GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. みんな、つながる ~しなやかな強さを持つ社会の実現に向けて~

みんな、つながる

~しなやかな強さを持つ社会の実現に向けて~

2011年10月31日(月曜日)

1. 東日本大震災の想定外の事象とそこから得られた気づき

今回の大震災は「未曾有の」とよく形容されるように、従来には経験したことのない甚大な被害をもたらしました。東北3県を中心に北関東にまで及ぶ地震や津波による広域被災、原発事故による放射能被害や風評被害、電力危機など、想定し得なかった事態に次々と直面しました。

主な事象を列挙してみます。

  • 住民の生活を支える社会的基盤の喪失と業務停滞
    役所や職員、行政情報の喪失や毀損による公共サービスの停滞、広域避難による住民の分散、病院や医療従事者の被災、医療・介護情報の消失による医療・介護サービスの停滞、避難所などの過酷な生活環境など、住民生活の安心安全に大きく影響が及びました。
  • サプライチェーンの分断
    供給網を構成する製造拠点の被災により網が分断され、その影響は世界に及びました。また、網自身が複雑化・多段化しており、把握に時間もかかりました。
  • 電力問題
    安定供給のための大規模・集中型のシステムの脆弱性が一挙に露見しました。
  • 「共助」の重要性と有効性…自律的支援活動
    ボランティアの活動、企業間の支援協力など人的・物的支援にとどまらず、ソーシャルメディアによる情報流通など、様々な形の「共助」が生まれました。

このような事象から得られる「気づき」を整理してみると、次の2点に集約されます。

  1. 経済性や競争力を重視し効率化し過ぎた「集中」の弊害
    経済性、競争力強化を優先してきた企業活動の脆弱性と、そもそもリスク考慮に欠けた旧態然の制度やシステムのままの公共部門。
  2. 「共助」の有効性
    「公助」までが大きく損なわれた今回の事態では特に顕著になった「共助」の有効性。また、利用環境が整いつつあるSNSなどソーシャルメディアによる情報の流通も新たな「共助」の形の1つとして認識されました。

2. 経営の重要課題は競争力や効率性とリスク耐久力のバランス

日本は有数の地震国として、首都直下地震、東海沖地震、東南海沖地震の発生の危険も指摘されています。今回の東日本大震災は改めてこのような大規模災害への警告にもなりました。

企業の多くは直接の被災や電力問題などに対応し、事業継続性を確保するために、海外を含めた拠点の分散や調達先の複線化などの対策を強めています。

しかしながら、被害の局所化を図る目的で単純な分散を行うことは、効率性の損失や競争力の低下をもたらす可能性も孕みます。例えば、製品競争力強化のために調達先を固定化せざるを得ない特殊部品と汎用品の仕分けと、それぞれに合わせた的確な調達戦略、プロセス系生産事業の分散や非常時代替を考慮したプロセス標準化など、今回の大震災の被害への対応の中で明らかになった課題も多くあります。

結局、利益拡大のための競争力や効率性などとリスク耐久力の両方を共に向上・強化するための方策が求められ、その最適なバランスをどこに置くかが、今後の経営における重要な課題になります。

経済的価値とリスク耐久力

【図1】経済的価値とリスク耐久力

3. 公共の喫緊課題は地域単位の制度見直しと広域バックアップ

一方、公共部門では、今回の広域かつ甚大な災禍により、住民生活の基盤である行政機能や住民情報が損なわれ、住民生活の安心・安全は大変な危機にさらされました。原発事故も加わった広域避難などの事態に全く未経験、想定外の対応をせざるを得ない中、限りある職員の献身的な活動に依存せざるを得ない状況も続いています。医療や介護の分野も全く同様の状況に陥りました。

地域単位を基本に考えられた制度や制約の見直しと、非常時を想定した広域のバックアップ体制、情報のバックアップなどが喫緊の課題といえます。

住民情報、医療情報、介護情報などは、いずれも機密性の高い個人情報ですが、今回の事態を踏まえれば、十分なセキュリティを確保した上で共通番号、個人認証制度などを早急に整備し、さらに緊急時の利用環境も考慮した「いつでもどこでも」利用できる電子的な保管管理・利用システムなどの早急な構築が望まれます。

4. より存在感を増した「共助」の重要性

阪神大震災の時にも指摘され、以後、各種の災害などでも活動が目立つようになっていますが、発生直後の被災者支援やその後の生活支援などで「共助」の重要性が認識されています。NPO団体など多くの活動がありますが、今回は被災規模、広域性なども踏まえた従来にない取り組みが行われています。

さらに今回新たに存在感を見せたのが、SNSなどのソーシャルネットワークというインターネット上に展開されたコミュニケーション環境です。情報の信憑性の保証などの課題もありますが、公的な情報提供が不十分な中で大変大きな役割を果たしました。

従来の地域の「共助」を超え、新しい「共助」の仕組みの1つが機能したといえます。

5. 「人と社会をつなぐ」、そして、「みんな、つながる」

まずは人命、そして財産を守るために何ができるか、何をしなければいけないか。

今回の経験で改めて実感したのは、自然災害など物理的リスクに対する正面からの物理的な防御は限りがあるということです。

そこで、改めて「情報で守る」ということを考えたいと思います。

大変抽象的ですが目指すべき姿は、社会経済活動をなす全ての要素が「つながり」、必要に応じて補完し合いながら連携や協力をダイナミックに行い、どのようなリスクに直面することになっても耐え、はね返すことのできる「しなやかな強さを持った社会」ということになるのではないでしょうか。

このような社会の実現のためには、様々なレベルで様々なコミュニケーションと連携をバックアップする仕組みが必要であり、正に、情報やICTの活用によってその仕組みを創ることができると思います。

住民、企業そして社会の安心安全を「情報で守る」ということです。

「人と社会をつなぐ」、そして、「みんな、つながる」。

ICTのリーディングカンパニーとして、このような社会の実現に貢献していければと思います。

関連サービス

【ICTグランドデザイン】
富士通総研のICTグランドデザインコンサルティングは、ICTに関わる豊かな知見と最新の技術を活かし、経営の基盤となるICT環境・情報を的確にデザインすることで、経営革新の実現を支援いたします。

関連イベント

【富士通総研フォーラム2011「新たな変化への適応と成長戦略に向けた経営革新」】
震災被害、電力問題、円高リスクから海外展開が加速し、空洞化の進行が懸念される日本。
持続可能な企業経営革新とは? 空洞化を乗り越える変革とは?
当社エコノミストとコンサルタントが新たな変革の視点を提案します!


小村元

小村 元(おむら はじめ)
株式会社富士通総研 執行役員常務 第二コンサルティング副本部長
富士通(株)入社後、官公庁、自治体分野のシステムエンジニアとして、主に公共系の業務システムの構想立案、構築を担当。その後、コンサルタントとして「e-Japan」構想に対応したビジネス推進を担当。BC(Business Continuity:事業継続性)等の対応と共に内部統制についてのコンサルティングに従事。