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  4. 価値観マーケティング ネット対リアル編第1回 消費者タイプによるネット対リアル仮説

価値観マーケティング ネット対リアル編 第1回

消費者タイプによるネット対リアル仮説

2011年7月27日(水曜日)

これまでの取り組みと今回のテーマ

「社会の変化は生活者の価値観に変化をもたらし、価値観の変化は消費行動に変化をもたらす。」昨年度、私たちは、マクロ視点の社会経済からミクロ視点の消費行動に至る、変化の連鎖を紐解く試みを行いました。その結果、不安が増した現代において、価値観が着実に変化していること、さらに消費行動に影響を及ぼす2つの価値観軸と、4つの消費者タイプを導き出しました。私たちは、価値観を考慮に入れた消費者タイプ別のマーケティング戦略を立案することを「価値観マーケティング」と呼ぶことにしました。

昨年度は、「旅行商品」を取り上げて、「タカ」タイプに対する商品企画や販売方法についての具体的なアイデアを提示し、価値観マーケティングの実践を提言しました。今年度は、いくつかの商材を取り上げて、消費者タイプ別にネット店舗とリアル店舗の購入傾向の違いや、その背景を分析する試みを行いました。拡大の一途を辿るEC市場と、生き残りをかけたリアルな小売市場、それぞれのマーケティング戦略に対する一助となれば幸いです。

研究の成果については、次のような構成でご紹介します。

  • 第1回の今回は、価値観マーケティングのおさらいと、消費者タイプ別のネット店舗とリアル店舗の使い分けの仮説をご説明します。
  • 第2回では、8つの商材に対するタイプ別の購入傾向の違いを、アンケートデータからご紹介します。
  • 第3回では、商材別の傾向の違いを、ネット店舗とリアル店舗での「売場」の違いから考察した結果をご紹介します。
  • 第4回では、商材の特性によって変わるネット戦略・リアル戦略について、事例をベースに提言します。

1. 価値観マーケティングにおける4つの消費者分類

4つの消費者分類

【図1】4つの消費者分類

昨年度の研究により、生活者は、2つの価値観因子、「外出(刺激)志向⇔巣ごもり(癒し)志向」と「他人OK⇔人見知り」を軸に、4つのタイプに分けられることがわかりました。(【図1】)

「ツバメ」は、見知らぬ他人とのコミュニケーションが苦にならず、積極的に外に出るタイプです。反対に「ふくろう」は、人見知りで家の中にこもるタイプです。

「タカ」は、コミュニケーションは得意ではないものの、刺激を求めて外に出るタイプで、「こうもり」は、刺激よりも癒しを求めつつ、他人とのコミュニケーションは苦にならないタイプです。

旅行商品を対象とした研究では、主力顧客は「ツバメ」タイプですが、副ターゲットとして「タカ」タイプが潜在顧客として存在していると考えました。さらに詳しく調査すると、次のような「タカ」タイプの旅行に対する消費行動の特徴が判明しました。

  • 一人旅または家族旅行を好む(見知らぬ人が大勢いるツアーは苦手)
  • 情報収集は、主に「店頭」である
  • 旅行に対するこだわりはない
  • 旅行に対する満足度は、「同行者」の評価に影響を受ける

「ツバメ」タイプは、旅行にこだわりがあり、クチコミなど多様なチャネルを使って積極的に情報収集するのですが、「タカ」タイプには、そこまでのモチベーションはないと考えられます。コミュニケーションが苦手でありながら、店頭で接客を受けるのも、自ら情報収集を行うより店頭で商品を薦めてもらう方が手間がかからなくてよい、という判断なのでしょう。ただし、「タカ」タイプは準備不足などによるトラブルから同行者に不満をぶつけられると、その旅行に対する評価は著しく低下する傾向にあります。

以上のことから、「タカ」タイプをターゲットとして取り込むには、方面別ではなく、目的別の充実したナビゲーション付き旅行商品や、同行者の好みを確認する推奨方法など、商品企画や店頭での接客方法を工夫する必要があることがわかります。

このように、価値観マーケティングは、消費者タイプを活用して、ターゲット顧客の心理的背景を考慮に入れながら、商品企画や販促・販売方法などを変える際に役立つと考えられます。

2. 小売市場のEC化

今年度は、「旅行」商品だけでなく、様々な商材に対する消費行動、特にネット店舗とリアル店舗の使い分けに着目して、価値観マーケティングの活用を試みました。

昨今のBtoCのEC市場は拡大の一途を辿っており、国内の小売市場の低迷と対比すると、その勢いには目を見張るものがあります。【図2】は、経済産業省が実施している電子商取引(EC)市場に関する調査の結果を時系列にまとめたものです。

国内のEC市場規模とEC化率

【図2】国内のEC市場規模とEC化率

EC化率を見ると、2010年でも2.46%ですので、リアル店舗の消費の方がEC市場に圧倒的に規模が大きいことに変わりありません。しかし、90年代後半に生まれたEC市場が、この10数年で8兆円に膨れ上がっており、絶対値としては無視できない規模に成長していることがわかります。

また、富士通総研による「インターネットショッピング2010調査報告書」の、「この1年PCネットショップで買ったもの」の調査結果(【図3】)を見ると、書籍・雑誌に次いで、衣類・靴が挙げられています。EC市場形成初期に指摘されたように、「ネットで売れるのは、本やCDなどの規格品で、試着が必要になる洋服などは売れない」といった定説は覆されていることが分かります。

この1年PCネットショップで買ったもの

【図3】この1年PCネットショップで買ったもの

以上のことから、小売市場においてEC化の波は、商品種別に関係なく今後も広がっていくことが予想されます。リアル店舗を前提としたマーケティングから、ネット店舗を意識したマーケティングの必要性が高まっていると私たちは考え、そこに価値観マーケティングの適用を試みました。

3. 消費者タイプ別リアルとネットの使い分け仮説

昨年度導き出した消費者タイプが、リアル店舗とネット店舗をどのように使い分けているのか、次のような仮説を立案しました。(【図4】)

ネット店舗とリアル店舗の使い分け仮説

【図4】ネット店舗とリアル店舗の使い分け仮説

「ふくろう」タイプのように、外出もコミュニケーションも苦手とする場合、他のタイプよりもネット店舗を利用する機会は多いと考えられます。

反対に「ツバメ」タイプは、リアル店舗で販売員とのコミュニケーションを楽しみながら、買い物をすることを選ぶでしょう。ただし、ネットでのクチコミチェックなど、情報収集にネットを使うことには積極的だと考えられます。

「タカ」タイプの場合は、旅行商品の研究において、いきなり「店頭」に行くという特徴が表れていました。情報収集を兼ねてリアル店舗を使うことが想定されます。反対に「こうもり」タイプの場合は、ネットでもリアル店舗でも情報収集するものの、最終的にどちらで購入するかは決まっていないと予想されます。

これらの仮説について、実際に8つの商材を取り上げて購入スタイルをアンケート調査し、検証を行いました。すると、商材によって、価値観が購買スタイルに影響するものとしないものが発見されたのです。

第2回では、この8つの商材別の違いをご紹介します。

シリーズ

価値観マーケティング ネット対リアル編 第2回

価値観マーケティング ネット対リアル編 第3回

価値観マーケティング ネット対リアル編 第4回

関連シリーズ

不安な時代の価値観マーケティング 第1回

不安な時代の価値観マーケティング 第2回

不安な時代の価値観マーケティング 第3回

不安な時代の価値観マーケティング 第4回

関連サービス

【調査・研究】


安藤 美紀(あんどう みき)
(株)富士通総研 流通・サービス事業部 マネジングコンサルタント
1995年日本電信電話(株)入社、法人部門において流通企業向けコンサルティングに従事。
2005年富士通(株)入社、コンサルティング事業本部を経て、2007年(株)富士通総研出向。
小売業、サービス業、製造業の企業向け業務改革等のコンサルティングに従事。現在はBI、CRM、顧客分析を担当。