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最新コンシューマエレクトロニクスは羨望の次世代消費者生活を描けるか

~2011 International CESから垣間見えたもの~

2011年2月1日(火曜日)

1. International CES とは

International CES(International Consumer Electronics Show)は毎年年初に米国ラスベガスで開催される北米最大の家電ショーである。その名の通り、コンシューマエレクトロニクス製品全般を取り扱い、2011年も1月6日~9日の日程で開催された。業界関係者向けの展示会で一般公開はされていないものの、出展社数は2700社、来場者数は14万人に及ぶ。CESはその年の業界の景気を反映しているといってよい。今年はリーマンショック後、縮小傾向にあった展示が盛り返し、大いに盛り上がりを見せ、入場者数も増加した。

CESは数多くの新製品発表の場でもあり、業界キーパーソンの年初の基調講演の場でもある。開催期間中は日本でも日系企業の発表を中心に多くの報道がなされ、ブロガーに開かれたイベントということもあってネット上に数多くの情報が流通したので、本稿を読まれている方も何らかの形でレポートを目にしていることだろう。

本稿では、筆者が昨年に引き続きCESを調査する中で、日本の報道ではあまり触れられていない部分について述べてみたい。

CES会場の様子

【写真1】CES会場の様子
写真は「Connected Home Appliances」などが展示されている
サウスホール1階の中央部付近から撮影。

2. 表の主役TVとタブレット

多くの報道で今年の主役を張るのが、タブレットだろう。スマートフォンで注目が集まり、タブレット用Android 3.0の発表もあったAndroidを搭載した数多くの新製品のほか、日本ではあまり馴染みがないBlackBerryのタブレット「PlayBook」、富士通からも新製品発表のあったWindowsタブレットの新製品が会場でも注目を集めた。Apple社は展示していないが、数多くの展示ブースでiPadとの連携デモンストレーションや関連製品の展示が見られた。タブレットが今年のコンシューマエレクトロニクスの主役であることは間違いないだろう。目に見えるハードウェアとしてのタブレットのほか、タブレットで提供されるサービスを支えるLTE等の無線通信技術やGPS等の連携技術、アプリケーション等もまた、今年のCESの重要なテーマである。ハードウェアそのものよりも背後にあるインフラやサービスを説明するブースにスペースが割かれ、実際の操作体験をアピールしていることも印象的だった。

また、昨年のCESで複数メーカーが製品を発表して目玉となっていた3DTVも、本年度引き続き話題の中心にある。3DTVのフルラインナップを競うメーカー、発売予定の裸眼3DTV、次世代3DTVの技術展示などがなされ、これも大きく報道されたと思う。

TVはよりパーソナルメディアとしての機能が強化される傾向がある。一部でSmart TVと呼ばれ、ネット上の動画コンテンツを統合して視聴者に提供する技術などがアピールされている。TVのネット融合は、より高度なものへと進化し続け、動画配信サービスを統合して提供し、検索やリコメンドを可能としている。サービスの方向性こそ似ているが、メーカー間で違いがよく出ているのが、これらのネット拡張機能のユーザーインターフェースである。実際に触ってみて完成度の高低はあるものの、ソニーのGoogle TV用のボタンリモコン、LGのWiiリモコンのようなポインタ方式、パナソニックのVIERA Tabletなど明確な違いが出ている。高齢者に分布が偏る日本の市場を想定した場合、ユーザーインターフェースの差は、メーカー間の顕著な差別化ポイントになると考えられる。

ユーザーインターフェースに関連してもう一つの注目としては、MicrosoftのKinectをはじめとするジェスチャー入力方式も多くの展示と発表があり、会場のあちこちで体験操作する姿が見られた。

3. 今年のCESの見どころをどう見るか

報道の中心はタブレットやTVだと思うが、開催にあたっての主催者側の説明では、2011年のCESの見どころは、小型の端末、インテリジェンス、センサー、アプリケーションの4つということだった。

小型端末の見どころとはスマートフォンやタブレットを指しており、インテリジェンスはスマートフォンやタブレットの背後にある関連技術およびネットワークサービス、つまりGPSや無線網、コンピューティング能力を指している。センサーはホームコントロールやヘルスケア、フィットネス、エネルギーマネジメント等の複数センサーの組み合わせによるサービス、そしてアプリケーションはサードパーティ製アプリケーション開発によるサービスの拡大を意味する。

多くの注目を浴び、報道でも数多く取り上げられた小型端末と比較して、インテリジェンス、センサー、アプリケーション分野の報道の扱いは小さい。しかし筆者には会場を歩き回るにつれ、これらが今年のCESのもう一方の主役であると感じられたのである。

HEMS関連展示例

【写真2】住宅を模したステージにスマートメータ、エネルギーマネジメントシステムのほか、EV、PV、スマートアプライアンスを一同に集めた複数社合同によるHEMS関連展示例

4. 影の主役?インテリジェンス&センサー

筆者がそう思う理由は、前年と比較して今年のCESではスマートなホームアプライアンス製品の展示が際立ったことである。センサー類もHEMS(Home Energy Management System)関連を中心に数多く展示されている。加えてEV(電気自動車)やその関連設備の展示が増えているのも今年のCESの特徴である。

ホームアプライアンス製品ではGEやLGなどのメーカーから、米国のスマートグリッドにおける時間別電気料金を有効活用しエネルギーコストを下げるキッチン家電や洗濯機が展示されていたほか、無線通信機能など機能面に各社に違いはあるが、円形のロボット型掃除機(日本ではiRobot社のルンバが有名)が多くのメーカーから出展されていた。

ヘルスケアやフィットネス関連製品通信規格のant+、ホームコントロール系無線通信規格として、ドア錠や流量計など、様々な対応製品を増やしつつあるZ-Wave、エネルギーマネジメントを強調するZigbee、オーディオを中心に、家庭にある各種機器を統合制御するホームコントロールプラットフォームControl4等、日本ではあまり見ることができない各種規格やアライアンス、プラットフォームによる展示を見るにつけ、センサーという消費者との接点の背後に、インテリジェントの存在がより具体化しつつあることが感じられる。現在は集めてきたデータを可視化するレベルの製品が多いが、使用者の生活パターンに合わせてリコメンドを行ったり、自律的にコストや利便性を考慮して動作を制御したりする可能性を展示各社は訴えている。

これまでPCをはじめとする黒物家電にとどまっていたコンシューマエレクトロニクス製品の頭脳に当たる部分をネットワーク側に引き上げるというトレンドは、白物家電へと広がりつつあることが、CESの展示から見て取れる。コンシューマエレクトロニクス製品が採用しやすい無線通信環境が広がるにつれ、コンシューマエレクトロニクスの頭脳がネットワーク上へ移る、すなわち「脳みそが雲の上にある」製品が増えていくことになるだろう。

ヘルスケア関連

【写真3】米国でもベビーブーマー世代の高齢化により、フィットネスやヘルスケア製品関連市場は注目である。各種センサーでバイタルを取得し、健康管理に生かすための製品展示が増えた。

前述のように、展示の熱気と比較して、報道ではこれらの扱いはまだ小さい。そのことを筆者が端的に感じたのは開催3日目にあったスマートグリッドホーム(注:筆者は以前、スマートグリッドを3Sでとらえ、そのうちの一つがスマートホームであると述べたが、このスマートホームに該当する)に関するカンファレンスに参加した際である。空席が目立ち、メディア関係者の入場者が少なく見受けられた。このカンファレンスでは、上記のようなスマートなホームアプライアンス製品などの将来性等に触れていたのだが、果たして何故メディアは取り上げようとしないのか。一言でいえば、それはまだスマートグリッドホームがまだ視聴者を羨望の眼差しを向ける「絵」にならないからではないだろうか。「絵」にならないとは、すなわち価値を視聴者に訴求できていないということである。

5. 次世代の消費者生活を描け

これまでネット家電やセンサーネットワークの有無効能は一つ一つが非常に小さな効用であり、商品の付加価値や、サービスとしての対価が非常に小さく、得にくいという特性があった。これが技術的な検討が繰り返されるものの、市場が広がらない原因となっていた。しかし、CESの展示を見る限り、センサーの連携やネットワーク経由でコンシューマエレクトロニクスの性能を補完するインテリジェンスを提供することで、提供価値はより大きくできると感じる。あとは、いかに消費者に価値を見出してもらえる「絵」、すなわち次世代の消費者生活を描き出せるか(そしてそれを共感してもらえるか)にかかっている。

日本市場を考えた時、消費者は家電製品も所有し、新しいものが欲しいという渇望感がない状況にある。この渇望感を生み出すためには、かつて団塊の世代がアメリカのホームドラマの中で見たような、次世代の消費者生活を見出せるような状況を作る必要があるだろう。そしてその要素は今年のCESに多く隠されていたと思うのだ。次世代の消費者生活が描けたのなら、そこにはシンボルとなるコンシューマエレクトロニクスが存在する。それが何になるのか、2011年のコンシューマエレクトロニクス業界を注視したい。

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鈴木佐俊

鈴木 佐俊(すずき さとし)
富士通総研 通信・ハイテクコンサルティング事業部 所属 シニアコンサルタント
新技術を適用したビジネス・クリエーションや、戦略的提携に関するコンサルティングに従事。