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東日本大震災からの復興に向けての意見(3)

原子力発電を何で代替するか?~「第4の道」としてのスマートグリッドの推進を~

2011年5月9日(月曜日)

3月11日の東日本大震災により、戦後最大級の「電力危機」がもたらされた。原子力発電の安全神話が崩壊し、大規模な計画停電も実施された。それから2か月近くが経過したが、政府は未だに福島第一原発の放射能事故の対応に追われており、今後の電力・原子力政策について方向性を打ち出せていない。一方で新聞や経済誌などでは、今後の電力システムについて議論が始められつつある。

その際の最大の関心事は、計画通りに増加させることが困難な状況になった原発を、何で代替するかである。【図1】の通り、2030年に日本の発電量の半分を原子力によって供給するというのが、震災前の政府の計画であった。原子力はゼロ・エミッション電源であり、経済効率性も高く、「準国産」という意味で安全保障上の価値も高いとされてきた。その代替の仕方によって様々な影響が出るのであり、極めて重要な問題であるが、これまでの議論を整理すれば、以下の「3つの道」に分類できる。

日本の電源構成(発電電力量ベース)

【図1】日本の電源構成(発電電力量ベース)
出典:資源エネルギー庁「長期エネルギー需給見通し(再計算)」を基に筆者作成。2020年と2030年は最大導入ケース。「新エネルギー等」と「地熱」の合計を「再生可能エネルギー」と読み替えた。

1. 原発を代替する「3つの道」

(1) 現実主義派:火力増強

「第1の道」は、当面はLNGなど火力発電を増設して、原発の穴を埋めるというものである。国民感情に配慮して原発の新規建設を凍結する一方で、全ての原発の運転停止は、日本中に大規模停電を引き起こしかねないとして、これも非現実的だと考える。だとすれば、少なくとも関東では供給能力が大幅に不足するため、短期間で拡充できる火力発電に頼るしかない。比較的多くの論者がこのような主張をしており、「現実主義派」と呼ぶことができよう。

この場合、火力発電の比率が現状よりも増加するため、地球温暖化対策上は大きなマイナスになる。また、中東情勢の不安定化の影響も受けて原油価格の高騰が続いており、発電コストの上昇を招くため、電気料金の上昇も予想される。一方で「現実主義派」は、中長期的に原発をどうするかを明言しない場合が多いようだ。事故の検証がなされ、地震・津波対策などが十分になされれば、これらの問題点を有しない原発の推進計画が復活する可能性もあるのだろう。

(2) 環境保護派:再エネ大量導入

「第2の道」は、基本的に脱原発を目指し、その代替電源として再生可能エネルギーの大量導入を主張するものである。原発については、新規建設を中止することは当然であるが、中期的には全廃を目指し、古いものから順に速やかに廃炉にしてく。その穴を埋めるために、太陽光発電や風力発電、地熱発電やバイオマスを急速に普及させる。そのために必要な補助金の投入やフィードインタリフ(Feed-in Tariff,固定価格買取制度)、系統接続や立地のための規制改革も行う。このような主張は、地球温暖化対策の立場から以前より「環境保護派」が行ってきたものであり、彼らが今回の原発事故を契機に勢いづいている側面は否定できない。

一方で「環境保護派」の主張は、「現実主義派」から見れば現実的でないと批判の対象になる。確かに原発を否定する見方は、放射能事故の恐ろしさを痛感した国民感情に訴え易いものである。しかしながら、短期間で原発を補完するほどの再生可能エネルギーの普及は見込めないし、そのような広大な土地はない。再生可能エネルギーによる発電はコスト高であるため、電気料金が高騰する。その発電は天候に依存して不安定なため、これを強行すれば電力系統に悪影響を与える。このような理由から、再生可能エネルギー中心の社会は幻想に過ぎないと、「現実主義派」は批判する。

(3) 原発推進派:計画通り原発推進

「第3の道」は、このような事故はそう頻繁に起きるものではなく、原発の未来は不変だと主張するものである。今回はあくまで「想定外」の天災だったが、ここから学んで対策を強化すれば、安全神話は復活する。女川原発のように原子炉の設置位置を高くし、冷却用の外部電源を増やし、無人運転が可能なロボットをアメリカ軍の力を借りて実用化し、放射能汚染水の処理技術をアレバから導入する。更に第2世代の原子炉を第3世代に置き換える。地球温暖化対策や原油価格の高騰を考えれば、原発に依存する以外の道はあり得ないというのである。

このような主張を「原発推進派」と呼ぶとすれば、現状では正面切って披露する方は少ない。しかし、54基もの原子炉を抱えてしまっている電力会社は、経営上の観点からもこの辺りが本音であろう。既に東芝の社長が、「長期的には原発の必要性は変わらない」と述べたようである。電気事業連合会の関係者が、政治家を廻って原発推進を説いているとも聞く。フランスのサルコジ大統領がアレバのCEOを伴って急遽来日したのも、自国の原子力産業を維持発展させたいからであろう。原発が抱える脆弱性が技術によって完全に解決できるのであれば、このような主張は説得力を増すかもしれない。

2. 「第4の道」としての「需要対応派」

原発を何で代替するかという問いへの答えとして、上記の「3つの道」は分かりやすい選択肢であろう。一方で、いずれも供給力を増やすという発想では共通している。しかし、あまり真剣に議論されていないが、供給不足への対応策としてはもう1つあるのではないか。それは、供給に合わせて需要を減らすということである。このようなアイデアは以前からなかったわけではないが、机上の空論に過ぎないとされてきた。これを、「第4の道」としての「需要対応派」と呼びたい。

そもそも既存の電力システムでは、電力会社が一方的に供給責任を負い、企業や家庭といった需要者は何も考えずに好きなだけ消費してよいということになってきた(*1)。電力は同時同量の原則が働き、常に需要量と供給量を一致させなければならない。そのためには、理論上は供給が需要に追従する方法と、需要が供給に追従する方法の2つがある。しかし後者は現実には難しいため、需要の動きは自由奔放に任せ、電力会社が中央給電指令所から発電所を小刻みにコントロールすると共に、ピーク需要に備えて必要以上の供給能力を貯め込むこととなってきた。

これだけ聞けば、電力会社は過剰な義務と負担を負っているように思われるかもしれないが、そうではない。大きな義務の代わりに独占的供給区域が設定され、負担に対しては総括原価主義に基づいた認可料金により、絶対に利益が出るような仕組みになっている。電気料金は従量制であるから、電力会社としては電力をどんどん使ってもらい、それに耐え得るよう発電所や送電網を増設すれば良い。投資を増やせば、それは確実に電気料金として回収できるのだから、膨大な電力債を発行しても問題なかった。

これが日本の電力会社のビジネスモデルであるため、「第4の道」は供給者にとっては大変都合が悪いことになる。需要者が知恵を絞って需要を減らせば売上に響くため、電力会社は小規模の実証実験の結果を根拠に、「需要対応」は幻想に過ぎないと主張してきた。それを本格的に実現しようというスマートグリッドについても、電力会社は反対であり、日本では盛り上がっていない(*2)。需要者にとっても、十分な情報や誘因が与えられていない状況では、多少電気料金が高くても、好き放題使ってよいというのは心地よかった。

3. 計画停電に見る「需要対応」

本当に、「需要対応」は幻想に過ぎないのだろうか? 実は、筆者も含めて関東の電力需要者は、3月の地震後に大規模な「需要対応」を実施した。それは、計画停電を回避するための節電である。あの時には、政府が節電担当大臣まで置いて、メディアも全面的に協力して節電を訴えた。震災直後ということもあり、東北地方で被災した方々の気持ちにもなって、個人は多少不自由な生活は我慢し、企業も一斉に協力した。その成果は以下の通りである。

まず、需要総量である。東電の月間の販売電力量を表したのが、【図2】である。電力需要は様々な要因で変化するが、その1つは気温である。2011年3月の平均気温は8.1度であり、2010年3月の9.1度と比べてかなり寒かった。寒ければ暖房需要が増すため、前年の237億kWhより大幅に増加すると思われるが、実際には223億kWhに減少したのである。更に、平均気温8.1度の近似値を探したところ、2009年2月の7.8度があり、この時の販売電力量は243億kWhであった。従って、もし地震がなければ2011年3月の需要は240億kWh前後と推定されるところ、20億kWh程度減少したことになる。一方、地震が発生したのは3月11日であるため、この減少分は月の3分の2の期間の「需要対応」の結果と考えられ、需要総量の減少は240億kWhに対して30億kWh、即ち12.5%との計算になる。

東京電力の2月と3月の販売電力量

【図2】:東京電力の2月と3月の販売電力量
出典:電気事業連合会のウェブサイトを基に筆者作成。月間平均気温は気象庁ウェブサイトによる。気温の右軸を反転させていることに注意。

次に、今回の計画停電でも焦点となったピーク需要である。3月にピーク需要を記録するのは、夕方の6~7時頃である。東電によれば、「地震を考慮しない場合の想定需要」は、計画停電が始まった3月14日、15日共に4700万kWであった(【表1】)。これに対して、各前日に東電は4100万、3700万kWという「想定需要」を発表した。今回の緊急事態に鑑み、依頼している節電の効果が現れて、13~21%の減少を予測したのでる。しかし「需要対応」は予測以上に進み、「直前の想定需要」は3400万、3500万kWとなった。この予測通りであっても、3100万、3300万kWの供給力を上回るため、東電は計画停電を実施した。その結果、「実績需要」は供給力を下回り、14日が2800万、15日が3100万kWだったのである。

【表1】3月14日と15日の東電管内の点灯時(18時~19時)の需要状況

出典:東電のプレスリリースを基に筆者作成。
(万kW) 3月14日 3月15日
地震を考慮しない場合の想定需要 4700 4700
前日の想定需要 4100 3700
直前の想定需要 3400 3500
(供給力) (3100) (3300)
実績需要 2800 3100

「実績需要」が供給力を下回ったのは計画停電の結果であるが、最終的にどの程度の供給を停止したのかは発表されていないようだ。朝日新聞によれば、14日は11.3万世帯で最大でも夕方の1.5時間、15日は朝から夜まで合計500万世帯に及んだ。東電の契約口数は2871万(2011年3月時点)であるから、14日の計画停電は無視できる程度であり、「需要対応」のみで4700万kWを2800万kWまで抑制したと言えるだろう。15日については、東電によれば、16時~19時が140万軒(第1グループ)、18時20分~22時が200万軒(第2グループ)であった。これらを合計すれば、340万軒、即ち顧客の12%が計画停電の影響を受けたことになり、自主的な「需要対応」をもってしても3500万kWに止まるところを、更に12%、即ち400万kW程度を強制的に抑制し、3100万kWになったと言えるだろう。

以上の議論をまとめれば、需要総量については12.5%、ピーク需要については25~40%も、計画停電分を除いた「需要対応」により削減できたのである。勿論この中には、鉄道会社が間引き運転をした、震災の影響で工場が操業できなかったといったものも含まれており、平常の経済活動を損なった上での成果である。あくまで非常事態であり、通常の環境で同様の行動が期待できるとは思われない。一方で、計画停電騒ぎが落ち着いた4月15日でも、「各日の最大電力は、前年に比べ約20%下回って推移」と東電から報告されている。従って、「需要対応派」の主張は幻想に過ぎない、机上の空論であるとは言えなくなったのではないか。

4. 市場原理が「需要対応」の大前提

実は筆者は、上記の成果を評価していない。何故ならば、全くスマートでない形で「需要対応」を行ったからである。それは、電力の供給者がただ頭を下げて不特定多数に節電をお願いした上で、それでも不足する分についての「対応」を一方的に割り振るという、需要者の能動性を無視した形であった。その結果、どこがいつ停電になるのか分からない、病院や避難所まで停電になった、一部の地域に負担が偏り不公平である、といった批判が寄せられた。筆者は3月29日のオピニオンで、電力会社主導の中央管理・閉鎖型の電力システムが今回の電力危機をもたらしたと指摘したが、その事後対応も中央管理・閉鎖型の発想で行った結果、大規模停電こそ回避できたものの、全く非効率な結果をもたらしたのである。

それでは、どのようにすればスマートな「需要対応」だったのか? 第1に、市場原理を効果的に使うことである。最も分かり易いのは、需要ピーク時に価格を極端に上げることである。例えば単位時間当たりの電気料金を10倍にすれば、多くの需要者は大幅に節電するだろう。その時間帯を避けるような生産計画を立てることもできる。病院や工場によっては、それでも電気を使い続ける場合があるだろうが、使うか使わないかの選択肢が与えられること、高い料金さえ払えば使えるという予測可能性があることは、非常に大切な価値なのである。

これは、何も特別なことを言っているのではない。電力において需要と供給を一致させることが重要なのは前述の通りだが、本来それは中央管理者(=一般電気事業者)の専売特許ではなく、自由市場の基本的な役割なのである。取り立てて経済学の知識を振りかざさなくても、価格シグナルを通じて需要と供給を調整することは、日常的に市場において行われている。それは、一般的な大衆消費財だけでなく、通信料金などについても言えることだ(*3)。しかし電力分野では、供給者も所管省庁も市場原理の機能を信じていないようである(*4)

もっとも、それでも最終的に需要が供給を上回り、強制的な停電が必要になる可能性は棄却できない。しかし、それに必要な量は一方的な計画停電の場合よりもかなり小さくなるはずである。また、値上げによる負担増分が東電の懐に収まるようでは困る。一定の基準に従って需要者に還元されるなり、震災復興の財源として使われるようにすれば、不公平感は薄まるだろう。供給に余裕がある深夜の時間帯に大幅に料金を下げることにより、更にピークシフトを促し、東電の収支を調整する手もあろう。結局、「需要対応」を期待するには、需要者に行動を起こさせるためのインセンティブが不可欠なのである。

5. ITの力でスマートな「需要対応」を

第2のスマートな「需要対応」は、ITの力を借りて電力の需給に関する情報を提供することである。そもそも市場が有効に機能するためには、理論上は完全情報の状態にあることが必要である。即ち、需要者は今何がいくらの値段で売られているかを知らされてこそ、供給に合わせて需要を変化させる誘因をもつ。スーパーで買い物をするにしても、ガソリンスタンドで給油するにしても、購入時点の単価が提示されず、自分がどの程度の量を購入したか分からない取引など考えられないだろう。

しかし、電力については、仮に価格が変動したとしても、現状の家庭ではそれを知る術がない。仮に価格がマスメディアなどによって通知されたとしても、現在どの程度の電力を消費しているかすら知らされていない(*5)。節電に努めても、その結果、電気料金がいくらになるのかは、1か月後に総額で通知されるだけである。これでは、「需要対応」したくてもできないはずだ。

その有力な対応策となるのが、スマートメーターである。通信機能の付いた電気メーターを家庭に設置することにより、需要者は自らの電力消費をリアルタイムで知ることができ、価格シグナルに合わせてそれをコントロールしようと思うはずである。更に、それがエアコンや洗濯機といった家電と直接通信するようになれば、事前の設定に応じて家電自体が自動的にピークシフトするようになる。このような環境が整っていれば、3月の無差別的な計画停電も避けられたはずだが、日本では電力会社がスマートメーターの設置に及び腰で、欧米と比べても普及が殆ど進んでいない。

需要情報を持っていないのは需要者だけではない。実は電力会社ですら、家庭の需要量をリアルタイムに把握できていない。現状の家庭用の電気メーターでは、時間ごとの需要量を電力会社に伝えることができないのだ。電力会社は1か月後に検針員を家庭に送り、初めてグロスの需要量を把握できる。それでは、どのように供給を需要に合わせているかと言えば、過去の実績データから気象条件などを踏まえて予測し、あとは当日に周波数の乱れなどから供給を追随させているのである。だからこそ、電力会社は自らが自由に支配できる供給力を持つことを最優先してきた。

このように、これまでの電力システムでは、市場原理を活用して需要と供給を近づけること、そのために必要な情報を需要者及び供給者に提供することといった、凡そ製品やサービスの取引において当たり前のことが、行われてこなかった。その最大の理由が、電力は市場競争に馴染まず、そのようなことをすれば安定供給が脅かされるということであった。だから「第4の道」は否定されてきたわけだが、安定供給が途絶えた今となっては、これまでの常識を疑って「想定外」の発想から対処すべきであろう。それが「需要対応」、即ちスマートグリッドで言われるところのデマンド・レスポンスに該当するのである。しかしながら、原発問題の対応策としてスマートグリッドが本格的に議論されているようには見受けられない。

6. 新たな発想からスマートグリッドの推進を

既に年間の最大需要期である真夏に向けて、多くの企業あるいは家庭の中で節電対策が議論されている。エアコンの温度設定を上げる、不要な電灯を消す、コンセントを抜いて待機電力をなくす、エレベータの一部を止めるといった、昔ながらの「省エネ」のアイデアが挙げられている。それはそれで良いことだが、もう少しスマートに政策的後押しによって「需要対応」を実施したい。

具体的には、大口需要者など価格シグナルを導入できるところには、今すぐ導入することである。ピーク時の料金を思い切って高くし、オフピーク時は下げることにより、工場の夜間操業や休日操業を促す。家庭についても、野口悠紀雄氏が基本料金の大幅な引き上げを提案しており(*6)、対応の余地はある。そして市場原理が機能する前提として、発電・売電に本格的な競争が必要なことは言うまでもない。短期的には認可料金でピークシフトを促すとしても、中長期的には市場を通して取引価格が決定され、それに連動したピークシフト型の料金となるべきである。そのために必要な規制改革は、発・送電分離や地域独占の廃止、電力市場改革など山ほどある。

スマートメーターについては、2010年の「エネルギー基本計画」では、10年程度かけて旧式のメーターを置き換えるとのことであったが、前倒しして数年間で実現すべきであろう。そのための費用に料金値上げによる増収を当てても良い。その際には、スマートメーターに記録される需要情報が、需要者の了解の上で、第3者であるサービス事業者に公開されるよう制度設計すべきだ。現状では、需要情報は電力会社のものとされているため、ピークシフトを促すようなサービスの導入が進んでいない。しかし、本来需要情報は需要者のものであり、そのサービス分野にも競争を導入するのである。

家電をスマートメーターに対応させる、それに据置型蓄電池やEVを連動させるとなってくると、もう少し時間がかかるため、短期的には「第1の道」に頼らざるを得ないかもしれない。しかし「第4の道」は、「3つの道」のいずれにも親和性があることに注目して欲しい。何で供給不足を埋めるにしろ、「需要対応」があれば供給側の負担は減るのである。スマートグリッドは2年程前から世界的に注目されるようになったが、日本では電力会社の反対もあり、懐疑的な意見が絶えなかった。それは、多くの専門家や関係者が、結局は供給側からの発想で電力を制御することに固執してきたからではないか。

「3つの道」のいずれにも親和性があると言ったが、最も親和性が高いのが「第2の道」であることは、言うまでもない(*7)。「第2の道」と「第4の道」の合作が目指すものは、需要者1人1人がどうすればピークシフトに貢献できるか、時には供給者になれないかといったことを考え、能動的に行動する世界である。我々は今こそ発想を転換し、ごく限られた数の供給者任せの電力システムを、需給両面の多くの関係者で共有する自律分散・開放型のシステムへと再構築すべきというのが、筆者の提言である。確かに十分な「需要対応」を実現するには、まだまだ乗り越えるべき技術的障壁は少なくない。しかしそれは、原子力を制御するよりは遥かに容易で、コストが低く、安全で、予測可能性が高いのではないか。

注釈

(*1) 工場など大口需要者は、電力会社と需給調整契約を結ぶことにより、電気料金を下げるかわりに緊急時の需要抑制を受け入れることになっている。しかし、今回の計画停電に際して需要抑制は発動されなかった。それだけでは足りなかったためであろうが、無差別的な計画停電の前にまずこちらで最大限手当てをすべきだった。

(*2) 逆にアメリカでは、環境規制などの制約の下で、発電所や送電網などへの設備投資を抑えたい電力会社が、安定供給義務の下で短期的にピーク需要を抑える動機があり、スマートメーターの導入が進んでいる。

(*3) 例えばソフトバンクの携帯電話料金である「ホワイトプラン」では、午後9時から午前1時までの国内通話が21円/30秒で、それ以外の時間帯は無料(話し放題)であるが、これは典型的なピークシフト料金と言えよう。

(*4) 実は、東京電力では既に一種の時間帯別料金が導入されている。「おトクなナイト10」では、昼間の料金が30.74円/kWhなのに対し、夜間の料金が9.48円/kWhと3分の1程度になる。しかしこの程度の料金差では、かなり極端な生活スタイルでなければお得にならず、需要者自らが家電などをコントロールする必要もあり、普及は進んでいないようである。

(*5) 大口需要者については、時間単位で使用量を計測する電気メーターがついており、需要情報の把握が進んでいる。しかし、自由な電力市場が実質的に成立しておらず、市場原理の活用からは程遠い状況にある。

(*6) 契約アンペア数が40A以上について、基本料金を5倍程度に値上げすることにより、30A以下の契約へ移行する需要者が増える。電力使用量が30Aを超えるとブレーカーが上がってしまうため、節電、特に負荷平準化が促されるという。

(*7) 再生可能エネルギーによる不安定な電力供給を補うために、「需要対応」が期待されているのが、欧州のスマートグリッドである。

シリーズ

【東日本大震災からの復興に向けての意見】

(1) 復興財源は「埋蔵金」によって捻出できる

(2) クラウドで災害に強い自治体システムの構築を

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【調査・研究】


高橋主任研究員顔写真

高橋 洋(たかはし ひろし)
【略歴】1993年 東京大学法学部卒、ソニー(株)入社、1999年 タフツ大学フレッチャー大学院修了、2000年 内閣官房IT担当室主幹、2007年 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、東京大学先端科学技術研究センター特任助教、2009年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員、成城大学非常勤講師、(株)富士通総研経済研究所主任研究員
【著書】『イノベーションと政治学 情報通信革命〈日本の遅れ〉の政治過程』勁草書房 2009年