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共通番号を高齢社会での価値創造につなげるために

2010年9月16日(木曜日)

高齢社会に向けたロードマップ作成

現在、75歳以上の高齢者は1400万人いますが、15年後の2025年には2200万人へと1.5倍以上に増加することが予測されています。高齢者がこれほどまでに急速に増加することは世界史的にもあまり例がなく、社会システム全体として、どのような対応が迫られるのかを検討する必要があります。このような認識のもと、富士通総研では東京大学産学連携コンソーシアム「ジェロントロジー」に参画し、他の企業や東京大学高齢社会総合研究機構の先生方とともに、20年先の社会の姿とそれに向けたロードマップを作成しています。

ロードマップの作成にあたっては、街づくり、インフラ整備のあり方、食生活・食育、高齢者の生きがいなど多面的な議論が展開されていますが、ここでは、私が深く関わっている医療・健康とICT、社会保障制度について述べます。

多次元データベースによる価値創造、人材育成と共通番号

高齢化によって労働人口が減る社会では、生産性を向上させることが重要です。Suicaなどの交通系電子マネーやインターネットなど、ICTの活用が我々の生活を便利に、また、豊かにすることで、生産性の向上に寄与していますが、高齢化の中で、特に医療や健康の分野におけるICTの活用は重要なテーマです。

その際に重要な論点として浮かび上がってきたのは、ソフト面、人材面での問題です。米国では、新型インフルエンザの予兆をいち早く発見するために、各地の医療機関のデータ、薬局のデータ、養鶏場・養豚場のデータを収集しましたが、分析できる人材が確保できず、何の役にも立ちませんでした。日本で も今後、電子カルテやレセプトオンライン化など、ICTの活用によって大量の情報が収集可能となり、さらに共通番号が導入されれば、それを紐付けた多次元のデータベースが構築可能になります。しかしながら、こうした大規模多次元データベースを分析できる人材がいなければ、データベースは何の価値も生み出しません。大規模多次元データベースの分析ができる人材の育成やソフトの開発が今後の長期的な課題と思われます。

社会保障財源と共通番号

一方、今後の高齢化の中で、社会保障制度の財源をどのように確保していくのかということも大きな問題です。消費税の増税による財源の確保が主張されていますが、税制の公平性が確保されていなければ、社会的な合意を得るのは難しいと思われます。脱税の手口は、「入り」を少なくするか(売り上げ除外など)、「出」を水増しするか(架空経費など)の2つしかないので、国税局に目を付けられれば必ず見つかる(立石勝規「脱税の決算書」より)と言われていますが、税務に携わる人数には限度がありますので、法人や個人の全ての脱税を人海戦術によってチェックするのは事実上不可能です。また、インターネットの登場といった通信手段の進歩、金融の自由化、グローバル化などで資産などの把握が難しくなっているのも事実です。このような変化を踏まえると、共通番号やインボイスなどを用いて所得の捕捉を可能とするシステムは公平性の観点からも重要でしょう。さらに、現在の所得税は申告納税が前提となっていますが、金融所得、特に利子なども含めて、自分の所得を把握できる人は少数でしょう。共通番号の導入で税務署から送られたシートにチェックを入れるだけで申告が完了するようなシステムがあれば、国民が所得税の申告などに費やしているコストや時間の削減にも寄与すると思われます。

以上のように、共通番号はそれを導入さえすれば社会が幸せになる、という魔法の杖ではありません。人材の育成などのソフト面での対応など、共通番号が価値創造につながる道筋をつけることが重要であると思われます。

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河野顔写真

河野 敏鑑(こうの としあき)
(株)富士通総研 経済研究所 上級研究員
2006年 (株)富士通総研経済研究所入社。
2009年 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。
専門領域は公共経済、社会保障・医療経済。