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手による投票!足による投票!

2010年1月27日(水曜日)

民主党政権の誕生により、我が国の政治システムは「中央集権」から「地域主権」へと大きく舵を切ろうとしています。「地域主権」とは、中央のコントロールを極力排し、地域が独立した権限と責任を持って、住民のニーズや選好を最優先とする政策を選択することを意味しますが、こうした考え方の理論的根拠となるのが、公共経済学における「分権化定理」です。

「分権化定理」とは、住民のニーズや選好については、国よりも地方自治体の方が情報優位にあるので、こうした有意な情報を最大限に生かすように地方に権限を委譲し、公共サービスの提供を担わせた方が、社会全体としてはより高い厚生が達成できるというものです。しかし注意しなければならないのは、地方自治体は、委譲された権限を必ずしも地域住民のために活用するとは限らず、首長や議員は自らの権益を優先するかもしれないという点です。こうした自治体と住民の利害対立を回避し、自治体が真に地域住民のニーズや選好に沿った施策を実施するよう促す仕組みが「手による投票」と「足による投票」です。「手による投票」とは、住民による地方の首長や議員を選出する選挙であり、「足による投票」とは、住民が自分の住む行政区域から出ていく権利を行使することです。

政治学では、政府に対して自らの意思を表す手段として、「声」と「退出」が挙げられています。人々は、「手による投票」を通じて自らの意見を表明し政府を変えることができるとともに、もし意見が通らなければ「足による投票」によって自分が住む行政区域から出ていくことができます。分権化が進み、様々な地域で多様な公共サービスの組み合わせが提供されることになると、個人は居住選択を通じた「足による投票」により、自らの選好に応じた公共サービスの配分を求めて移住することができるようになります。「手と足による投票」は、自治体がお互いに「住み易さ」を競い切磋琢磨することを促すとともに、地域住民のニーズや選好に沿わない政策は、住民の流出と自らの失職に繋がることになることから、地方の首長や議員に対する「規律付け」としても働きます。

「政権交代」と「東京への一極集中」は、いわば国レベルでの「手と足による投票」の結果といえますが、「地域主権」とは、こうした「手と足による投票」のダイナミズムを地域レベルにおいても発揮させることによる「国づくり」といえましょう。

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富士通総研には産業系シンクタンクとしての長年に渡る調査・研究・分析の実績があります。さらに、コンサルティング・サービスを通して培ったノウハウで「お客さまの現場で役立つリサーチ・サービス」を実現してきました。

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【研究レポート】

高齢化社会における福祉サービスと「地域主権」


南波駿太郎

南波 駿太郎(なんば しゅんたろう)
(株)富士通総研 経済研究所 シニアフェロー
1969年3月京都大学卒、同年4月日本銀行入行。ロンドン駐在員事務所、(財)国際金融情報センター出向を経て、1988年5月金融研究所第二課長、1995年2月情報サービス局参事兼広報課長。2000年4月富士通総研入社、 2001年1月経済研究所研究主幹、2006年6月研究理事、2008年6月より現職。