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東日本大震災の日本経済に与える影響と教訓(2)

住基ネットを活用した迅速な安否情報提供

2011年3月23日(水曜日)

3月11日に発生した東日本大震災は、地震の大きさや範囲、余震の数など、これまでの想定を超えた規模であり、被害の規模も日にちが経つにつれて大きくなっている。3月22日現在、死者と行方不明者は合わせて2万1千人を超えたと報道されており、さらに原子力発電所の被災により避難者の数は約31万人に及ぶという状況にある。

被災地においては、まずは自らの生命の安全確保が第一であるが、次に必要となってくるのは安全や生活維持のための情報、そして家族や親族などの安否情報であろう。

1.民間による安否情報の提供

避難生活を送る人々にとって、自分の家族や親族などの安否が不明なまま過ごすことは精神的にもかなり辛いことだ。また、被災地に居住する家族や親族を気遣う人々にとっても、安否情報が不明なままではいたたまれない気持ちであろう。

このような気持ちに応えるように、Googleでは「Person Finder(消息情報):2011 日本地震」(*1)を開設し、「人を探す」機能と「消息情報を提供する」機能を提供し、すでに40万件以上の情報(3月22日現在)が登録されている。また、赤十字国際委員会では日本赤十字社と協力して「ファミリーリンク・ネットワーク」(*2)を開設し、氏名リストの検索、無事リストへの登録、捜索リストへの登録ができるようになっている。6か国語対応になっているため、外国人の利用が多く見受けられる。他にも携帯電話の災害用伝言板、twitterを使って収集した情報、避難所の名簿情報など、あらゆる情報提供の支援が広がっている。

このような民間による支援の輪の広がりは大変心強いものであり、今後の復興に向けた大きな希望となるだろう。しかし、人々が被災からの落ち着きを取り戻すにつれ、より正確な情報を必要としてくると思われ、行政としても準備をしていくべきではないだろうか。もちろん行政にとっては住民の安全や生活の維持が最優先事項であり、情報整備は後回しにならざるを得ない。情報整備の検討の際に、この案を思い出していただければ幸いである。

2.県の住基ネット情報を活用する

通常の災害であれば、防災機能を備えている市役所や町村役場が機能しており、下記の行政機関の個人情報保護法第8条第2項第4号の規定により、保有している住民情報を活用して安否情報を作成し、必要としている人々に提供することができるだろう。

行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律

(利用及び提供の制限)
第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。

(中略)
四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

しかし、今回の大地震では津波によって役所・役場自体が被災したところもあり、市町村が保有する住民情報を活用することが不可能かもしれない。この場合、県で管理している県下市町村の住基ネット情報が活用できる。県の住基ネットサーバでは、県下市町村の住民に関する最新の4情報(氏名、住所、生年月日、性別)を管理しているからだ。

だが、ここで問題が1つある。最高裁の判例によれば、住民基本台帳法の保護規定は行政機関の個人情報保護法の規定に優先して適用されると解釈されており、県は前述の規定を使って住基ネットサーバの情報を使うことはできない。可能性があるとすれば、住民基本台帳法第30条の8第2項の「条例で定める事務を遂行するとき」である。すなわち、被災した市町村を抱えた県では、早急に期限付き等の特別な条例を制定し、住民の安全と生活を守るために住基ネットの情報を活用してはどうだろうか。

住民基本台帳法

(都道府県における本人確認情報等の利用)
第三十条の八 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合には、保存期間に係る本人確認情報を利用することができる。

一 別表第五に掲げる事務を遂行するとき。

二 条例で定める事務を遂行するとき。

三 本人確認情報の利用につき当該本人確認情報に係る本人が同意した事務を遂行するとき。

四 統計資料の作成を行うとき。

3.住基ネット情報の活用にあたって

住基ネットについては、これまでプライバシーが侵害される等々の批判がされてきた。しかし、大規模災害における安否情報の確認という明確な目的があり、生年月日ではなく1月1日現在の満年齢を表示する、住所については番地以降を表示しないなどの工夫をすれば、権利侵害だと批判されることもないだろう。

各住民の安否情報、現在の避難場所情報等を整理して情報発信すれば、被災者および被災者を心配する人々にとってどれだけ心の支えとなり、明日への活力となるだろうか。

技術的には住基ネットのデータは外字(通常のパソコンでは扱えない漢字)が含まれるため、パソコン上では漢字が表示できないという問題が出るだろう。その場合には、とりあえず□で表示しておき、後日類似した漢字に置き換えていけばよい。それまでは「ふりがな」で対象者を特定してもらうことで対応してもらう。

今後、避難場所が変更になったり、自宅に戻ったり、親戚へ身を寄せたりという人も出てくるだろう。また、残念ながら避難所で亡くなる方も出てきている。さらに、仮設住宅がどれくらい必要なのか、避難場所への救援物資の配給においてその数量や物資の種類が適切かなども考えていかなくてはならない。このような観点からも、情報を整備していく必要があるだろう。

注釈

(*1) : http://japan.person-finder.appspot.com/

シリーズ

【東日本大震災の日本経済に与える影響と教訓】

(1) 巨大地震がわが国マクロ経済に与える影響

(3) わが国のエネルギー政策、地球温暖化対策へのインパクト

(4) 電力不足が日本経済に与える影響

(5) 東日本大震災後の日本産業

(6) 計画停電について考える:電力システムの再設計を

(7) 高齢社会における防災と地域づくりのあり方について

(8) 明日の日本再構築に向けて

関連サービス

【調査・研究】


榎並 利博(えなみ としひろ)
(株)富士通総研 経済研究所 主席研究員
1981年富士通株式会社に入社、住民票システムや印鑑登録証明システムなど自治体のあらゆるシステム構築に従事する。96年から株式会社富士通総研に出向し、電子政府・電子自治体、地域活性化、行政経営に関する研究やコンサルティングを数多く手がける。また、政府委員会委員、研究機関の委員会委員などを歴任。主な著書『住基ネットで何が変わるのか』、『電子自治体 パブリックガバナンスのIT革命』、『電子自治体-実践の手引』、『自治体のIT革命』など多数。