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3つの機能で組織営業力を強化する

~重点顧客の深耕による“売上作り”~

2012年4月13日(金曜日)

1. 売上作りが求められる国内製造業

日本の製造業を取り巻く環境は年々厳しくなってきています。改めて、長期的に製造業の業績推移をみると、国内市場の飽和、韓国や欧米メーカーの攻勢によって売上高は頭打ちとなり、利益率は低下傾向にあります(【図1】)。

【図1】国内製造業の業績推移~50年の歩み~
[出所:財務省 法人統計より作成]
国内製造業は売上高は頭打ちとなり、利益率も伸び悩んでいる。 【図1】国内製造業の業績推移

また、この10年間で海外製造業と比較すると、研究開発投資が収益に十分に結びついているとは言い難いことが見て取れます(【図2】)。

【図2】各国製造業(上場企業)との業績比較
[出所:経済産業省 2011年版製造基盤白書(ものづくり白書)]
研究開発投資を収益に結びつけることができない傾向にある。
【図2】各国製造業(上場企業)との業績比較

日本の製造業は、“原価低減活動”という言葉に代表されるように、品質を維持しつつコスト削減を行い、競争力の強化に努めてきました。この不断の努力は今後も必要ですが、厳しい競争環境の中で根本的に売上をどう作り、その中でいかに利益を確保していくかについて見直しが迫られています。つまり、コスト削減を主眼においた業務の効率化だけでなく、改めて「市場やお客様そのものの変化を捉え、その中で組織的に先手を打ち、売上を作る」ために何をすべきかが問われています。さらに言えば、そこから研究開発や広告宣伝といった将来に向けた投資を行い、既存商品の改良や新規事業を立ち上げることで、さらなる売上を作っていくという好循環モデルをいかに作り上げていくかが課題となっていると考えられます。

本オピニオンでは、お客様に最も近い“営業”を起点として組織全体で売上を作るための取り組み例を紹介します。実際にこの取り組みを実施したソリューション企業A社では、重点顧客に対し「中期的視点から商談を能動的に仕掛け、実現に必要なリソースを組織的にセットアップし、顧客に価値を届けている」という点で示唆に富んでいます。これを「売り先」、「売りもの」、「売り方」の観点で分解すると、組織的に営業活動を展開し、重点顧客を深耕する「組織的売上作り」ための3つの機能が浮かび上がってきます。ここでの「売上作り」とは売上、利益両方を含んでいます。

2. 組織的売上作りに取り組むソリューション会社A社

ソリューション企業A社はICTに関するプロダクト、サービスを、国内中心に展開していますが、売上・利益は年々縮小傾向にあったため、強い危機感を持っていました。国内における市場展開はほぼ頭打ちになっていたことから、本格的にグローバル展開をしていくことは避けて通れない状況でした。このような状況下でA社は日本からグローバルにビジネス展開していくお客様に追随し、価値を提供していくことが自社の業績改善のための第一歩だと考え、得意先の1つであるグローバルメーカーZ社を重点顧客と定めました。Z社のアカウント部門になるA社の営業部は、この重点顧客から、「3年かけて現在の1.5倍の売上を達成する」という目標を立てました。このチャレンジングな目標を実現するためには、Z社のグローバルビジネス展開に呼応し、名実ともに「お客様の戦略的ビジネスパートナー」に変革することが必要でした。そこで、この営業部では新たに営業企画室を設置し、目標達成に向けて中期的視点で対応を行う専門組織を立ち上げました。営業企画室には売上責任はなく、既存の営業ラインと連携してビジネスの開拓・仕込みを行うことと、重要案件のリソースを確実にセットアップすることが大きなミッションでした。営業部全体で取り組みを進めるにあたり、課題が2つありました。

  • [課題1] 重点顧客であるZ社が海外事業を強化していく中で、A社に対して案件が来るのを待つだけでなく、どれだけ商談を能動的に仕掛け、案件を開拓・掘り起こしていくか
  • [課題2] A社のプロダクト、サービスのラインナップが多岐にわたる中で、案件に応じて必要な人的資源をいかにセットアップするか

【図3】取り組み目標と課題
A社は重点顧客であるZ社の成長を支えることで売上作りを目指した。 【図3】取り組み目標と課題

[課題1]への対応

[課題1]の背景には、商談のステータス管理を行う仕組みを使って蓄積された情報を改めて分析した結果、引き合いに対する案件がほとんどであり、能動的にアプローチして商談化している案件が少ないことが明らかになりました。そのため、より多くの案件を積極的に作り出し、目標額以上の案件を仕込まないことには、目標達成は難しいと考えていました。その対応として3つの手を打ちました。

  1. Z社の事業の中でも今後の成長性の高い事業と、そこでのA社の競合状況を見極める
  2. その中で、中期目線で獲得/発掘すべき案件候補を次の「ビジネスの矢」として作る
  3. 現在進行中の案件と獲得/発掘すべき案件の関係性を大局的に確認することで、現在進行中の案件を単発で終わらせるのではなく、継続性や案件間の整合性を持たせ、お客様に対し、次の案件への取り組みの必要性を喚起する

上記のような手を打ち、検討した内容をディスカッションペーパーとしてまとめ、Z社へアプローチしていきました。

[課題2]への対応

[課題2]の背景は、過去に商談が具体化した際に、A社のプロダクト・サービスの価値を訴求するために専門家を同行させることができず、受注機会を逃してしまったという苦い経験から来るものでした。また、受注後においてもスピーディーにリソースをセットし、対応することで、お客様満足度の向上を狙うことがA社のプレゼンスを上げるためには必須だと考えていました。この課題に対しても、3つの手を打ちました。

  1. 「ビジネスの矢」作りと並行し、担当営業を中心に獲得/発掘すべき案件の実行計画を作成する
    ※実行計画は、取り組みの領域全体像(目指す姿)、全体像の中で、どこから、どう攻めるか、必要な体制、推進スケジュール、売上計画と投資計画といった項目から構成されている
  2. 投資が必要なものについては、「ビジネスの矢」を評価する指標を定め、組織内での投資対象を明確にする
  3. 実行計画を担当営業、営業企画室の部長クラスと必要関係部門(プロダクト部門、サービス部門など)とで共有し、組織的取り組みの方向性を合意し、体制を整える

営業企画室を中心に目標達成に向けた活動を強力に推進した結果、戦略的案件の仕込みが飛躍的に増え、顧客上層部とのリレーション強化につながっていることから、A社の中での本格グローバル展開のモデルとしての期待も高まっています。

3. 事例からの示唆 ~組織的売上作りに向けた3つの機能~

本取り組み事例は、営業を起点として組織的に重点顧客に深く入り、成長に寄与することで売上を作っていく活動だと言えます。このような組織的な営業展開を「売り先」、「売りもの」、「売り方」という3つの観点で分解すると、売上作りに向けた3つの機能を見い出すことができます。これらの機能は三位一体であると考えています。

【図4】売上作りに向けた3つの機能
3つの機能でビジネスを仕込み、価値を提供することで売上を作る。 【図4】売上作りに向けた3つの機能

(1)「売り先」の変化を捉える ~顧客洞察機能~

これはお客様の取り巻く環境やお客様自身の変化を捉え、そこから見えてくる今後の課題やニーズを仮説として立てる機能です。A社では、売上目標達成に向けて、重点顧客(Z社)だからといってやみくもに案件に手を出すのではなく、重点顧客の事業の中でも成長事業と、そこでのA社の競合の状況を見極めて、優先取り組み対象を明確化することを実施しています。その際、重点顧客の「売り先」「売りもの」「売り方」が中期的にどのように変化していくか、その変化が重点顧客自身にどう影響するのかを洞察することがビジネス機会の創出につながるといえます。また、成長事業である場合、A社は多くの競合と戦う可能性も出てくるため、重点顧客とのリレーションや攻略状況を考慮することも必要になります。

【図5】顧客洞察機能
お客様の変化を捉え、今後発生する課題やニーズを仮説設定する。 【図5】顧客洞察機能

(2)「売りもの」を企画する ~ビジネス企画・開発機能~

3つの機能の中でも最も重要なのがビジネス企画・開発機能です。これは、顧客洞察を通じて仮説として立てた課題やニーズに対し、どのようなシナリオで何を価値として提供していくかを、必要投資も含めて具体化する機能です。A社では、優先取り組み対象を明確化した後に提供すべき価値やビジネス展開を目論み、その手段としてどのようなプロダクトやソリューションが必要か、また実現に向けてどの部門と連携していくかを「ビジネスの矢」として具体化し、能動的にアプローチを続けています。ここには中期的な成果の刈り取りを見据えた投資も必要になりますが、企画・開発した「ビジネスの矢」を評価する枠組みを定めており、どこに投資すべきかを決める判断基準を持っています。これによって、声の大きさや勘ではなく客観的な評価を行い、その上で取り組み意思を明確化していると言えます。

また、実際に「ビジネスの矢」をお客様に投げかけていくに当たっては、これまでの取り組みや現在推進中の案件との整合性や関連づけを事前に行うことで、お客様に対する訴求力を上げようと工夫しています。また、一般的に営業は目先の数字を追ってしまいがちですが、営業企画室の存在によって中期的視点や関連案件とのシナジーを意識しつつ、「ビジネスの矢」を仕込むことを可能にしています。

このようなビジネス企画・開発機能によって、分散した提案ではなく整合のとれた提案内容にすることができ、社内での連携促進が可能になります。

【図6】ビジネス企画・開発機能
「ビジネスの矢」を仕込み、どれだけ商談化できるかが鍵となる。 【図6】ビジネス企画・開発機能

(3)「売り方」をセットし、実現する ~ “思い”と“リソース”のインテグレート機能~

この機能は、商談から受注、受注後から価値提供・アフターフォローまでを完遂するために、誰がどのような役割分担で何を行うかを明確にする機能です。各関係部門と重点案件について、その取り組み意義や会社として目指す方向性を共有・合致させ、お客様への対応体制をセットすることは売上作りの非常に重要なポイントになります。A社では、組織的にビジネスを開拓するに当たって、優先取り組み対象とした案件毎に実行計画をまとめています。そして、営業企画室がハブとなり、必要関係部門の“思い”と顧客へ価値を届けるための“リソース”のそれぞれをインテグレートすることで、専門家を交えた組織的な商談活動を展開し、受注の可能性を高めると共に、受注後から案件を完遂するまでの体制を構築していると言えます。

4. おわりに

本オピニオンでは、重点顧客の深耕を通じて、売上を組織的に作っていくために必要だと考えられる3つの機能を提示しました。富士通総研では、市場変化に機敏に対応し、組織的に価値を届け続けることのできる営業機能はどうあるべきか、その中で実際にどのような営業活動を展開すれば売上・利益につながるかについて、お客様への支援や富士通グループでの実践を考察し、知見として蓄積しています。組織的な売上作りに向けた改革の手段は様々ですが、本オピニオンが組織的営業力強化を課題とされる方の一助になれば幸いです。

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大原 宏之

大原 宏之(おおはら ひろゆき)
株式会社富士通総研 産業事業部 シニアマネジングコンサルタント
製造業、流通業における経営管理、業務改革、PMO運営、IT戦略立案、ITガバナンス構築など、戦略立案から定着化までを支援するコンサルティングに従事。


黒木 昭博

黒木 昭博(くろき あきひろ)
株式会社富士通総研 産業事業部 コンサルタント
製造業の企画業務を中心としたコンサルティングに従事。 現在は新規事業・サービス企画、営業改革の企画立案~定着化支援を中心に活動。