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見直しを迫られる日本の電源構成

2011年4月13日(水曜日)

3月11日の未曾有の震災により、東北地方は深刻な影響を受け、福島第一原発は現在も予断を許さない状況にある。このことにより、エネルギー安全保障及び地球温暖化対策の両面で我が国において重要な役割を期待されていた原子力であるが、国民感情の面からも今後、当初期待された2020年までに新設9基、2030年までに14基、設備利用率の大幅な引き上げは期待できない状況である。このことより、2030年へ向けての我が国のエネルギー戦略である、2010年6月に策定された「エネルギー基本計画」については、大幅な見直しが必要である(*1)。本報告では、今後の電源構成の予測及び安全保障・地球温暖化への対応に関して検討を行う。ただし、本報告は速報版であり、今後状況が変化すると思われるので、状況の変化に応じて、再度検討を行う予定である。

1. 電源構成はどうなるのか?

富士通総研経済研究所では、発電部門の技術を詳細に記述した動学一般均衡モデルを用いて、震災後の2020年へ向けての電源構成に関してシミュレーション(*2)を行った。その結果をまとめたのが図表である。エネルギー基本計画(*3)、IEAのWorld Energy Outlook(2010)との比較を示している。富士通総研の推計結果が2020年であるのに対して、エネルギー基本計画では2030年、IEAは2020年と2030年を示している。

まず、エネルギー基本計画の2030年の電源構成であるが、2007年と比較すると原子力のシェアが大幅に上がっている(25.6%(2007年)⇒52.6%(2030年))。また、再生可能エネルギーは、8.6%(2007年)から21.0%(2030年)と大幅に増加する。その一方、石炭、石油、LNGといった化石燃料による発電のシェアは低下する。これにより、ゼロエミッション電源が現状の34%から約70%程度(2030年)、自主エネルギー比率の現状の約38%から約70%(2030年)へ向上する。エネルギー起源の二酸化炭素も90年比30%程度の削減が可能となる。

しかし、我々のシミュレーションによると、先月の大震災の結果、原子力発電によって供給できなくなった電力は、石炭、石油、LNGといった化石燃料に依存せざるを得ない結果となった。そのため、2020年のゼロエミッション電源(*4)は27.9%にとどまり、2007年(実績)の34.2%を大きく下回る。

【表1】日本の電源構成比較

  エネルギー基本計画 IEA 富士通総研試算
2007 2030 2020 2030 2020
石炭 25.3% 11.1% 21.6% 13.4% 28.1%
石油 13.2% 2.0% 2.7% 2.3% 14.4%
LNG 27.4% 13.3% 29.2% 25.8% 29.7%
原子力 25.6% 52.6% 33.3% 41.0% 16.7%
再生可能 8.6% 21.0% 13.2% 17.5% 11.2%

2. エネルギー安全保障と地球温暖化対策の両立

これによれば、2020年の化石燃料(LNG、石炭、石油)の発電に占めるシェアは、72.1%である。2007年の化石燃料のシェアが65.8%であることを考えると、化石燃料のシェアは拡大する。原子力発電を拡大できないことにより、2つの視点が必要となってくる。1つは、停止状態にある原子力発電を他の電源で代替することによる温室効果ガスの増加である。前回のオピニオンでも書いたが、2020年時点において地震が発生しなかった場合と比較すると、今回の震災によって、我が国の温室効果ガス(*5)排出量は4.6%増加(2004年比)する。もう1つは、新規の原子力発電の建設が期待できないため、今後増加する電力需要も化石燃料による発電が必要となり、発電の低炭素化が困難となる点である。

このことは、化石燃料資源の乏しい我が国にとって、化石燃料の安定供給確保が今後もエネルギー安全保障上、非常に重要な政策課題とであることを示している。特に、中国・インドを中心とした化石燃料の需要の拡大が予想され、化石燃料価格の高騰、燃料確保が困難となる可能性は十分にある。

さらに、より一層の再生可能エネルギーの活用も考える必要がある。フィードインタリフ(Feed-in Tariff,固定価格買取制度)など市場プル型の政策が進行しているが、技術開発の拡充による技術プッシュも重要となってくる。

3. おわりに

今回の震災により、我が国のエネルギー戦略および地球温暖化対策戦略は根本より見直す必要がある。今後、原子力の新規建設および設備利用率の大幅な向上は非常に困難であり、経済の成長と地球温暖化問題を両立する新たなる戦略を一刻も早く行う必要がある。記述した、化石燃料の確保および再生可能エネルギーの拡充に加えて、化石燃料火力発電所の発電効率の向上(省エネ)、電力需要の大幅な削減が必要となる。都市のあり方を含めて社会全体を大幅に低炭素・低エネルギー消費型へ変革する時期が来ている。

注釈

(*1) : SankeiBizWeb版2011.4.5 05:00、“経産省、エネルギー基本計画見直し着手 事故検証、年内にも原案”

(*2) : シミュレーションの前提条件として、仮に、現在震災により発電を停止している原子力発電所による発電が行われない、さらに原子力発電所の新設が無いとした場合の電源構成に関して2020年までの推計を行った。CO2排出量に関する制約は課さず、最小価格での電力の供給を仮定した。

(*3) : 経済産業省 資源エネルギー庁編(2010)、「エネルギー基本計画」、財団法人 経済産業調査会

(*4) : ここでは、再生可能エネルギーと原子力をゼロエミッション電源とする。

(*5) : エネルギー起源の二酸化炭素のみを対象とする。

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【調査・研究】


濱崎 博(はまさき ひろし)
株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員
MSt (Master of Studies) in Manufacturing, University of Cambridge, Wolfson College, the United Kingdom.
MSc (Master of Science) and DIC (Diploma of Imperial College) in Energy Policy, Imperial College Centre for Environmental Technologies (ICCET), Imperial College of Science, Technology and Medicine, University of London, the United Kingdom.
1995年 富士総合研究所(現 みずほ情報総研)入社、1997年 富士通総研経済研究所入社、2007年~2009年 国際公共政策研究センター出向、2009年5月~ 国際公共政策研究センター客員研究員。