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持続可能な行政経営の実践に向けて-公共施設マネジメントの導入 第3回

マネジメント視点を取り入れた公共施設維持管理の実践ポイント

2011年11月21日(月曜日)

これまで「公共施設マネジメントの導入」をテーマに、第1回では近年、国・地方を問わず財政危機問題が深刻化する中、各自治体がマネジメントに取り組む意義と背景を、第2回では各自治体の実態を交えながら、マネジメントを導入する上での課題等について言及してきた。

今回は、シリーズ最終回として、実効性の高いマネジメント方策を立案するためには、どのような視点に立ち、実態の分析に取り組むべきかについて紹介することとする。

視点1:将来的な需給バランスの変化を踏まえた施設配置の最適化に向けた分析

近年、急速な少子化の進展等により、地方部を中心に各自治体では、自らが保有する公共施設(延床面積ベース)の多くを占める義務教育施設において、空き教室の増加に歯止めがかからない傾向が続くなど、施設を介した公共サービスの需給バランスが大きく変動している状況にある。

このような状況下、公共施設の維持管理にかかるコストの圧縮と公共サービスの質的な向上を両立させるためには、今後の人口構造の変化に伴って、将来的に施設を介した公共サービスの需給バランスがどのように変動するのかを的確に見極めた上、施設の統廃合や用途転換、多用途化等による施設配置の最適化の可能性を分析する必要がある。

【図1】需給バランスの変動を踏まえた施設配置の分析イメージ

【図1】需給バランスの変動を踏まえた施設配置の分析イメージ

視点2:計画的な建替え・改修による維持管理コストの最適化に向けた分析

これまで多くの地方自治体では、公共施設の維持管理に関して、建物や設備の不具合が顕在化した後、修繕等の部分的対処が実施されてきた。しかし、このような対処療法的な修繕では、費用が割高となったり、修繕が一時期に集中したり、場合によっては、十分な予算が確保できずに不具合が放置されたまま利用に供しているケースも決して少なくはない状況にある。

その一方、今後は担税世代の減少に伴う税収の減少、増加する高齢者に対する社会保障給付関連費用の拡大に伴い、公共施設の維持管理に投じることができる投資余力は、大幅に低下していくものと見込まれる。

このような実態を踏まえ、市民の貴重な生命と財産を守るためには、公共施設の維持管理にかかる将来コストの規模・時期を複数のシミュレーションのもとに可視化した上、優先順位を明確にした計画的な建て替え・改修プログラムの検討および実践によって、維持管理にかかるコストの最適化を図る必要がある。

【図2】公共施設の維持管理にかかる将来コストの規模・時期の試算イメージ

【図2】公共施設の維持管理にかかる将来コストの規模・時期の試算イメージ

視点3:担い手やサービス提供方法の見直しによる管理運営形態の最適化に向けた分析

現在、各自治体が所管している公共施設の中には、観光や文化、スポーツ・レクリエーション施設等を中心に、行政が直営で維持管理する意義が薄れているものも未だ決して少なくはない状況にある。

このような状況下、より少ないコストで利用者満足度の高い公共サービスを提供するためには、民間活力の導入や市民との協働等を含めた担い手、開館日や開館時間の拡大・縮小など、施設を介したサービス提供方法の見直しに取り組み、管理運営形態の最適化を図る必要がある。

【図3】管理運営形態の最適化に向けた分析イメージ

【図3】管理運営形態の最適化に向けた分析イメージ

各自治体がマネジメントの視点を取り入れた公共施設の維持管理を実践するためには、以上のような視点を踏まえつつ、前例にとらわれることなく、各施設のあり方を抜本的に見直すとともに、職員はもとより、施設を介した公共サービスの受益者である市民に対する説明責任をしっかりと果たすことが必須条件と考えられる。

富士通総研では、今後も引き続き、各自治体の実情に即しながら、公共施設マネジメントの目的・目標を明確にした中で、より効果的・効率的に情報を収集・分析し、真に有用な公共施設の維持管理戦略づくりを適切にサポートする所存である。

シリーズ

持続可能な行政経営の実践に向けて-公共施設マネジメントの導入 第1回

持続可能な行政経営の実践に向けて-公共施設マネジメントの導入 第2回

関連サービス

【行政経営改革の支援】
様々な利害関係が錯綜する公共分野特有の問題点を踏まえ、行政計画策定支援など、行政経営の基盤となるPDCAサイクルの確立を支援します。


長谷川 一樹(はせがわ かずき)
(株)富士通総研 公共事業部 マネジングコンサルタント
総合計画の策定支援、行政評価システムおよび公共施設マネジメントの導入支援などの行政経営に関わるコンサルティング業務のほか、都市計画に関わるコンサルティング業務にも従事。

櫻田 和子(さくらだ かずこ)
(株)富士通総研 公共事業部 シニアコンサルタント
総合計画の策定支援、新地方公会計制度および公共施設マネジメントの導入支援などの行政経営に関わるコンサルティング業務のほか、地域活性化に関わるコンサルティング業務にも従事。