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自治体の仕事を変える~自治体アセスメントによる組織改革~

2010年12月3日(木曜日)

1.解決すべき課題

各自治体では、税収や交付税が減少するなか、行財政改革の一環として職員定数の削減を行ってきました。その実現のために、長期間にわたり新規採用の抑制による自然減が行われた結果、職員の働く現場では次のような状況が見受けられるようになりました。

  1. 職員構成に占める若年層比率が減少し、中堅層以上が増大した。
  2. 事務事業の廃止や民間部門への移管など、大規模なリストラクチャリングを伴わずに、職員数のみが徐々に減少した所属では、慢性的にリソース不足が発生している。
  3. リソース不足の結果として、ベテラン職員の超過勤務の日常化や、臨時職員の雇用の常態化が見られるようになった。社会保険の対象とならない臨時職員の増大は、官製ワーキングプアへとつながる。

自治体の業務スタイルは、業務を機能単位に分解・分担するのではなく、事務事業単位に分掌する特徴があると言えます。具体的には、個々の事業や業務毎に「担当」職員を決め、その事務に係わる一連の業務を担当職員が執り行います。

また、業務内容については、多様な社会のニーズに対応するため、専門化、複雑化しているものが多くあります。このため、同じ所属の中でも、担当が異なる場合、お互いどのように業務を行っているかわからないというようなことも起こります。

このような自治体業務の特徴は、前述のような職員数減少下の自治体においては、次のような問題を引き起こします。

  1. 業務が機能単位で整理されていないため、臨時職員等に任せる業務が明確にし難い。このため、ベテラン職員が定型的な単純作業をも自ら処理することになり、多忙感は増すが、コスト的な生産性は下がり続ける。
  2. 職員数の減少により、1つの事務を複数の職員で担務することが困難になり、実質的に1人の職員だけが担務する場合が増える。このような業務では、人事異動で担当が変わると、非常に短い期間で引き継ぎを行わなければならない。結局わからない部分は、一から自分で調べながら、実際の業務をこなしていかなければならず、中堅職員といえども生産性は低下する。また、基本的に3年程度で人事異動となるため、業務に精通し、業務の問題点や改善すべきテーマが見えてきたころで、異動となってしまい、折角の知見が生かされない。

このような問題の発生を回避するため、取り組むべき課題は、チームとしての生産性向上と業務ノウハウの確実な継承であり、そのために組織の業務スタイルの変革を行うことと考えます。

現状においては、「能力・成果主義」によって個々の職員のモチベーション向上を図ることよりも、組織全体のポテンシャルを引き上げることが優先性の高い課題であると思われます。

2.課題解決方策の提案

具体的な課題解決策を検討する前に、まず現状を可視化する必要があります。

そのために適用するのが以下のアセスメント手法です。対象の組織に対して、業務の量、難易度、個別スキルの要求度と、人的リソースの量、職種・職位、経験量を可視化します。これらを比較することによって、現場で発生している問題を明らかにします。

【アセスメントの準備】

アセスメントを行うにあたり、まず関係者への簡単なインタビュー等を行いながら、以下の準備作業を行います。

(1)業務の調査

対象とする組織の業務を洗い出します。基本的には、職務分掌事項等をベースに、各「担当」の業務内容、業務機能がイメージできるレベルまで細分化します。

(2)人的リソースの調査

対象組織の構成職員について、職員の種別や、職位別に整理します。

【調査の実施】

対象組織の所属長やリーダーの方に対し、以下の調査を実施します。

(目的)業務の難易度レベルと必要な固有スキルの評価

(内容)各業務について、以下のような内容について評価していただきます。

  • 業務実施に求められる判断力と知識について、5段階程度で評価(特定の業務スキルは考慮せず、平均的な職員像に照らし合わせた場合のレベル)
  • 業務実施に必要な固有のスキルや専門知識のレベルについて、習得までのおおよその期間をベースに評価

次に、対象組織の職員全員に対して、以下のアンケート調査を行います。

(目的)業務の量や、職員の経験年数の把握

(内容)各業務に、実際に職員がどの程度の時間をかけているかを調査します。

また、その業務の担当としての経験年数、業務の分担体制についても調査します。

【可視化の観点】

(1)組織のコスト的なパフォーマンスの可視化

組織全体として、業務の難易度レベル毎の業務量と、職位別の人的リソース量の間の乖離状況を把握します。【図1】は、それぞれのレベル毎に業務とリソースの乖離状況をグラフ化したものです。パフォーマンスの指標としては、レベル毎にコスト的な加重をした業務量とリソース量の総量比を用います。

難易度毎の業務とリソースの乖離状況

【図1】難易度毎の業務とリソースの乖離状況

(2)業務に必要な固有スキルの習得状況の可視化

実施にあたって、固有のスキルが求められる業務について、業務を実施する職員の経験年数と、一般的な習得期間を比較し、経験年数が不足している業務時間を抽出し、集計します。指標としては、この集計値と、組織全体の業務量との比を用います。

(3)固有スキルの継承に関するリスクの可視化

実施にあたって、固有のスキルが求められる業務について、実質的に1人の職員が行っている業務の時間を抽出し、集計します。指標としては、この集計値と、組織全体の業務量との比を用います。

3.アセスメント結果の活用

アセスメントで明らかになった現状の姿をもとに、組織として最適な業務の実施方法や体制を検討し、生産性の向上と業務ノウハウの継承を図る施策を立案していきます。

具体的には以下のようなポイントを中心に検討を行います。

(1)組織としてのパフォーマンスが低い場合

難易度が低い業務の量が多く、対応する人的リソースのレベルが高いため、高コスト構造になっています。業務の性質的に外部化が可能でコスト効果が見込める場合、業務そのものを外部委託や指定管理者制へ移行することも考える必要があります。また、臨時職員等を導入することで、人的リソースコストを下げることも考えられますが、業務プロセスを見直して業務機能単位で集約するなど、臨時職員を十分に活用できる環境の整備を行う必要があります。

(2)業務に必要な固有スキルが未修得の業務量の割合が多い場合

定期的な人事異動がある以上、この値を0にすることは困難です。

業務とリソースのアンマッチ

【図2】業務とリソースのアンマッチ

しかし、組織の特性として、固有スキルが必要な業務の割合が非常に多い場合、人事ローテーションのあり方を見直すことも必要です。

それが実現困難な場合、固有スキルの獲得期間を短縮する方法を検討します。具体的にはケース事例のデータベース化や、OJTメニューをプログラム化して集中的に実施するなどの方法が考えられます。

(3)固有スキルが継承されない恐れのある業務の割合が多い場合

固有スキルの要求度の高い業務について、その業務の担当者が1一人しかいない場合、最優先で体制の見直しを行う必要があります。

基本的には担当者が1人しかいない業務は、固有スキルの有無に係わらず非常にリスクが高いといわざるを得ません。このような状態に陥っている業務が多い場合、業務の実施体制を見直し、チームで業務を実施できるような改善を図る必要があります。

これからの自治体は、法改正により頻繁に変わる業務内容に対し、常にぎりぎりの要員数で対応していかなければなりません。それには、組織をタイムリーにマネジメントする機能が非常に重要になります。

ここでご紹介したアセスメント手法は、現状の問題点を可視化して改善策を検討するツールであるとともに、自治体の現場で組織のマネジメントをされる方々が継続的に業務とリソースの状態をチェックし、適切な組織運営を行うための管理手法としても活用いただけると考えます。

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植村 篤

植村 篤(うえむら あつし)
株式会社富士通総研 公共コンサルティング事業部 マネジングコンサルタント。
2000年より、自治体向け情報システムに関する導入計画策定等のコンサルティングを実施。
現在、自治体向けの業務改革や地域情報化などのコンサルティングを実施中。