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「今」を知り、「未来」を描くことから始めませんか?

~営業店改革を成功に導くために~

2011年7月7日(木曜日)

はじめに

近年、多くの銀行は、営業店におけるコストの削減と営業力の強化を目的に改革を推し進めています。富士通総研では、こうしたお客様に、実態把握の重要性をご認識いただき、それに基づいた営業店改革構想の策定と施策の実施、業務面での改革を支えるシステム開発のご支援を行っています。

りそな銀行様では、2004年11月の千住・竹ノ塚支店での試行を経て、従来から営業店にあるハイカウンターを廃止し、「クイックナビ」を導入した店舗を次世代営業店として展開してこられました。導入当初、新たな事務処理方式を実現するクイックナビにばかり注目が集まり、いくつかの銀行ではこれを参考に同様の仕組みを導入しましたが、実は、クイックナビの導入は営業店改革のわずか一部が形に表れたに過ぎません。導入から6年が経ち、着実に改革成果を上げ続けるりそな銀行様の取り組みに、近年改めて関心が高まっています。

多くの銀行では、改善レベルの施策に長く取り組み、そうした活動の中、さらなる成果を求められ、今後の取り組みに悩んでいるように感じます。そこで、更なる成果を狙った営業店改革を成功に導くポイントを、りそな銀行様の取り組み事例を交えながら、ご紹介したいと思います。

営業店改革を推進する上での問題点

りそな銀行様の実績に関心を持ち、弊社にご相談いただく多くのお客様との対話で感じる営業店改革推進の問題点は、以下の3点に集約されるように思います。

  1. 何が目的かがわからなくなってしまう
  2. 何をするべきかがわからなくなってしまう
  3. 現状の取り組み成果が適正なのかどうかがわからなくなってしまう

これらは、第三者から見ると、そんなレベルの話なのかと感じられるかもしれませんが、お悩みを突き詰めると、実はこうしたことが改革の推進を妨げることになっているように思えます。こうした課題に対して富士通総研がお勧めしたいのは、「実態把握に基づく営業店(改革)基本構想の策定」と「実施計画の策定」、それに加えて、「実施計画の進捗状況を把握するためのモニタリングの仕組みの導入」です。

営業店改革を成功に導く3つのポイント

  1. 実態把握
    実態把握には定量把握と定性把握があり、どちらも大事ですが、施策実施の前後比較や進捗状況の把握ができる定量データを取得することは必須です。調査手法はいくつかありますが、富士通総研では、主に現場がどのような動きをしているか、どんな無駄があるかを明らかにするWS(ワークサンプリング)調査と、効率化推進には欠かせない事務の「ピークくずし」を行うための伝票調査をお勧めしています。
  2. 営業店(改革)基本構想と実施計画の策定
    更なる大きな成果を目指す「改革」は現状をベースに取り組む「改善」とは異なり、「あるべき(ありたい)未来像」に向けて実施するものだといえると思います。そこで、その「未来像」について、経営・本部・現場の各層が認識を共有し、それぞれのレベルで取り組むべきことを明らかにすることが重要です。また、改革推進の際に何か問題があれば、必ず構想書に立ち返って評価を行い、次の打ち手を考えることが重要です。 改革の実施にあたっては、これまでの実績や過去の取り組みを否定をせざるを得ないこともあるため、さまざまな思いを持つ人たちの中で、強力なリーダーシップの下に、様々の思いを越えて、各人が役割を果たしていくことが成功のカギとなります。
  3. モニタリングの仕組みの導入
    構想書、実施計画書には、目標とそれを実現するための施策、期待される効果が記されることになりますが、その実施状況を確認できる仕組みの導入も非常に重要です。これは、改革が進んでいるかどうかの確認はもとより、うまくいっていない点を明らかにし、その原因と対応策を立てるためにも重要です。そこで、目標を達成するための施策(取り組み)の実施状況(成果)を把握するための指標を明らかにします。指標を設定する際は、主に以下の4点に留意することが必要です。

    (1)目標値を設定します(未来に向けての姿を明確にする)
    (2)目標値の達成のための施策を紐付けます
    (3)施策の成果を数値で把握できるようにします
    (4)成果の確認のタイミング(頻度)と確認に用いるデータの鮮度を適切にします

りそな銀行様での取り組み

富士通総研は、旧大和銀行様・旧あさひ銀行様の両行の「事務量」導入をご支援し、余裕率の設定を通して培った現場理解の状況や他業界へのコンサルティング経験も踏まえた企画・支援等を評価いただき、諸々の案件のご支援を継続的に実施してきました。

【実態把握と目標設定】

りそな銀行様では、事務量導入に際し、余裕率設定のために、営業店でのWS調査や伝票調査を実施し、その後、機会ある毎にWS調査を実施して実態把握を行ってこられました。公的資金注入後は、「りそな再生プロジェクト」のコスト削減PTにおいて、事務量導入に当たってのノウハウを駆使し、コスト構造の実態把握を行いました。その結果、コスト削減の指標として営業店の事務量半減を掲げられました(【図1】)。

現状認識・事務改革目標

【図1】現状認識・事務改革目標

【目標達成のための施策検討】

事務量半減を目標に設定され、そのための具体的施策検討に入りました。検討当時は、他チャネル、特にATMへのシフトとセンターへの集中化が主な施策でしたが、その延長では更なる大きな効果が期待できないということで、新たな事務処理方式を導入されました。それが事務コンセプト「3ない(待たせない・書かせない・押させない)、3レス(ペーパーレス・キャッシュレス・バックレス)」を志向する事務処理方式「クイックナビ」の導入です(【図2】)。その他に、EB・IBへのシフトや、後方事務集中センターの構築など、営業店の事務量を半減する施策を導入しました(【図3】)。

次世代営業店クイックナビ

【図2】次世代営業店 クイックナビ

伝票分析による具体的打ち手の効果仮説検証例

【図3】伝票分析による具体的打ち手の効果仮説検証例

【構想書・実施計画の策定】

クイックナビの導入は、これまでの銀行のハイカウンターを撤去し、顧客操作を一層推進するという点で、営業店の姿を大きく変えるものです。そして、事務量の削減は、事務処理を行うための要員を削減することにより、コスト削減を図るものですので、まさに現場で働く人たちの仕事・生活にも影響を与えると考えられます。また、事務改善は、一部門の取り組みで実施できても、営業店改革となると、事務部・システム部・営業企画部・人事部など多部門が、それぞれの意識を合わせて、1つの姿を目指して連携して取り組むことが重要となります。そこで、銀行の現状、目指す姿、そのための施策、どのように成果を評価するか、などを構想書と実施計画としてまとめ、経営層から営業店幹部層へ、本部から営業店担当者への説明会を実施し、認識を共有し、理解を求めました。

【モニタリングの仕組みの導入】

りそな銀行様では、営業店改革の実施状況のモニタリングの仕組みとして、事務量を活用したオペレーション・マンスリーレポートの運用を開始しました(【図4】)。2005年10月を基準とし、基準時点と比較して事務量がどれだけ削減されているかを、毎月1回のレポートで各店に通知します。従来、事務量は、人事部と営業店の支店長が配置人員の合意を形成するために用いられる、ある意味、閉じたツールとして利用されていました。それを、経営層・本部・現場で同じデータを見て、状況を確認できるツールとしました。全体の事務量の他、事務量の削減に関連する施策の実施状況を表す指標(ATMシフト率、EBシフト率、後方事務センターシフト率等)も毎月データ取得し、各店毎と銀行全体の情報とで進捗状況を把握します。

この際、ある施策の取り組み状況が芳しくない営業店があった場合、その原因を分析し、場合によっては、本部の担当者が営業店担当者と共に顧客を訪問し、取り組みにご理解をいただくようお願いをするなど、本部、営業店が一体となって改革を推進してきました。そうした地道な取り組みの他、新たな事務処理に基づいたシステム開発効果などで、営業店の事務量は基準時点と比較して、ほぼ半減を達成しました。

営業店マネジメント指標(例)オペレーション・マンスリーレポート

【図4】営業店マネジメント指標(例)
オペレーション・マンスリーレポート

【業務を支えるシステムの検討】

クイックナビは、これまでハイカウンターで受け付けてきた業務について、ATMと営業店端末を隣接する場所に設置することにより、現金管理のATMシフト対象業務を拡大し、社員の営業店端末処理により、お客様に伝票を書いていただく必要をなくし(書かせない)、さらには、後方事務の発生そのものを削減しました(伝票がないため、伝票上のチェックやファイリングが不要となり、またATMに現金を投入するため、現金管理の作業も発生しません)。

クイックナビの導入時点では、新規システム開発は一切認められていなかったため、システム開発は行わずに実現しました。システム開発ができれば、もっと効率向上が図れるものについては、システム開発が認められた際にすぐに起案できるよう準備を進めました。この検討の際に重要なことは、コストや開発期間を一旦は考慮せずに、ありたい姿、すなわち「3ない3レス」のコンセプトを実現するシステム開発案を検討することです。その結果、クイックナビ導入時点では実現できなかった出金伝票への印鑑の押印に代わる仕組みとして、生体認証の仕組みや、ATMと営業店端末がそれぞれ独立していたものを、案件管理番号で紐付けることにより、現金管理を容易に行うための仕組み(連携DBシステム)の検討を実施しました。そのようにして必要な業務要件を整理し、システム要件を抽出し、開発期間やコストを考慮し、当時はまだ投資対効果がそれほど高くないということで、生体認証の仕組みの導入を断念することにしました。しかし、それはその後の開発においては、「押さない」あるいは「3ない3レス」の究極の実現ということで、スマート店と呼ばれる店舗において実現されるに至っています。

システム(ソリューション)ありきで、それをどう使うかというアプローチでは、業務のあり方を支えるシステムとはなり得ず、システムに合わせて業務を設計することにさえなりかねません。また、現場の実態を踏まえないと、その銀行では大きな効果を生むことができないシステムに大きな投資をすることにもなりかねません。

りそな銀行様では、未来はこのようにありたいという事務処理方式を追求し続け、どれだけの効果を生むかを検討していたため、その後の開発案件検討の際、時期を見て俎上に載せることができたと考えます。こうして、現在は連携DBシステムに次ぎ、よりペーパーレスを推進するためのチャネル間連携システムを全国に展開中です(【図5】【図6】)。

新事務処理を支えるシステム化方式

【図5】新事務処理を支えるシステム化方式(イメージ例)

最後に

りそな銀行様の営業店改革はまだまだ進行中です。数年のご支援を通して感じることは、実態を踏まえ、未来はこうありたいという姿を構想書にまとめ、計画に従い実行しても、成果が十分でない場合は、構想書に立ち返り、改めて現場を見た上で、場合によっては施策を変更し、前に進み続けるという姿勢があってこそ、改革は前進していくのだ、ということです。施策実施後のモニタリングがなければ、問題点の認識や打ち手の変更は行えません。そもそもの戦略・戦術を理解し、施策の意義を認識共有しているからこそ、場当たり的ではなく、継続的な取り組みを行うことができ、営業店改革で成果を上げ続けることが可能となっています。

オペレーション改革推進状況

【図6】オペレーション改革推進状況

何か大きな動きを起こそうとする時、現状はどうなっているのかを見える形にし、目指す方向性について意識を合わせ、常に「現在進行形」であると意識して改革を進められることをお勧めいたします。そして、現状把握なくしてスタートは切れないといっても言い過ぎではないと思います。実態も把握せず、未来像も描かないで何をしようというのでしょうか?

もし、まだ取り組みが十分ではないとお気づきであれば、すぐにでも取り組んでいただければと思います。

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【「銀行次世代店舗」のアプローチ】
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平岩淳子

平岩 淳子(ひらいわ あつこ)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタント
1984年 富士通株式会社入社、97年 株式会社富士通総研へ出向。
金融機関向け事務量・営業店構想策定・営業店改革・事務集中センター効率化・事務処理方式開発などに従事。