディアの特徴を整理しておく。ソーシャルメディアとは、ユーザー同士が情報を交換して成り立っているメディアのことだ。この説明だけでは、ブログなどのCGM(Consumer Generated Media)と同じだと思う人もいるだろう。実際、ソーシャルメディアに該当するサービスの定義は人によって異なり、ブログをソーシャルメディアに入れているケースもある。

ただ、ソーシャルメディアの代表例とされるFacebookなどにはブログにはない、ユーザー同士の繋がりを促進する仕掛けが組み込まれている。このユーザーとユーザーの繋がりをソーシャルグラフと言う。これは、専門的になるが、物の繋がり方を研究する数学のグラフ理論をベースにしたものだ。ソーシャルグラフに沿ってメッセージが伝播する時、直接的な友人という強い繋がりだけでなく、友人の友人という弱い繋がりの関与の低い人たちにも伝わるため、メッセージが瞬時に幅広く伝播することになる。ここでは、ソーシャルグラフを持つ狭義のソーシャルメディアを対象として説明していく。

【図表1】ソーシャルメディアにおける情報の伝わり方 【図表1】ソーシャルメディアにおける情報の伝わり方

2.ソーシャルメディアの4つの取り組みパターン

メッセージが伝播しやすいという特徴は、企業にとってリスクとリターンの両面をもたらす。会社としては公式にソーシャルメディアに取り組んでいなくても、従業員がソーシャルメディア上で不適切な発言をしたために、謝罪という形で巻き込まれ、リスクを被った企業も多い。逆に、積極的に取り組んで、メッセージが届きにくい低関与層に安価でアプローチしてリターンを得ている企業もある。

企業におけるソーシャルメディアの取り組みは、「リスクvsリターン」「公式には何もしないvs積極的に取り組む」という2軸の4象限で整理できる。では、積極的に取り組んでリターンを得たパターンにおける成功の秘訣を、企業の取り組みの公開情報を富士通総研が解釈して紹介していく。

【図表2】ソーシャルメディアへの取り組みパターン 【図表2】ソーシャルメディアへの取り組みパターン

3.日本コカ・コーラは自社サイトのソーシャル化に力を入れる

日本コカ・コーラのマーケティングはメディアの変化と共に進化している。以前はCMや屋外広告などのペイドメディアの露出最大化が中心だった。しかし、若者に対してCMではメッセージが届きにくくなると、オウンドメディア(自社サイト)に力を入れ、1,000万人を超える会員を獲得するようになった。日本コカ・コーラが今、力を入れているのがソーシャルメディアだ。

自社サイトの会員数は日本有数の規模に達しているが、日本の人口と比べると、まだ到達できていない層が多いと同社は考えている。そこで、ソーシャルメディアの繋がりの機能を自社サイトに埋め込み、関与が低い層にアプローチしようとしている。同社では、個別製品ブランドの価値を定義し、それをどのようなメッセージで消費者に伝えればよいかを考え、コミュニケーションを設計しているという。

4.日産はソーシャルメディアに合わせて組織を変えた

EVリーフのソーシャルメディア活用で代表されるように、日産自動車はソーシャルメディアを積極的に活用している。この取り組みを加速させるために、同社では情報発信のインフラ整備に加えて組織も変更した。

日産では、同社に関心を持つ人が興味を持つようなストーリーを発掘し、配信していくことを心掛けている。これを手軽に行うために、撮影機材などを常備した「日産グローバルメディアセンター」を開設し、ゴーン社長やエンジニアのインタビューをタイムリーに配信している。

また、同一テーマについて広報と宣伝が異なるトーンで発信すると、メッセージに一貫性がなくブランド毀損の可能性もある。これを防ぐために、広報部、マーケティング、ブランドの部門間の壁を崩し、「グローバルマーケティングコミュニケーション部門」として統合した。

5.マスメディアとは異なり、アジェンダ設定が重要

従来のマスメディアへの取り組みでは、伝えるメッセージだけでなく、伝える力=有効な広告枠の確保が成功のための重要な要素であった。これに対し、ソーシャルメディアでは、伝える力はソーシャルグラフという形でサービスに組み込まれているので、何を目的としてどんなメッセージを送るかという、アジェンダ設定(話題の提起)がより重要になる。

従来と同じ発想で新商品の紹介をメッセージしても、ソーシャルメディアでは伝播する可能性は低くなる。日本コカ・コーラや日産のように、自社ブランドの価値とユーザーの興味を理解した上で、ソーシャルメディア上でユーザーの共感を生むメッセージを生み出す、アジェンダ設定力の養成や仕組み作りが、ソーシャルメディアで顧客に刺さるポイントとなる。

【図表3】ソーシャルメディアへの取り組みのポイント 【図表3】ソーシャルメディアへの取り組みのポイント

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富士通総研には産業系シンクタンクとしての長年に渡る調査・研究・分析の実績があります。さらに、コンサルティング・サービスを通して培ったノウハウで「お客さまの現場で役立つリサーチ・サービス」をご提供します。


田中 秀樹(たなか ひでき)
株式会社富士通総研 ビジネス調査室 室長代理
マーケティング戦略支援コンサルティング業務に従事。ネットビジネス領域では、ビジネストレンドと生活者動向を踏まえた上で、ECビジネスや企業のWebサイト活用を支援。
著書に『インターネット広告実践法』(共著)の他、『インターネット白書』等に記事原稿を多数掲載。