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電子書籍端末が世界を変えていく

2010年5月28日(金曜日)

1.なぜ、電子書籍端末は爆発的に普及しないのか?

「既にパソコンや携帯電話やスマートフォン、あるいは既に販売されている多くの電子書籍端末があるのに、なぜ爆発的に普及しないのか?」という疑問を持つ人がいらっしゃるかもしれません。

その要因は様々ですが、権利の問題やコンテンツ不足といったこと以前に、端末のヒューマンインターフェースが紙媒体に追いついていないことが一番大きな要因であると考えています。

いわゆる書籍、雑誌、新聞は、長年培われたノウハウを土台にした段組、文字サイズ、フォント、画像や図などのレイアウト、高精度画質を備えています。そのため、グラフィックはもちろん文字さえ、小さな文字やフォントなどは、パソコンのディスプレイで雑誌と同じレイアウト、同じ画質レベルで表示することが難しいのが現状です。

さらに、書籍、雑誌、新聞は電車のつり革を持ちながら片手で読める軽さがありますし、本を開く/閉じるスピード、ページをめくるスピードも軽快です。これらの点において、まだまだ電子書籍端末が紙媒体に追いついていないことが、爆発的に普及していない大きな要因でしょう。

2.次世代電子書籍端末はどのような姿になり、どのように利用されるのか

では、次世代の電子書籍端末のイメージを描いてみることにします。そこに至るまでにはいろいろな形態が現れ消えていくでしょうが、ここではごく近い将来に落ち着く姿を描いてみます。

まず、次世代電子書籍端末は携帯電話、無線LAN、テジタル放送におけるデータ放送を始めとした双方向通信機能と連携し、新聞、雑誌、マンガ、WEB、カタログ、各種資料、静止画、動画、チラシ広告、手書きノートを送受信することができます。これはノートパソコンの軽量化の流れと、携帯電話のスマートフォン化の流れが融合してできたような端末と言えます。

ただ、ノートパソコンとは違って、雑誌サイズであり、雑誌や書籍のように「見開き」できるものでありながら、折りたためば片面表示で片手持ちできるものです。重量は300g以下であることが爆発的普及の必須条件になると考えています。文字入力やマウスの機能は見開きで本を持った状態だけでなく、電車のつり革につかまりながら片手でも入力できるなど、入力モードを自由に変化させられるものとなるでしょう。

この端末は、様々な場面で使われます。机やテーブルの上に置いての利用、ソファや電車の座席など着席での利用、電車での移動などに代表される立ち見での利用などです。

また、別の側面から見ると、この電子書籍端末は、「パソコンを見ながら」、「携帯電話でメールを打ちながら」、「テレビを見ながら」、「ゲームをしながら」、「電車に乗りながら」、「街を歩きながら」という、「ながら生活」の中で利用される端末となります。

こういう「ながら生活」の中では、電子書籍端末、携帯電話、スマートフォン、パソコン、大画面テレビ、ゲーム機、さらには実社会の媒体とシームレスに連動することが求められるようになります。

例えば、携帯電話に着信したメールを電子書籍端末で読んだり、そこに添付されている写真や動画を、目の前にある大画面テレビで映し出したり、電子書籍端末の雑誌に掲載されている広告を選択して大画面テレビで詳しい商品説明を見たり注文したりします。また、逆にテレビを見ていて気になった商品や広告を手元の電子書籍端末で詳しく見たりもします。

さらには、実社会の媒体とも連動します。例えばバスや電車の吊り広告で気になった雑誌や記事をその場で購入したり、街中の電子看板を見て、その情報を電子書籍端末に取り込んだりします。

つまり同一コンテンツでも、その人のTPOに応じて使われる端末が随時取り替えられ、そのコンテンツを好きな電子端末にシームレスに連動させることができるようになると考えています。

3.この電子端末シームレス連動が導くより大きな変化とは

こういう生活が当たり前になってくると、私たちは今以上にバーチャルとリアルの区別を気にしなくなってきます。

まず、現在のパソコンや携帯電話から商品や商品カテゴリを決めた後に商品を探す「目的買い」と呼ばれる買い方が中心の「通常のネット通販」だけでなく、よりウインドウショッピングに近い受動的衝動的な買い方、「非目的買い」中心の「次世代ネット通販」が急速に拡大していきます。日常の購買に占める割合は、この「非目的買い」がほとんどを占めており、この市場が電子端末の世界に雪崩れ込んできます。

この「次世代ネット通販」では、「テレビを見ながら」、「雑誌を読みながら」、「電車に乗りながら」、「街を歩きながら」といった受動的な心理状態において気づかされる広告やパブリシティから、より詳しい情報を提示され、また注文までシームレスに誘導されるビジネスモデルやマーケティング手法が出現すると考えています。

さらに、必要に応じて、家に居ながら「店舗の店員」や「コールセンターの人」と相手の動画像を見ながら商品やサービスに関するコミュニケーションを行うことも普及してくると考えています。

特に、既に普及しているマンツーマンのオンライン英会話などのように、対面サービスや対面カウンセリングは急速に普及します。

また、ネットスーパーなど店舗から商品をピッキングして直接届ける「実店舗ネット宅配」も急速に普及していきます。

これは店頭にある商品をネットからの注文で宅配するというもので、食品スーパーを中心として、店舗在庫から出荷します。現時点ではネットスーパーと呼ばれているサービスです。この「実店舗ネット宅配」は、利益が上がるか否かに関わらず、店舗間競争上、確実に広まっていくと考えています。食品スーパーで扱われる食材や日用品だけでなく、デパートの地下食材から買回品まで様々な分野へ広がっていくでしょう。

しかし、一方である種の実店舗出店が加速すると考えています。それは「無人&無在庫リアル店舗」です。

極端なケースで表現すると、店舗はあるが店員はいません。必要な場合は店員の代わりに対面型コールセンターのオペレーターが対応します。また商品在庫もなく、電子陳列棚から注文したものが別の場所にある商品センターから宅配されるというものです。これは従来の商圏では成り立たなかった立地(過疎地など)への出店用ローコスト店舗形態です。

人件費や在庫ロスや土地代を徹底的に抑えた無人店舗が、ローコスト故に可能となる立地を求めて場所取り合戦をし始めると捉えています。

4.私たちは、今、何をすべきか

さて、ここまでは、この電子書籍端末が私たちの世界を大きく変えていくイメージを描いてみました。

では、今、ビジネスを行っている皆さんはこの変化にどう備えればよいのでしょうか。

まず、電子書籍端末、特に広告のある電子雑誌では、パソコンに向かった時のように能動的に検索キーワードを入れて情報を探す心理ではなく、何か面白い記事はないかと半受動的に情報に接しているため、現在、重要視されているSEO対策(サーチエンジンで上位に表示される技術)はあまり重要ではなくなってくるでしょう。

また、より大きな変化も起こります。それは双方向機能を持ったデジタルテレビ放送時代における新たなビジネスモデルの登場です。そこにはズバ抜けた双方向型エンターテインメントコンテンツを企画/制作/放送する新たなビジネスモデルを持った新規参入者が次々と登場してくると想定しています。

その新たなビジネスモデルは当然、電子書籍端末を始めとした各種電子端末と連動させたものとなります。

それらのコンテンツに織り込まれた広告を私たちは受動的に受け入れ、そして興味を抱かされ、最終的に購入にまで導かれることが大幅に増えるでしょう。

そして、この新しいビジネスモデルは、結果的に従来の小売ビジネス、サービスビジネス、広告ビジネスを始めとした多くの業界の構造図を再構築することになると考えています。

こういったすぐ目の前に迫った世界の変化を想定し、貴社の新たなビジネス戦略を検討することは不可避になります。

なぜなら、これらの変化は「今後、より儲けられるか否か」で判断する案件ではなく、既存のチャネルやビジネス構造の変化とともに、それに支えられてきた「既存のビジネスが縮小/消滅するか否か」で判断すべき、より緊急度の高い案件であるからです。

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藤井 哲志(ふじい さとし)
(株)富士通総研 流通コンサルティング事業部 プリンシパルコンサルタント
事業拡大、新規事業、新製品・新サービスに関する企画立案、戦略策定、展開支援など業種・業態にとらわれない幅広いコンサルティング活動を実践。ネット関連に関してもSEO対策からネットビジネス立て直しまで幅広く対応。
富士通コンサルタント認定資格:プリンシパルコンサルタント(経営)