GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. 農業は「植物資源産業」だ!

農業は「植物資源産業」だ!

~使う資源から育てる資源へ~

2010年3月26日(金曜日)

1.農業ブーム

今、農業が俄かなブームになっています。厳密に言うと、農業を話題にすることがブームになっていると言った方が適切でしょう。このブームの背景にはいくつかあります。

まず、食糧自給率や食の安心・安全という、食糧に対する日本人としてのニーズがあります。次に、農業人口の減少・高齢化や耕作放棄地の拡大という、日本のリソースに対する懸念があります。さらに、これらのニーズや懸念を解決する手段としての農業政策(政治視点)や自治体または民間企業によるビジネスモデルに対する考え方(経営視点)があります。特に3番目のビジネスモデルについては、今まで手をつけて来なかった領域という認識が一般的であり、多くの人がここに着目しています。

2.土着文化

日本の農業技術や農業に関わる文化は先進的だが産業化については後進国であるという指摘もあります。これは、日本の農業が独特の土着文化を起点にして発展したことが1つの要因にあり、工業化の発想を受け容れにくかった側面があるようです。

現在の農業の営み方には、工業化発想との距離順で、「家業」、「起業」、「企業」の3段階があると言えます。

「家業」、「起業」、「企業」の3段階

農業政策的には、「家業」を助けるのか、「起業」を支援するか、「企業」を強くするか、の選択が重要になります。換言すれば、弱いもの(家業)を助けるのか、強くなろうとしているもの(起業)、あるいは強いもの(企業)を引っ張り上げるかの選択と言えます。しかし、この選択は政治的要素が強く、難しい問題を抱えています。

3.企業文化

「起業」と「企業」の人が有力な次代の農業の担い手であることは間違いありません。このような人とビジネスパートナーとして組むことが他分野の人にとってのビジネス機会にもなります。既に大手小売企業が自社での売り物を栽培する場合や、大手食品メーカーが自社製品の原料を開発する場合に、農業法人との提携や自社農業法人設立の動きが活発化しています。

しかしながら、これらの動きは農業人口の増加や農業活動の活性化には大いに寄与しますが、農業自体が産業として独自性を発揮できるのかという懸念があります。換言すれば、小売業や製造業の下請け業になってしまうかもしれないということです。

4.農業の産業化

産業化はその生業(なりわい)が独自性を有していなければなりません。農業が食糧産業の下請けになるのか、農業として独自の産業に発展するかでは、持続性や国際性の観点からも大きな差があります。

ある先進的農業法人の社長が、「農業は資源を育てることだ」という表現をされています。化石燃料のような地球の歴史が作った資源ではなく、人が育てた植物を資源として活用しようという考え方です。つまり、農業は人の食糧だけでなく、すべての産業が必要とする資源を植物から作り出す産業に発展し得るのです。

農業の産業化

例えば、1つの植物の食用以外の部分から工業製品用の素材を作り、他の部分から燃料を生成し、残った部分は肥料にして循環活用します。

また、1つの農業法人が様々な植物を栽培することによって、自然のリスクや需要のリスクに対応できるような「植物ポートフォリオ経営」を行うこともできます。

植物由来の資源サプライヤーになることによって、日本産業界の重要な一員になることができます。しかも枯渇せず、環境にやさしい産業です。

さらに、土地を有意義に活用することで、涵養、景観保護など、国土保全の機能も果たせることになります。

5.農業の企業経営

このような「資源サプライヤー」企業になるには、あまりにも農業の営みに経営的観点が乏しい実態があります。一般企業であれば、戦略→業務→ITといったフレームワークで思案していますが、農業では一部の先進的農業法人を除いて、このような経営の発想を持たないことが多いのです。

富士通総研では、ここにJQA(日本経営品質賞)のカテゴリを応用してみました。

「SWINGモデル」

ここでは各カテゴリの詳細化ではなく、各カテゴリがどのように影響し合えばよいかを表現することに重点を置きました。これを「SWINGモデル」と名付け、農業法人が企業化する上での基本的観点として役立てることを狙いとしています。

先進農業法人経営者、農水省経営局、自治体農業政策部門、地銀農業融資部門の方々にも評価いただき、様々な活用方法に関する御意見をいただいております。

6.農業とIT

農業の産業化に必要なもう1つの要素はITの活用です。それでは、同じ生産を生業とする企業でも、一般の製造業と農業とではIT活用にどのような差異があるのでしょうか?

一口で言えば、生産プロセスを人間が設計したものか、自然の営みに準拠しているものかの違いです。したがって、農業では生産プロセス自体を人間がITでコントロールするのではなく、自然の営みが人間に投げかけてくる「生産リスク」(例えば、病虫害発生や気象変化等)の対応プロセスをコントロールすることが重要になります。

「生産リスク」の対応プロセス

富士通が行っているセンサーネットワーク技術を駆使した農業生産ナレッジの活用実験は、この「生産リスク」対応プロセスへのIT活用の視野を広げています。

7.富士通グループの貢献

農業を植物資源産業に進化させるためには、各農業法人の企業化と経営へのIT活用が欠かせません。

政治的要因の大きな農地や雇用の問題は重大ですが、前述のように富士通グループが企業化をご支援する要素も多くあります。

また、富士通グループの持つ公共・民需のお客様とのビジネスネットワークは、農業を資源産業化するための「場」としての機能を果たせます。

一農業法人の企業化というミクロ視点から農業の資源産業化というマクロ視点に至るまで、富士通グループが貢献できることは多いと考えています。


徳丸嘉彦

徳丸 嘉彦(とくまる よしひこ)
株式会社富士通総研 取締役
1956年 東京都生まれ、1978年 早稲田大学政治経済学部卒、富士通入社、システムエンジニアとして国内勤務の後、米国勤務(1988~1994)、豪州勤務(1998~2004)を経て富士通コンサルティング事業本部に帰任、2005年同本部 副本部長を経て、2007年富士通総研 取締役。