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ポストCOP10の生物多様性戦略

2010年12月27日(月曜日)

10月に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、「愛知目標」と「名古屋議定書」を採択して、成功裡に終わりました。生物多様性への取り組みが本格的に求められる時代が到来したといえます。

「愛知目標」は、世界的に「2020年までに生物多様性の損失を止めるために実効的かつ緊急の行動を起こす」ための戦略計画です。「陸域17%、海域10%を保護地域とする」、「劣化した生態系の15%以上を回復する」、「外来種の侵入を防ぐ」など、20の個別目標が合意されました。生物多様性保全に関する規制強化が国内外で進むことは確実です。

「名古屋議定書」は、生物資源利用に関する利益配分のルールです。他国の生物資源を利用する企業には、資源提供国の事前同意が義務付けられ、製品開発等による利益の配分方法を明記した契約を締結する必要があります。2012までの議定書発効を目指して、日本でも国内法の整備が始まります。生物資源の調達コストに上昇圧力がかかります。

企業にとって、生物多様性保全は、単なる社会貢献活動ではありません。将来の規制強化や対策コスト増大、さらには調達条件への反映などを考えれば、本業のリスク管理として取り組むべきものとなります。生物資源の利用だけでなく、エネルギー・資源の開発行為や土地利用に伴う自然破壊も考慮すれば、サプライチェーンを含めたほとんどの事業活動を対象に、生物多様性に及ぼす影響を精査し、リスクの最小化を図る必要があります。

一方で、ビジネス機会の拡大も期待されます。国連では、2020年の生物多様性ビジネスの市場規模を約2,800億ドルと試算しています。先進国から途上国への資金援助の具体的目標は2012年までに検討される予定です。生物多様性保全資金の流通拡大を見越して、国際的なビジネス開発競争が活発化しそうです。海外では生態系損失の定量評価や市場メカニズム活用も試行されています。

日本政府は、途上国支援のために3年間で20億ドルの拠出を表明しましたが、資金の出し手に終わることなく、日本企業のビジネス機会獲得につなげる方策を真剣に検討すべきです。2012年までに、全都道府県が生物多様性保全の地域戦略を策定するという国内目標も掲げられました。地方行政においても、生物多様性に配慮した魅力ある都市・地域づくりが求められます。

COP10の開催は、日本にとって、生物多様性問題への理解を深める契機となりました。COP10を経て、企業や地域社会には、生物多様性の視点から自らの価値を捉え直し、新たな価値創造を図れるかどうかが問われています。

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生田上席主任研究員

生田 孝史(いくた たかふみ)
(株)富士通総研 経済研究所 主任研究員
1990年 東北大学大学院修士課程修了、(株)長銀総合研究所入社、
1998年 米国デラウェア大学大学院修士過程修了、(株)富士通総研入社
専門領域:エネルギー・環境政策 、環境・CSR関連経営戦略、環境ビジネス・関連市場動向、環境シナリオ・ビジョン、グリーンIT