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BOP市場開拓と社会的企業としての経営革新

2011年11月10日(木曜日)

1. 注目されるBOP市場

新興国・途上国の低所得階層を主対象としたBOP(Base of Pyramid)ビジネスが注目されています。年間所得3,000ドル以下のBOP層は約45億人で、世界人口の7割を超え、5兆ドルの市場規模に達すると言われています。新興国・途上国の経済成長に伴って、従来、国際社会で援助対象として扱われていたBOP層が、新たなボリュームゾーンとして、世界経済の「次の市場」になると考えられているのです。欧米のグローバル企業の一部は、10年ほど前から、国際機関や政府、NPOと連携しながら、BOP市場開拓を進めています。日本でも、2010年10月に経済産業省がBOPビジネス支援センターを設立するなど、BOP市場への関心が高まってきました。

BOP市場を開拓するためには、これまで日本企業が強みを発揮してきたハイエンド市場や、近年積極的に取り組んでいるミドル市場の事業展開とは、発想を変える必要があります。BOP層は、貧困に伴う様々な社会的課題を最も多く抱えています。このため、社会課題の解決につながるビジネスへのニーズが強い市場と言えます。また、市場インフラの整備が不十分なため、従来の大量生産・流通システムの適用は困難です。個々の地域の実情に適合したビジネスモデルの構築が重要となります。市場へのアクセスを含めて、生産・流通・販売を円滑に行うためには、地域のパートナーとの協働は重要な検討項目です。

2. CSR活動とBOPビジネス開発の関連付けを

持続的なBOPビジネスが成立するためには、対象地域における社会課題の解決と事業継続を保証する最低限の利益確保が必要です。社会課題解決に貢献する企業行動は、CSR(企業の社会的責任)活動でもあります。CSR活動とビジネスとの戦略的な関連付けによる経営革新の成否が、BOP市場開拓の重要なカギを握ります。

海外では、CSR活動の費用対効果について、社会とビジネスの双方への影響を考慮して評価する指標の開発が活発で、指標の利用企業も増えています。企業の利益最大化と社会の価値創造の同時実現を図る「共有価値の創造(CSV:Creating Shared Value)」という概念も提唱されています。

【図】BOPビジネスモデル構築の基本的考え方

【図】BOPビジネスモデル構築の基本的考え方

日本企業でもCSR活動自体は盛んです。日本経団連によれば、2010年度は、1社平均で3億8,500万円、経常利益の1.8%が社会貢献活動に充てられています。BOP層を対象とした活動に関与する企業も過半数を超えています。しかし、BOP層向け活動の約8割は寄付プログラムで、本業との関係も強くありません。大多数の日本企業ではCSR活動とBOPビジネス開発が戦略的に結び付いておらず、社内資源が有効に活用されているとは言い難い状況です。

3. BOP市場開拓を経営革新の契機に

CSR活動とBOPビジネス開発を戦略的に関連付けるためには、個々のプロジェクトレベルと全社レベルの双方において、これまでの対応を洗い直す必要があります。

プロジェクトレベルでは、対象地域における社会課題解決ニーズと自社資源を活用した商品開発ポテンシャルとの整合性を確認する必要があります。同様に、CSR活動についても、本業や自社の強みとの関連性を確認する必要があるでしょう。このような洗い直し作業の結果を経て、再整理された社会課題解決型のBOPビジネス(あるいは本業と密接に関連したCSR活動)については、その成果を、企業価値と地域に対する社会価値の双方から評価する仕組みを導入することが求められます。ここでいう企業価値には、単なる財務パフォーマンスだけではなく、ノウハウ蓄積やブランド認知、企業イメージ向上などの要素も含め、市場参入の効果を評価することになります。社会価値については、健康・安全・エネルギーなどのBOP層の基本的ニーズへの対応だけでなく、教育・事業機会の創出を通じた所得増などへの貢献が評価対象となります。

全社レベルでBOPビジネスを円滑に進めるためには、社会価値と企業価値の両立を主題とする経営革新を伴います。本業を通じたCSRを根幹とした企業方針の明確化は不可欠です。社内体制では、経営企画部門、グローバルビジネス部門、CSR部門等の連携緊密化が求められます。また、全社的に社会価値と企業価値を評価する指標を導入し、行動計画に落とし込み、PDCAサイクルを含む経営システムの導入も検討すべきでしょう。さらには、これらの取り組みをステイクホルダーに伝えるコミュニケーション戦略の検討も求められます。

このように、BOPビジネスの検討は、単なる新興市場の開拓ではなく、社会課題の解決と企業利益の両立を実現するために企業に経営革新を求めるものです。BOP市場開拓を1つの契機として経営革新を図り、グローバルに汎用的なビジネスモデルを構築することで、社会的に存在価値のある企業として長期的な競争力の維持につなげていくことを検討すべきではないでしょうか。

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【調査・研究】
富士通総研には産業系シンクタンクとしての長年に渡る調査・研究・分析の実績があります。さらに、コンサルティング・サービスを通して培ったノウハウで「お客さまの現場で役立つリサーチ・サービス」を実現してきました。

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【特別企画コンファレンス「BOP市場開拓とソーシャルビジネスイノベーション」】
先進国経済が混迷する中、新市場として注目されるBOP市場。グローバル企業の最新動向、日本企業の取り組み事例を通じ、BOP市場で日本企業が国際競争力を強化する為のビジネス戦略と経営革新のあり方を示します。


生田上席主任研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)
(株)富士通総研 経済研究所 主任研究員
1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社、
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社
専門領域:エネルギー・環境政策 、環境・CSR関連経営戦略、環境ビジネス・関連市場動向、環境シナリオ・ビジョン、グリーンIT