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復興財源には外貨準備を使え

2011年4月26日(火曜日)

筆者は3月31日に富士通総研のホームページに投稿した『東日本大震災の日本経済に与える影響と教訓(8)』の中で、「復興財源を確保するため、まずは90兆円に上る外貨準備の一部を取り崩すべきだ」と主張した。しかし今日に至るまで、この考えが日本国内で真剣に検討された形跡はない。しかし、政府部内で復興を巡り諸々の会議が乱立しているのみならず、増税か国債発行かという昔からの路線対立に嵌まり込んで議論が前進していない。一刻も早く被災者の苦労を和らげ、日本経済を速やかな回復軌道に乗せるためには残念至極な状況である。然るに外貨準備の取り崩しであれば、それほど大きな反対があるとは思われない。政府は是非この案を検討すべきだ。

1.急増した外貨準備高

日本の外貨準備は、この10年の間に急増した。理由は政府が為替市場に介入して円売り、ドル買いの操作を繰り返してきたからだ。この1年だけでも昨年9月15日に2兆円、さらに東日本大震災直後の3月18日に7000億円の介入を行っている。それ以前に遡れば2003年から2004年にかけては合計33兆円の円売り、ドル買介入をしている。こうして2003年以降合計40兆円にも上るドル買い操作を行った。その結果、日本の外貨準備は2003年3月の5000億ドルから現在の1兆ドルに倍増した。この間、経済全体は4%減少したにもかかわらずである。現在、日本の外貨準備は中国の3兆ドルに次いで世界第2位である。中国の外貨準備が急増しているのも日本と同様、人民元の上昇を防ぐための介入を行った結果である。

外貨準備は何のために必要か? 固定相場制の下では政府が為替レートを一定に保たなくてはならないから自国通貨が安くなった時に備えて保有しておく必要があった。また、国債を外貨建てで発行した場合、将来の返済に備えて外貨を準備しておく必要があった。しかし、わが国の場合、為替は市場に任せており、また外貨建て国債も無いので、そもそも外貨準備を大量に保有し続ける理由は見当たらない。一部の専門家は3か月分の輸入額に相当する外貨準備を持つべきと主張する。十分な根拠があるとは思われないが、3か月程度の輸入額といえば、日本の場合、せいぜい20兆円だ。90兆円はあまりにも大きすぎる。

2.こういう時にこそ使うべき外貨準備

現在の外貨準備高は、円高を是正するためにアドホックに介入を繰り返してきた結果、現在のような高い水準になったのに過ぎない。したがってこれが10兆、20兆円減ったからといって日本国が困ることにはならない。もちろん外貨準備の取り崩しは今回の大災害のような一過性の事態に対処するためのもので、恒常的な財政赤字の辻褄合わせのためになされるべきではないので、復旧、復興に必要な範囲内にとどめるべきことは言うまでもない。

ただし、問題もある。日本の外貨準備はほとんどが米国の財務省証券だから、やり方如何ではドルの下落、つまり円高になる可能性はある。もともと米国は中国や日本政府が自国通貨を安く誘導する政策には反対だから、ドル安になることには反対しないはずだ。もちろん米国債の暴落になるようなことは避けるよう、米国政府ともよく協議し、時間をかけて行うことが必要だ。

3.外国からも支持がある

外貨準備を取り崩して復興財源に充てる、という考え方は日本では聞かれないが、海外ではこのような主張をしている専門家は少なくない。例えば3月25日のフィナンシャル・タイムズで米国のラインハルト夫妻がこのような提言をしている。2人とも著名な国際経済学者で、財政面では保守的な考えの持ち主だ。日本が外貨準備の取り崩しをしないのは円高になることを恐れているからだと見られるが、外貨準備を財源にして国内での復興需要を喚起する方が、円高を恐れて何もしないより、遥かに良い経済政策だ、外貨準備とはまさにこのような時にこそ使われるべきだ、というのが彼らの意見だ。

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根津 利三郎

根津 利三郎(ねづ りさぶろう)
【略歴】
1948年 東京都生まれ、1970年 東京大学経済学部卒、通産省入省、1975年 ハーバードビジネススクール卒業(MBA) 国際企業課長、鉄鋼業務課長などを経て、1995年 OECD 科学技術産業局長、2001年(株)富士通総研 経済研究所 常務理事、2004年(株)富士通総研 専務取締役、2010年 経済研究所エグゼクティブ・フェロー
【執筆活動】
通商白書(1984年)、日本の産業政策(1983年 日経新聞)、IT戦国時代(2002年 中央公論新社) など