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地域主権の実現に向けて

2010年1月28日(木曜日)

新政権は、2009年11月に地域主権戦略会議を内閣府に設置し、「地域主権」の具体的な取り組みをスタートさせました。「地方分権」に代わる「地域主権」が目指す新たな国づくりは、どのようなものになるのでしょうか。

1.地方分権との関係

政府は地域主権が目指す国のあり方を「明治以来の中央集権体制から脱却」、「権限や財源の地方への大胆な移譲」、「国と地方の関係を上下の関係から対等に」など、従来の地方分権改革で用いられた表現を使って説明しています。マニフェストで掲げた「ひもつき補助金の一括交付金化」に関する政策以外は、地方分権改革推進委員会(注1)の勧告内容に沿ったものであり、基本的な方向性に違いはないと言えます。

同委員会は、政府に求める具体的な措置が必要な主な事項として、以下の4点を勧告しています。

  1. 重点行政分野の抜本見直し
  2. (広域自治体から)基礎自治体への権限移譲と自由度の拡大
  3. 国の出先機関の改革
  4. 義務付け・枠付けの見直し

政府は、「地方分権改革推進計画」(注2)(2009年12月15日閣議決定)において、「(4)義務付け・枠付けの見直し」の一部の法制化を勧告の方針に沿って進めるとしていますが、その他の事項の取り扱いについては方針を示しておらず、新たな地域主権改革の枠組みで進めることが予想されます。

2.地域主権改革は政治主導の改革となるか

同計画と同時に、原口大臣から「地域主権戦略の工程表(案)」(注3)が示されました。同工程表では以下の2つの段階に区切ってスピーディに取り組むとしています。

  • フェーズⅠ(概ね2010年夏まで):推進体制の確立から「戦略大綱」の策定
  • フェーズⅡ(概ね2010年~13年夏):「戦略大綱」の実現と「推進基本法」の制定

工程表からは2つの意図が読み取れます。

1点目は、地域主権改革のゴールである法制化に向けた具体的な作業工程を政府内、主に関係省庁に示すことです。期限を明確に示すことで分権委員会の勧告等を踏まえた具体的な措置を確実に実施する狙いがあると言えるでしょう。

2点目は、政治主導で地域主権改革を行うことを主に地方自治体や一般住民に対して示すことです。2010年夏を区切りとしていることから、フェーズⅠの1つのゴールである「戦略大綱」は参院選に向けたマニフェストとしての性格を併せ持つと思われます。地方分権が参院選の争点として取り扱われるのであれば、与野党ともに地方分権を推進する政策が打ち出され、改革が大きく前進するかもしれません。

3.地域主権改革が示す新たな政策テーマ

工程表では、新たな中長期的に取り組む政策テーマとして、以下の3点が示されています。

  1. 地方政府基本法の制定
  2. 緑の分権改革
  3. 自治体間連携

「1.地方政府基本法の制定」は、地方自治法の抜本改正の検討を地方制度調査会等に替わる検討の場である「地方行財政検討会議」で行うとしています。地方自治法の義務付け・枠付けが厳しいとの評価もあることから、地方自治体の自治体経営の自由裁量を拡充する上でも非常に重要な改革であると言えるでしょう。地方自治体は、地域の実情に合った政策・施策が展開できる一方、経営責任が増すことになります。地域の持続的な発展に向け、透明性の高い健全な財政運営を維持することがより一層求められるとともに、地方議会の役割も増すことになるでしょう。

「2.緑の分権改革」は、従来は地方分権との関係性が薄かった環境をテーマとして取り上げています。環境という新たな視点から国と地方、地方間の役割分担、関係を見直すことで、従来の分権議論とは違う新たな方向性を示すことが期待されます。環境は、グローバルな課題であると同時に地域で取り組む課題です。地域の多様な環境資源を活かした低炭素型の経済社会システムの実現に向け、地域、とりわけ地方自治体の役割が増すことになるでしょう。

「3.自治体間連携」は、平成の大合併後の市町村のあり方、都道府県の新たな広域連携が主要テーマになると思われます。道州制の是非も含め、地域主権が目指す地方政府のあり方を示すことができるか注目されます。政府は、定住自立圏構想の指針等、地方自治体の自主的な取り組みを支援してきました。地域の実情に合った地域発の多様な連携をより一層推進し、地域の発展と行政の効率化を図ることが期待されます。

地域主権改革が示す新たな政策テーマ

上記の新たなテーマについて、富士通総研では行財政改革を始めとした行政経営のコンサルティング活動に加え、地域の環境潜在価値を活かした地域経営、定住自立圏構想等の新たな広域行政のあり方等について、中長期的な視点に立ち、積極的に研究活動を行ってきました。今後も分権型社会に対応できる変化に強い行財政基盤の確立に向けご支援を続けて参ります。

注釈

(注1) 地方分権改革推進委員会 : 内閣府に設置された地方分権改革の推進に関する調査審議をするための機関

(注2)地方分権改革推進計画 : 政府が講ずる地方分権改革に必要な法制上または財政上の措置を定めた計画書

(注3)地域主権戦略の工程表(案) : 内閣府ホームページ(地域主権戦略会議)

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富士通総研の公共コンサルティングは、国や地方自治体などの行政機関が抱える課題解決を支援します。

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鈴木佐俊

蛯子 准吏(えびこ ひとし)
(株)富士通総研 公共コンサルティング事業部 シニアコンサルタント
東京理科大学理学部物理学科卒。ボーズ(株)、長野オリンピック冬季競技大会組織委員会、富士通(株)を経て、2003年より(株)富士通総研公共コンサルティング事業部に出向。専門分野は行財政改革、情報化戦略。2007年4月~2009年12月まで内閣府地方分権改革推進委員会事務局に出向。北海道大学公共政策大学院の非常勤講師を務める。