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アメリカで広がるXBRLの波

2011年2月18日(金曜日)

米国証券取引委員会(The U. S. Securities and Exchange Commission : SEC)が運用するEDGARシステム(Electronic Data-Gathering, Analysis, and Retrieval system)は、世界最大の米国資本市場における企業情報開示制度を支える電子開示システムです。1990年代に開発され、2002年には外国会社も含むすべての米国上場企業にEDGARシステムへの報告が義務づけられました。

EDGARでは、電子開示のフォーマットとしてHTMLとテキストが使われています。このため、「電子開示」とはいっても、人間が閲覧することしかできない方式であり、投資家の投資分析などのコンピュータによる分析のためには、大きなコストをかけてデータ化することが必要でした。また、SECに求められる投資家保護の業務、たとえば報告書への虚偽記載の摘発など、高度なデータ分析が必要な市場監督業務のためには、コンピュータ処理が可能なフォーマットの採用が必要との議論が2000年代後半から高まりました。

SECはそのフォーマットとして「インタラクティブ・データ」という概念を提案し、企業情報開示システムの高度化を行うことに決定しました。同時に相応しい技術についての調査・検討を開始しました。その結果、白羽の矢が立ったのが、XMLを利用した財務報告標準であるXBRL(eXtensible Business Reporting Language)です。

XBRLは1998年に米国の会計士がインターネットの普及とXMLの誕生から発想したもので、2000年代に入り、グローバルに標準化活動が行われてきました。

世界で初めて本格的なXBRLによる企業開示が開始されたのは日本であり、米国に先んじること1年の2008年3月、金融庁が運営するEDINETシステムに於いてXBRLが義務化されました。その意味では資本市場の先輩格の米国に日本市場が一歩リードした希有な例といえると思います。ただし、現状EDINETでのXBRL化対象は財務諸表本表のみであり、注記も含めて報告書全体をXBRL化している点では2009年に稼働したEDGARシステムが抜き返した、とも言えます。

SECがXBRLに着目したのは、以下のポイントです。

  • グローバルに財務情報を記述できる唯一の標準である
  • 非常に柔軟な拡張性を有しており、企業開示という共通ルール(会計基準、財務報告ルール)へ準拠しつつ、個別企業の特有の活動を適切に記述できる
  • XMLをベースにした技術仕様であり、特定の言語、アプリケーションに依存せず、HTMLにも高い親和性がある。結果として、人間にとっての可読性とアプリケーションでの処理が必要という、企業開示情報の二面性を両立できる

EDGARシステムにおけるXBRL適用の本番は2009年7月から開始され、初年度は時価総額上位約400社、2年度目には約1200社、3年度目の2011年にはすべての企業(約12,000社)がXBRLで記述された年次報告書、四半期報告書などを提出することになりました。併せて国際財務報告基準(IFRS)採用企業の報告書の受け入れも行われることになっています。2011年1月現在、1521社の4,897件の報告書がXBRLでEDGARに提出、開示されています。なお、日本企業でSEC報告を行っている20数社のうち、すでに18社がXBRLでの報告を行っています。

XBRLが義務化されたことにより、米国では民間に以下のような新規サービス提供の動きが出てきています。

  • XBRL報告書の作成支援サービス(印刷会社など)
  • XBRLで作成された文書のアシュアランスサービス(監査法人など)
  • XBRL報告書の分析サービス(データベースベンダーなど)

さらにSECでは、内部の監査官がXBRL報告書を高度に分析し、審査する業務を、飛躍的高度化するための「審査業務システム」の構築を開始しています。以下の機能が実装されると言われています。()

  • 報告書の内容の検証ルールの定義
  • 様々なデータの統合
  • 報告書内容の検証・分析の自動化

SEC自体は、この審査業務システムの内容を正式には発表していませんが、類似の事例としては日本銀行の考査システムが有名です。

日本銀行では2006年より考査システムのXBRL対応を行っており、以下のような効果を挙げたことが報告されています。

  • 金融機関からの経営報告プロセス迅速化(4日→1日以内)
  • 報告内容の正確性を向上(98%以上の精度)
  • 金融機関の統廃合を加味した経年比較を実現

それまでのスプレッドシートソフトによる報告の収集では行えなかったXBRL辞書(タクソノミー)の利用による報告項目の定義・チェックルールの報告作成側、収集側での共有によって、考査報告業務に対する大きな業務改善効果が見られたことが報告されているのです。

富士通総研では、こうした公的機関のXBRL適用のモデルケースがグローバルな企業のグループ経営管理、内部報告のプロセスの高度化に応用できると考えており、そのためのコンサルティングサービスの検討・提供を開始しています。

国際財務報告基準(IFRS)の適用が進展する中で、グローバル企業が今後直面する様々な経営課題を解決するためのインフラ・武器として、XBRLを有効活用したソリューションを富士通総研は富士通グループと共にご提供していきます。

注釈

富士通プレスリリース 平成22年10月25日
「米国証券取引委員会様が富士通のXBRLソフトウェア「Interstage XWand」を採用」

参考情報

XBRLインターナショナル ホームページ

XBRL US ホームページ

XBRLジャパン ホームページ

SEC XBRLホームページ

関連サービス

【研究開発】


大槻 文彦(おおつき ふみひこ)
(株)富士通総研 ビジネスプロセスソリューション事業部 シニアマネジングコンサルタント
【略歴】
1958年 神奈川県生まれ、1982年 東京大学教養学部文化人類学分科課程卒、富士通株式会社入社、2007年 株式会社富士通総研へ出向、2010年 一般社団法人XBRL Japan 理事副会長
【執筆活動】
「XBRLが拓く会計情報開示」(2009年 中央経済社)共同執筆