GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. 見える化だけでは意味がない~環境経営のPDCAを回すために~

見える化だけでは意味がない~環境経営のPDCAを回すために~

2011年12月26日(月曜日)

1.節電を契機に、環境経営を“ワガコト”とする

節電は昨夏以来、ビジネスや社会の基本合意になりました。「限りある資源をムダなく使おう」は、それ以前から当たり前の概念ではありましたが、電力・エネルギーの利活用に関して、ムダとはどういうことなのか、何をもってムダと判断するのかの考え方、ムダを誰がどのように無くすかについての取り組み方、等々、国を挙げて、その概念が進化・変容したといえます。

例えば企業においては、
・ビジネスにおいて、活動に比して過多な電力・エネルギー消費を行っていないか
・オフィス、工場、店舗などの空調、照明、設備の使用にムダはないか
・不要な機器を稼動させていないか
・設備不良などによる電力・エネルギー損失はないか
などの問いかけは、かつてはファシリティ管理者や環境マネージャーなどの社内専門家に閉じたものでしたが、今や全社の課題、ひいては社員一人ひとりの課題として捉えられるべきものになってきています。誰かが、どこかで、やってくれるだろうという“ヒトゴト”の時代が終焉したといえるでしょう。

経営から見れば、ムダ(=コストの損失)を最小化するのは当然のことです。電力・エネルギーに関するムダ取りは、コストへのポジティブなインパクトを与えるだけでなく、地球の限りある資源の保全や、企業の社会責任としての環境負荷低減という果実ももたらします。節電はその活動の一部に過ぎませんが、その積み重ねが、持続可能な社会形成に間違いなく貢献することになるのです。

ビジネスを維持・成長させ、顧客・株主・社員などの期待に応えるとともに、限りあるエネルギーをムダなく上手に使い、コスト抑制を図りながら、CO2排出量削減といった環境負荷低減の責任もしっかりと果たす。それをここでは環境経営と呼んでいます。ビジネス目標として、売上・利益などとともに環境負荷低減の具体的指標を掲げ、それらを確実に達成し続けて行く環境経営を、“ヒトゴト”でなく“ワガコト”として実践・推進できる企業でないと、資源・エネルギーが減少し、市場の競争・プレッシャーが増大するこの時代では生き残ることはできません。

2.見える化の落とし穴 ~わかって、できないと意味がない~

環境経営の基本である電力・エネルギーのムダ取りには、見える化が欠かせないとよく言われます。その影響もあってか、見える化ブームとまで呼べるほど、世の中には様々なエネルギー見える化ツールが溢れてきています。確かに、企業全体、事業所・部門、あるいは建屋、フロア、個々人の単位に至るまで、どのような目的で、いつ、どこで、どのようにエネルギーが使われているのか、そうした情報が入手でき、それが見えるようになっていることが、極めて重要であることは言うまでもありません。

しかし、見えること自体が目的・ゴールではありません。見える化で取得できた情報の意味や背景を十分理解し(=わかる)、そこから必要な行動を起こし、成果を出していく(=できる)。つまり、“見える”、“わかる”、“できる”をつないで、サイクルとしてまわし続けることこそが重要です。見える化ツールの導入だけでは、“わかる”、“できる”には行き着きません。“見える”を“わかる”にするためには、電力・エネルギーの利活用に関する適切な分析による、情報の読み解きが必要になります。また、“わかる”を“できる”にするためには、情報の読み解きから正しく施策を導き、それを実行するスキーム作り、並びに、その継続性を担保するモチベーション作りが必要になります。そこまで取り組んで初めて、環境経営実践のベースラインが構築されることになるのです。

3.環境経営のPDCAを回す

富士通総研環境事業部では、こうした考え方に基づいて、環境経営の実践に向けたノウハウの蓄積に努めてきました。

例えば、“見える”を“わかる”につなげるための電力・エネルギーの分析手法については、企業・行政・学校など、9業界約100社の主要分析手法に関して広域調査を実施し、その結果を「電力分析ナレッジ」として整理・体系化しています。環境マネージャーのお客様の中には、節電に取り組むにあたって、自分たちがこれまで実施してきた分析が本当に的を射ているのか、他社ではどんな分析が行われているのか、といった疑問や関心を持たれている方が少なくありません。「電力分析ナレッジ」では、様々な分析手法の目的、実例、ロジックから期待効果等まで網羅し、そのあらましを効率的に理解・把握できるように取りまとめているため、お客様は自社の取り組みをベンチマークしたり、自社に必要な分析手法について選択したり、判断したりすることが可能になるとともに、様々な新たな気づきも得られます。お客様が分析に関する知見を向上し、適切に情報を読み解けるようになることは、具体的な施策の導き出しにつながります。

【図1】電力分析ナレッジ イメージ

電力分析ナレッジ イメージ

また、“わかる”を“できる”につなげるための施策や実行のスキーム作りにおいては、例えば、電力・CO2削減手法のベストプラクティス調査を継続実施しています。具体的な節電・省エネ施策を、全社を巻き込んで実行するためには、どのように興味や関心を喚起すれば良いのか、その方法や工夫としてどんな手を打てば良いのか、また、インセンティブにはどのようなものがあって、期待効果としてはどれくらいあるのか、などについて、構造的にまとめています。それは、施策や実行のスキーム作りのみならず、取り組みを“ヒトゴト”ではなく“ワガコト”にするためのモチベーション作りとしても、多くのヒントをもたらすものと期待しています。

そのように、お客様の環境経営実践に貢献するため、単に見える化にとどまらない、環境経営のPDCAサイクル(見える・わかる・できる)構築と定着に向けたノウハウの蓄積を進めております。

【図2】電力・CO2削減手法 ベストプラクティス調査 イメージ

電力・CO2削減手法 ベストプラクティス調査 イメージ

4.富士通の環境経営ダッシュボード

ここで、環境経営実践の決め手として、富士通グループが自ら導入を進めている「環境経営ダッシュボード」についてご紹介します。これは、見える化だけでなく、“わかる”から“できる”までのサイクルを回すための非常に重要な基盤となっています。

ピーク電力削減(ピークカット)や使用電力量削減においては、リアルタイムの電力使用状況の把握と一元的なマネジメントが欠かせません。昨夏、富士通は、政府からの大口需要家に向けた前年比15%のピークカット要請に際して、対象となった全39拠点における1時間ごとの電力利用状況や目標値との差分、前年比較などに加え、生産計画等を踏まえた当日の需要の先読みやピーク予測などを、30分毎に更新表示できるダッシュボードを整備しました。これを活用して、例えば、気温や生産ラインの稼働状況によって使用電力の目標値を超過しそうな場合には、拠点間で相互調整を実施したり、自家発電設備を稼動したりするなどの施策を講じて、生産活動を止めることなく節電目標を達成しています(参考値…ピークカット20~41%:7/1~9/9の実績・制限緩和事業所除く、使用電力量削減7%:4~9月の実績)。電力の使用状況や見込みを分析し、その予兆を捉え、適切な対策を実施することにより、節電目標と生産計画の両立を可能にしました。

環境経営ダッシュボードは、節電対応だけでなく、経営情報から環境活動まで、様々なソースから最新の情報を収集・加工することにより、経営層、事業部門長、工場長、一般の従業員、環境マネージャーなど、各プレーヤーの目的に合った情報をタイムリーに提供します。

例えば、環境マネージャーであれば、事業所ごとのCO2排出量目標に対する月次のアラート表示、面積あたりのCO2排出量比較、前年同月比や前月度比較などの情報を定量的に把握することにより、エネルギーマネジメントの適切な推進を図ることが可能です。また、一般社員に向けては、自部門の電力使用状況や目標値との差分などが容易にわかるようになっているほか、一部の部門では、個々人ごとの電力使用状況がリアルタイムに確認でき、自分の努力がどれくらい省エネに貢献しているかわかるなど、モチベーション向上や、ひいてはワークスタイルの変革にまでつなげる仕掛け作りに取り組んでいます。

さらに、廃棄物管理、化学物質管理、ISO14001運用、環境教育などのコンテンツも配し、改正省エネ法対応では、エネルギーデータの収集・集計、報告書作成機能も担います。そのように、法令遵守から省エネ・コスト削減、環境負荷低減活動に至るまで、環境経営実践に向けたポータルとして、環境経営ダッシュボードは広範な活用領域を担っています。

【図3】環境経営ダッシュボード イメージ

環境経営ダッシュボード イメージ

5.ツールとプロセスを両輪に

富士通グループは、環境経営のサイクルをインフィニティループとして表現しています。その実現には、見える化を担うツールと、“わかる”・“できる”までをつなげるプロセスを両輪とした取り組みが必要となります。これからの企業活動にとって欠くことのできない環境経営を、ぜひ“ワガコト”として実践しましょう。

【図4】インフィニティループ

インフィニティループ

関連サービス

【環境経営】


平野 篤(ひらの あつし)
株式会社富士通総研 環境事業部 シニアマネジングコンサルタント
富士通入社後、コンサルティング事業本部を経て、2007年(株)富士通総研出向。富士通の環境リファレンスプロジェクト支援などを経て、2011年4月環境事業部。
環境経営、プロモーション、コミュニケーション、省庁からの調査・研究案件などに従事。

上野 伸一(うえの しんいち)
株式会社富士通総研 環境事業部 シニアコンサルタント
富士通入社後、CRMソリューション企画・開発などを担務ののち、コンサルティング事業本部を経て、2007年(株)富士通総研出向。富士通の環境リファレンスプロジェクト支援などを経て、2011年4月環境事業部。
環境経営、エネルギーマネジメント、システム企画、予兆管理などに従事。