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  4. 価値観マーケティング ネット対リアル編第4回 商材によって変わるネット戦略

価値観マーケティング ネット対リアル編 第4回

商材によって変わるネット戦略

2011年11月2日(水曜日)

1. 消費者タイプ別のネットとリアルの使い分け

これまでの調査の結果、2つの価値観因子により分類した4つの消費者タイプの、消費行動におけるネットとリアルの基本的な使い分けは次のようなものであることがわかりました(【図1]参照)。

4つの消費者分類と基本的なネットとリアルの使い分け

【図1】4つの消費者分類と基本的なネットとリアルの使い分け

「ツバメ」タイプはリアル店舗で販売員から情報収集を行い、店頭で購入します。「タカ」タイプは、事前調査は行わず、いきなり店頭に来店して購入します。「ふくろう」タイプは、「ツバメ」とは反対に、ネットで情報収集を行い、ネットで購入します。「こうもり」タイプは、情報収集はリアル店舗で行うものの、購入場所はその時々で異なります。

しかし、商材や売場の特性によって、ネットとリアルの使い分けルールが表れる場合と表れない場合があります。

2. 商品特性による使い分けルールの影響の違い

価値観因子の購買スタイルへの影響

【図2】価値観因子の購買スタイルへの影響

第2回でご紹介したように(【図2】参照)、店頭でのコミュニケーション量が多い、という商品(売場)特性がある場合には、つながり志向(人見知り⇔他人OK)の影響が強まり、人見知りの「ふくろう」や「タカ」タイプはネットで、他人OKの「ツバメ」や「こうもり」はリアル店舗で購入する傾向がより顕著に表れます。

また、持ち帰る際の負荷量が多い、という商品特性がある場合には、外出志向(外出・刺激志向⇔巣ごもり・癒し志向)の影響が強まり、外出志向の強い「ツバメ」や「タカ」タイプはリアル店舗で、巣ごもり志向の強い「こうもり」や「ふくろう」タイプは、ネットで購入する傾向がより顕著に表れます。

反対に、店頭でのコミュニケーション量が少なく、持ち帰る際の負荷も小さい商材の場合には、価値観因子の影響を受けない、つまりタイプによってリアル店舗やネット店舗を使い分けていないことがわかりました。

小売業において、リアル店舗のみならずEC市場への展開を計画する際には、商材(売場)特性による消費者への影響を考慮しながら、販売戦略を考える必要があるといえます。

3. 店頭でのコミュニケーション量の多い商材のネット戦略

店頭でのコミュニケーション量が多い商材には、単価が高く商品選択に時間がかかる商材や、商品選択後に手続きが必要になる商材などが考えられます。今回調査したテレビ、携帯電話、腕時計などが該当します。こうした商材を取り扱う小売業は、見知らぬ他人とのコミュニケーションを嫌う「ふくろう」タイプを取り込む際には、店頭で行っている手厚い接客がかえって弱みにならないように、ネット上にコミュニケーション不要で商品選択や手続きが可能な仕掛けを提供する必要があると考えられます。

例えば、注文住宅のようなメーカー側とのコミュニケーションが、商品選択上重要になると考えられている商材でも、コミュニケーション量を少なくするネット化の工夫で成功している事例があります。ミサワホームは、住宅販売サイト「ミサワウェブダイレクト」を開設し、ネット上で住宅の仕様、価格、資金を検討することができる仕組みを提供しています。接客を受けるのは、正式見積り依頼後であり、購入前の検討に必要な情報のほとんどを、Face to Faceのコミュニケーションを介さずに提供することで、接客を嫌う「ふくろう」タイプの顧客に受け入れられていると考えられます。

このように、店頭でのコミュニケーション量の多い商材は、ネット化の際にコミュニケーション不要になるような仕掛けを用意することが成功のポイントと言えるでしょう。

また、コミュニケーション量を減らすという工夫は、リアル店舗においても有効なポイントと考えることができます。例えば、家具の製造販売で成功しているイケアは、これまでの一般的な家具販売スタイルである店頭での手厚い接客を行わず、ライフスタイルを喚起させる展示と、セルフ式の商品ピックアップという販売スタイルを採用しています。ネット上では組み立て家具のシミュレーションや、買い物リスト出力といった事前検討を支援する仕組みを提供していますので、「ふくろう」タイプでも、販売員に質問することなく、商品選択・購入することが可能になっています。

これまでは、店頭での手厚い接客はサービスの一部であると考えられてきましたが、コミュニケーション量を減らす工夫もサービスの一部と考え、ネットや店頭の販売戦略に取り入れることで、「ふくろう」タイプを含む様々なタイプの消費者を取り込むことができるでしょう。

4. 持ち帰る際に負荷が多い商材のネット戦略

販売員とのコミュニケーション量が少なく、重いもの・かさばるものといった特性のある商材は、利便性という明確なメリットがあるため、EC化が受け入れられやすいと考えられます。例えば、書籍販売のAmazonを利用している国内ユーザーは既に5000万人を超えるとも言われています。書籍購入に対する利便性を欲する消費者が非常に多かったと考えることができます。ただし、単に商品画像を並べるだけではなく、商品選択に必要な情報を提供する方法として、店頭での「立ち読み」機能や、読者レビュー表示などの工夫も行っています。

試着が必要と考えられる服や靴についても、返品可能にすることで、購入後も商品選択が可能であるという販売戦略により、EC市場を拡大させてきました。購入商品がフィットせずに返品作業という手間が発生するリスクを考慮しても、外出や持ち帰りの負荷を嫌う「こうもり」や「ふくろう」タイプが、こうした市場を支えていることが推測できます。

しかし、多様な商材をネットで購入できる環境が整ったとしても、外出を好み、店頭で商品選択をしたい、購入したい、という「ツバメ」や「タカ」タイプは大勢います。今後も店頭においては、「ツバメ」や「タカ」タイプを対象として、販売員とのコミュニケーションや刺激を提供する必要があるでしょう。既に、ネットランキング上位の食品を集めた百貨店催事などが盛んに行われていますが、いずれも大変人気があります。ネット販売で利便性を提供し、リアル店舗で刺激を提供する、といった連携によって、どちらの市場も活性化させることができると考えられます。

さて、4回にわたって連載してきた価値観マーケティング ネット対リアル編はこれで終了です。今後も、生活者の価値観と消費行動についての研究は継続しますので、また成果をご紹介したいと思います。

シリーズ

価値観マーケティング ネット対リアル編 第1回

価値観マーケティング ネット対リアル編 第2回

価値観マーケティング ネット対リアル編 第3回

関連シリーズ

不安な時代の価値観マーケティング 第1回

不安な時代の価値観マーケティング 第2回

不安な時代の価値観マーケティング 第3回

不安な時代の価値観マーケティング 第4回

関連サービス

【調査・研究】


安藤 美紀(あんどう みき)
(株)富士通総研 流通・サービス事業部 マネジングコンサルタント
1995年日本電信電話(株)入社、法人部門において流通企業向けコンサルティングに従事。
2005年富士通(株)入社、コンサルティング事業本部を経て、2007年(株)富士通総研出向。
小売業、サービス業、製造業の企業向け業務改革等のコンサルティングに従事。現在はBI、CRM、顧客分析を担当。