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クラウドサービスとお客様の経験価値(Customer Experience)その2

2011年2月25日(金曜日)

1.IaaSの顧客経験価値

クラウドサービスとお客様の経験価値(Customer Experience)その1 では、IaaSの顧客経験価値を以下のように考えました。

製品のコモディティ化は性能・品質の差をなくし、応答時間・稼働率・サービス時間等のSLA(service level agreement)を比べても他社との遜色がなく、それらは顧客の商品選択の価値判断の基準とならなくなってしまいました。その結果、顧客が他社製品との差異を大きく感じるものは運用や保守等へ移りました。それは、コモディティ化された製品では、使い始めの手軽さや、使用中の不都合(障害等)への対応(アフターサービス)の良し悪しが次の製品の選定の大きな選択要素になってきていることに起因していると述べました。


つまり、コモディティ化された製品には質の高いサービスを追加することで、商品全体として価値を高め、顧客に安心感を持ってもらい、顧客を惹き付けることができるということです。製品そのものとサービスは独立していても、お互いに上手く補完させて、使ってもらう価値(顧客経験価値)を高めることが重要な要素となっているのです。

今回はこの顧客経験価値について、SaaSではどのようなものかを考察しますが、その前にソフトウェアの特徴を考えます。

2.ソフトウェアのビジュアル性

【図1】ソフトウェアのビジュアル性

【図1】ソフトウェアのビジュアル性

ソフトウェア開発に従事していた時によく遭遇した問題です。上司から「開発が遅れているのに何故発見が遅れたのか?」、「何故バグの発見を見逃すのか?」、その挙げ句に、「マネジメントがまるで出来ていない!」と厳しく叱咤された記憶があります。その時、ソフト開発は一般の建築物の構築とは違ってビジュアル性が低く(当時の感覚では全く無かったと言ってもよいと思います)、それに適切に対応する能力が必要だと思いました。【図1】のように、ビルの建築なら徐々に階を重ねて完成していくので、工程通りに進んでいるかどうかがわかります。また、途中途中で設計図と比べて不都合があるかどうか、完全ではなくてもある程度は目でチェックすることもできます。しかしながらソフトウェアは形がないので、管理者が開発状況をビジュアルに捉えるのが難しい状況でした。

開発会議で担当者からの報告を聞き、現場でのコミュニケーションから推測する方法しかないと話した記憶があります。このことはソフト開発管理をやった人ならば誰もが苦労した部分だと思います。今ではその経験を生かした開発技法も充実し、マネジメントもしっかりするようになり、工程遅延や品質悪化等も早期に発見されるようになってきました。しかしながら、ソフトウェア開発において、この種の問題が今でも発生しているのを見ると、やはりソフトウェアのビジュアル性が問題解決を難しくしているのだと思います。この点を含めて、SaaSの顧客経験価値を考えてみましょう。

3.SaaSの顧客経験価値

今のところSaaSの業務は、グループウェア、Web会議、ブログ等のコラボレーション業務やCRMのような汎用性の高いノンコア業務が中心ですが、そのソフトウェアには業務内容とともに運用や保守のような付帯サービスが組み込まれています。ここに以下に示すSaaS特有の特徴があると考えています。

  1. SaaSにはサービスがプロセスとして組み込まれているので、特定のSaaSを利用するとサービスの内容が決まってしまいます。IaaSの時には製品とサービスが切り離されていたので、独立を保ちながらお互いに補完していたのですが、SaaSでは製品とサービスが独立していないという特徴があります。
  2. ソフトウェアのビジュアル性が低いために、業務やサービスの内容が実感できないということがあります。一般的に「サービスは形が無くて、見えないもの」とのイメージもありますが、ビジネスとしてSaaSを進めるならば「サービスは形が無くて、見えないもの」の世界では通用しません。

グループウェアのような汎用的な業務のSaaSならば、サービスの内容をある程度実感できるかもしれませんが、大規模な業務では難しいと想定されます。例えば社会クラウドのような大規模な場合を想定すると、そのサービスが何かを説明した資料がなければ、利用者は何が解決されるのか分からず、SaaSを利用する気持ちになりません。SaaS提供者がすべきことのポイントは、提供するビジネスプロセスとサービスの内容をカタログ化して、さらにその内容を上手く顧客に伝えられるように作り上げることです。

IaaSのSLAは提供内容についての各種条件を利用者に明示して質の保証を行いますが、同じように社会クラウドのようなSaaSにおいては、商品説明のカタログを作り上げてプロセスとサービスの内容を明らかにすることが重要になります。このカタログは従来型のソフトウェア説明書とは違うもので、顧客の目線で記述することが重要となります。このようにして内容が明らかになれば、業務アプリケーションのプロセスとサービスの質の保証がユーザーに伝わり、利用する顧客の心地よさが体験できることになると思われます。このような顧客の目線でサービスとして記述した説明書がSaaSのSLAとなると考えています。

4.顧客経験価値を高める

【図2】Customer Experience

【図2】Customer Experience

さらにこの説明書に、お客様に心地よさを感じてもらい、購買意欲を促す仕組みが入っていれば、より一層の効果を生み出します。例えば、ファストフード店では、来店したお客様に早く注文を取る迅速性や、間違って食事を出さない正確性が重要なことは素人の私でもわかります。しかしながら、それ以上に、お客様が入店した順番に配膳することが重要だと聞いたことがあります。そのようにしないと、その店はお客様から嫌われる可能性が高く、店としては考慮しなければならない要素だというのです。やはり「first入店、first配膳」のような、お客様の心地よさを引き出して購買意欲を損なわない仕組みを取り入れる努力がソフトウェアでも重要なのではないでしょうか。

ソフトウェアでは次のようなことが考えられます。例えば、証券会社が金融商品をWebにて顧客へ説明する場合、

  1. お客様にフィットする有用な資産形成商品を洗い出す。
  2. その商品情報をわかりやすくWebに掲載する。

というプロセスでソフトウェアを開発します。この2.の部分に、お客様に心地よさを感じさせて購買動機を促す仕組みを入れる必要があるのだと思います。ただし、商品をわかりやすく掲載する部分については、ベンダーの過去の経験だけでなく、顧客の知識や経験が大事です。【図2】のように、提供するSaaSに対してお客様に経験していただき、価値を高めてもらい、顧客とのコミュニケーションによってフィードバックしていただき、SaaSのプロセスに反映させる努力が必要だと思います。その顧客の経験価値を取り入れたSaaSにより提案力を向上させ、お客様に新たな視点での解決策を提示することができます。

このように考えると、顧客の経験価値を上げる為には、お客様の心理や行動まで含めて考える必要があり、エスノグラフィック等の手法は重要な武器となります。さらにお客様に説明書だけでSaaSのビジネスプロセスとサービスを十分に理解してもらうのは難しいこともあります。そこで、顧客への改善提案と顧客経験価値を高める施策を一緒に考えるコンサルティングサービスも重要となるのです。

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藤原寛文

藤原 寛文(ふじわら ひろふみ)
株式会社富士通総研 執行役員常務
【略歴】
1973年 早稲田大学理工学部電気工学科卒、富士通株式会社入社。金融システム部にて都銀のオンラインシステム開発に従事。1999年以降、インターネット、CRM、ユビキタスのソリューション開発に従事。2005年 富士通総研 執行役員常務。