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  4. 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギー導入効果および電力価格への影響

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギー導入効果および電力価格への影響

2012年1月31日(火曜日)

1.はじめに

2011年3月11日に発生した東日本大震災の津波によって発生した福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電所の稼働率の引き上げ、原子力発電所の新設などを前提とした我が国のエネルギー政策は大幅な見直しを求められることとなった。原子力発電所に対する国民感情を鑑みるに、原子力発電所の新設は非常に困難であり、中長期的には原子力に頼らない社会の検討も必要不可欠である。

しかし、現状では原子力発電所の新設を行わない場合、LNGなどの火力発電所が主要な役割を担うと思われ、化石燃料の大幅な輸入増によって我が国のエネルギー安全保障に深刻な問題を生じる。

よって、再生可能エネルギーの普及は重要な選択肢の1つと言え、2012年7月に導入が予定されている再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギー普及効果には大きな期待がもたれている。FITの買取価格・買取期間などの詳細に関しては、これから議論が開始されるが、本報告では、ある仮定を置いて、FITによる再生可能エネルギー普及効果及び費用に関して検討を行う。

2.評価手法

本研究では、モデルによるシミュレーション分析を行う。その際のモデルの構造に関して解説を行う。

(1)我が国の送電網は各々10電力会社が所有しており、10送電網間は連結されている(【図表1】)が、本モデル内では系統連結の容量以上の電力融通はできないと仮定した。

【図表1】送電網間連結
(出典:資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会電気事業分科会
第8回市場環境整備ワーキンググループ会合 配付資料
)
送電網間連結

(2)また、電力の周波数は東日本と西日本で50Hzと60Hzの2種類が存在するため、本モデルにおいても電力は2種類存在するとした(【図表2】)。

【図表2】2種類の電力周波数 2種類の電力周波数

(3)電力需要に関しては、4シーズン(春(3~6月)、夏(7~9月)、秋(10~12月)、冬(1~2月))、3時間帯(昼間(8~13時、16~23時)、ピーク(14~15時)、夜間(0~7時))に分類している。

(4)再生可能エネルギーに関しては、バイオマス、風力発電、太陽光発電、地熱を対象とした。各都道府県における各再生可能エネルギーのポテンシャル量については、バイオマスはNEDO「バイオマス賦存量・利用可能量の推計」、風力発電、太陽光発電、地熱に関しては、環境省「再生可能エネルギーポテンシャル調査(平成22年度)」を参照した。

(5)各都道府県の電力需要に関しては、資源エネルギー庁「都道府県別エネルギー消費統計(2009年)」を参照した。

3.再生可能エネルギー固定価格買取制度設計

再生可能エネルギー固定価格買取制度に関しては、今後より詳細な設計が行われるが、ここでは1例として、買取価格を、太陽光に関しては30円/kWh、風力、地熱、バイオマスに関しては15円/kWhと仮定して、再生可能エネルギーの普及および費用に関して検討を行った。

福島第一原発事故以降、原子力発電所の新規建設は非常に難しく、また原子力発電所を原則40年で廃炉にするという法改正案の提出が検討されている。そこで、原子力発電所に関する仮定として、1)新規原子力発電所の建設無し、2)稼働後40年を経た原子力発電所は廃炉という減原発を仮定した。参考までにFITを導入しないシミュレーションも併せて実施し、FIT導入による再生可能エネルギー普及効果を評価した。

【図表3】に電源構成の比較を行っている。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)導入の場合:「FITあり」では、風力発電のシェアが大幅に上昇する。2020年に21.2%であり、減原発シナリオの0.7%と比較すると大幅な上昇である。また、他の再生可能エネルギーに関しても、太陽光が2020年に8.5%のシェアとなるなど、再生可能エネルギーの全電源に占めるシェアは36.5%となる。ここでは、風力や太陽光の発電の不安定性・不確実性に関しては考慮しておらず、本シミュレーションでは不安定性・不確実性対応のための蓄電池の導入費用は含んでいない。また、実際に計画段階から発電に至るまでのいわゆるリードタイムに関しては考慮していない(*1)ことに留意が必要である。

【図表3】電源構成(発電量ベース)
(出典:富士通総研経済研究所) 電源構成(発電量ベース)

この結果より、FITを導入することにより、36.5%という非常に高い再生可能エネルギーの普及が可能となる。では、FITによる賦課金であるが、家庭用、産業用ともに発電量当たり同じ費用負担を行うとした場合、2.3円/kWh程度となる。

今回のシミュレーションでは、FITの透明性を前提としている。実際に再生可能エネルギー固定価格買取制度を導入する場合には、系統連結などの費用、優先接続、買取価格・期間の見直し、リードタイムを考慮した固定価格の設定など、多くの不透明な要因が存在する。これらの不透明要因は、再生可能エネルギーの普及を阻害するばかりでなく、再生可能エネルギー普及に要する費用が増大する結果にもなりかねない。

4.買取価格で大きく影響を受ける導入量

実際の買取価格に関しては、まだ決定されていないが、ここでは、買取価格による再生可能エネルギー普及の関係に関して感度分析を行った。太陽光発電の買取価格を、25円/kWh、28円/kWh、30円/kWhの3種類とした場合のシミュレーションを実施したところ、買取価格を25円/kWhとした場合、太陽光発電の導入量は0となり、買取価格により導入量は大きな影響を与えることが分かる。過剰な費用負担、導入を促進しない価格設定にならぬよう、慎重な価格設定が重要である。低すぎる価格では、再生可能エネルギーの普及効果が低くなり、高すぎる価格では電力価格の大幅な上昇となる。

【図表4】買取価格と太陽光導入量の関係(GW)
(出典:富士通総研経済研究所) 買取価格と太陽光導入量の関係

5.おわりに

今回、日本の電力網を10電力に分解した詳細な技術モデルを用いて、FITの再生可能エネルギーの普及効果およびその費用に関して検討を行った。その結果によると、再生可能エネルギーのシェア(発電電力量ベース)は2020年には36.5%となり、欧州に比肩するレベルまでそのシェアを高めるポテンシャルが日本に存在することを示している。しかし、その実現には、買取価格・期間の設定・見直し、優先接続・給電ルールの明確化など、制度の透明性の確保が必要不可欠である。

当然、再生可能エネルギーが普及し、中東依存度低下、温室効果ガスの削減が達成されるとしても、電力価格が大幅に上昇することにより、我が国産業の海外移転、家計を圧迫する結果となったら、それこそ将来の世代に大きな負担を残すことになりかねない。本シミュレーションは、家庭用・産業用の区別を行わずに電力価格への賦課金を評価した。その結果は2.3円/kWhとなった。再生可能エネルギーの普及には、化石燃料輸入量の減少(エネルギー安全保障)、温室効果ガス排出量減少(環境)の効果があるが、2.3円/kWhの費用負担は企業、家計に無視できない負担が生じる。現在、定期検査に入った既存の原子力発電所が再稼働に入ることができない状況であり、このままでは全ての原子力発電所が稼働停止する可能性がある。以前のオピニオン「原子力発電所稼動停止によるわが国経済への影響」で、原子力発電所が全て稼働停止することにより電力価格が19.4%上昇することを指摘したが、震災以降、電力価格が高くなる方向性が色濃くなっている。高くなる電力価格は、企業の国際競争力を削ぎ、海外への流出を招く危険性がある。それでは、将来の雇用が確保できず、雇用不安というツケをまわすことになろう。

今後、調達価格等算定委員会で詳細設計が行われるが、我が国で今後、重要な役割を担う再生可能エネルギーの普及と費用負担の最小化の両立に向けた制度設計を期待したい。

本報告では、速報値として再生可能エネルギー固定価格買取制度の再生可能エネルギー普及効果および費用に関して、ある一定の仮定を置いての評価を行った。今後、制度の詳細が明らかになった場合、新たな仮定での評価を行う予定である。

注釈

(*1) : リードタイムに関しては、太陽光発電では数か月程度、風力発電では3年程度、地熱発電では10年程度と、再生可能エネルギーの種類によって大きく異なる。

関連オピニオン

「原子力発電所稼動停止によるわが国経済への影響」

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【調査・研究】


濱崎 博(はまさき ひろし)
株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員 MSt (Master of Studies) in Manufacturing, University of Cambridge, Wolfson College, the United Kingdom. MSc (Master of Science) and DIC (Diploma of Imperial College) in Energy Policy, Imperial College Centre for Environmental Technologies (ICCET), Imperial College of Science, Technology and Medicine, University of London, the United Kingdom.
1995年 富士総合研究所(現 みずほ情報総研)入社、1997年 富士通総研経済研究所入社、2007年~2009年 国際公共政策研究センター出向、2009年5月~ 国際公共政策研究センター客員研究員。