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東日本大震災後の企業の取り組みはどのように評価されたか

2011年6月15日(水曜日)

東日本大震災発生から3か月が過ぎた。いまだに約9万人が避難生活を強いられており、被災地の復旧・復興が一刻も早く望まれている状況には変わりがない。とはいえ、昨今の政局混迷を見る限り、残念ながら、政府による迅速な対応がどこまで期待できるのか疑問である。

近年、国際社会では、社会的課題の解決者としての民間企業の役割が重視されるようになってきた。これは、企業の社会的責任(CSR)の観点から企業の社会貢献活動を期待するということだけではない。資金力、技術力、人材、意思決定のスピード等、企業の持つ問題解決力の高さに対する期待が大きいのである。また、マイケル・ポーターがCSV(共有価値の創出)という概念を提唱したように、経済的価値と社会的価値を同時実現することで長期的な企業競争力強化を図るという経営戦略の考え方も注目されている(注1)。

東日本大震災後の様々な取り組みにおいても、民間企業の活動を含めた我が国の「現場力」の強さが再確認されているようだ。以下では、富士通総研が5月末に実施したアンケート調査の結果の一部を紹介しながら、日本社会が直面する緊急課題である今回の大震災からの復旧・復興に対して、民間企業にどのようなことが期待されているのか考えてみたい。

民間企業の特徴を生かした分野での貢献に期待

富士通総研では、東日本大震災後の民間企業の活動の評価と期待について調べることを目的として、2011年5月30日から31日にかけて、岩手、宮城、福島の3県を除く全国の20歳以上のWebアンケートモニタ会員1,030人を対象としたインターネットアンケート調査を実施した(注2)。

東日本大震災後の復旧・復興に向けた支援について、民間企業(電力会社以外)の取り組みを「評価する」という回答は47.7%であった(注3)。この比率は決して高いとは言えないが、「評価しない」という回答率が高かった政府や電力会社、報道機関と比べれば、高い評価を得ていた。ちなみに、民間企業の評価については、「どちらとも言えない」という回答が44.3%と他と比べて最も多かった。判断材料とするほど、企業の取り組みに関する情報がないという見方もできる。

一方、復旧・復興を進めるためのこれからの取り組みについては、民間企業(電力会社以外)に「これまで以上」の取り組みを期待するという回答は53.1%であった(注4)。全体的に、これまでの対応の評価が低い部門ほど、これまで以上の取り組みを強く期待される傾向がある。しかし、政府・電力会社・報道機関の場合、「あまり期待しない・全く期待しない」の回答も10%以上であった。民間企業は、「これまで通りの取り組みを期待」を含めて回答者の96.8%が、現状並みかそれ以上の取り組みを期待しているということになる。

図表1 東日本大震災後の復旧・復興を支援するこれまでの取り組みに対する評価

図表2 東日本大震災後の復旧・復興を進めるためのこれからの取り組みに対する期待

それでは、民間企業にはどのような分野での貢献が具体的に期待されているのだろうか。アンケートでは、12の分野を設定して民間企業の貢献への期待を質問したところ、全ての分野において60%以上の回答が得られたというように、高い期待が示された。その中でも、「被災地の商品の流通・販路開拓支援」、「被災地での雇用受入れ」、「支援物資・自社製品の提供」、「防災・エネルギー分野の技術・サービス開発」、「被災地の既存産業復興の支援」については、80%以上の回答者が期待を示した。民間企業ならではの特徴を活かした分野での貢献に対する期待が大きいようである。例えば、「義援金・支援金」よりも「物資・製品の提供」に対する期待が大きいという結果に端的に表れている。また、「新規産業創出」よりも「既存産業復興」への貢献に対する期待の方が大きいという結果は、まずは原状回復を求める気持ちが強いことを示している。

図表3 東日本大震災後の復旧・復興に民間企業の貢献を期待する分野

積極的に取り組む企業に対する好感

東日本大震災後の復旧・復興の支援に熱心に取り組む企業に対して、約70%の回答者が好意的な行動をとりたいと考えているという結果が得られた。例えば、復旧・復興の支援に熱心な企業の「製品やサービスを利用したい」という意向を示した回答者は60.2%であった。一部には「取り組みを他の人に知らせたい」(回答率20.1%)あるいは「その企業に投資したい」(回答率10.7%)という回答も得られた。これらの結果は、社会的課題に対する自社の活動を適切に情報発信することは、自社のブランド価値の向上や収益機会の拡大につながる可能性を示唆している。

また、大震災後の復旧・復興に積極的に取り組んでいる企業が、自社の取り組みをPRすることに対しては、67.9%が好意的に感じているという結果も得られた(注5)。一部の日本企業には、自らの社会貢献活動を「当然のこと」と考えて、大々的にPRすることをあまり好ましく思わない風潮があるようだ。しかし、この結果は、大震災後の対応という社会的課題に取り組んでいる企業がPRすることについて、日本社会がおおむね肯定的であるということを示している。

今回のアンケートで、復旧・復興の支援に熱心に取り組んでいる企業名を自由記入してもらったところ、回答者の37.5%がソフトバンクと記した(注6)。回答率17.3%のファーストリテイリング(ユニクロ)がそれに続く結果となった。その他の具体名が挙がった企業はすべて5%未満の回答率であり、この2社の高評価が際立つ。

ソフトバンクについては、企業活動の評価に加えて、孫社長自身の活動(個人資産からの義援金寄付、さらには自然エネルギー財団設立や「東日本ソーラーベルト構想」など)が、注目を集めたといえる。ファーストリテイリングにおいても、義援金や自社の衣料品寄贈などが評価されたものであろう。この2社に共通するのは、企業トップが関与する積極的かつ迅速な取り組みであり、社会課題解決のための資金力、スピード感、提案力などが評価されたものと考えられる。

そのほか、2%以上の回答率を得た企業10社(ヤマト運輸、イオン、ローソン、サントリー、日清食品、パナソニック、楽天、トヨタ、ソニー、山崎製パン)の多くが、食品、小売、運輸、家電など、生活に密着した商品を提供している大手企業である。このため、元々、消費者の認知度が高く、被災地支援の物資提供などが「顔が見える」支援につながりやすかったといえる。工場・事業所やサプライチェーンに被害を受けた企業にとっては、自らの復旧活動が報道される機会が多かったことも、取り組みの認知度向上につながった面もあるだろう。

図表4 東日本大震災後の復旧・復興に熱心に取り組んでいると評価された上位企業

国難をバネにして社会的課題解決力の強化を

東日本大震災からの復旧・復興に向けた取り組みは、まだ端緒についたばかりであり、原発事故への対応も考慮すれば、取り組みの長期化が予想される。民間企業が復旧・復興支援の主役であってはならないと思うが、これまで紹介してきたように、雇用確保、販路開拓、技術・サービス開発、産業復興など、民間企業ならではの特色を生かした貢献に対する期待は大きい。また、復旧・復興の支援に積極的な企業に対しては、自社取り組みのPRにも肯定的であり、商品選択などの好意的な行動を促す可能性も示唆された。

東日本大震災は近年まれにみる国難といえよう。日本企業は、この状況をバネとして、自社のノウハウを活用しながら、復旧・復興の貢献に取り組むことで、社会的課題解決力の向上を図り、自社の長期的競争力強化につなげる機会とすることが望まれる。今後、企業の取り組みを評価する国民の視線はより厳しくなるものと思われるし、企業の貢献を期待する内容も時間とともに変化するであろう。企業が復旧・復興活動に長期的に関わっていくためには、社会貢献活動とビジネスを乖離させたままでは限界がある。自らの事業活動の成果を社会面と経営面の両方から評価しながら改善を図る内部管理システムを構築し、対外的に適切な情報を開示する方法を確立できた企業こそ、東日本大震災後の復旧・復興が一段落した際に、今まで以上の存在感を示すことになるのではないか。

注釈

(注1)2011年1・2月号のハーバードビジネスレビューに “Common Shared Value” を表題とした論文を発表(日本語版はDIAMONDハーバードビジネスレビュー6月号に掲載)。

(注2)マクロミル社のモニタ会員を利用。性別の偏りを回避するために男女同数(515人)の構成とした。

(注3)アンケートの選択肢として設けた「大いに評価する」と「ある程度評価する」の回答の合計。

(注4)アンケートの選択肢として設けた「これまでを大きく超える取り組みを期待する」と「これまで以上の取り組みを期待する」の回答の合計。

(注5)アンケートの選択肢として設けた「大いにPRすべきだ」と「ある程度PRしたほうがよい」の回答の合計。

(注6)自由記入で最大3社まで記入可能とした。

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富士通総研には産業系シンクタンクとしての長年に渡る調査・研究・分析の実績があります。さらに、コンサルティング・サービスを通して培ったノウハウで「お客さまの現場で役立つリサーチ・サービス」を実現してきました。


生田上席主任研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)
(株)富士通総研 経済研究所 主任研究員
1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社、
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社
専門領域:エネルギー・環境政策 、環境・CSR関連経営戦略、環境ビジネス・関連市場動向、環境シナリオ・ビジョン、グリーンIT