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IFRSで求められる銀行の持ち合い株の解消

2009年12月16日(水曜日)

国際会計基準(IFRS)が日本でも2015年までに採用される見通しのようです。日本企業はこれから対応を急がなくてはなりません。会計原則がどうなるかということは従来私どもエコノミストにはあまり関心のないことでしたが、この1年間に起こった経済の激変で会計に対するエコノミストの関心は急に高まったように思います。

それはちょうど1年前のリーマン・ショック以降の株や不動産担保証券の価格下落をどう記録するかで、企業の損益が大きく左右され、ひいては景気判断や経済政策にまで影響することになったからです。これは何も今回導入されることになったIFRSに固有の問題ではなく、時価会計そのものの問題ですが、現在では比較的緩やかに適用されています。ところが、IFRSでは厳密に時価会計を遵守するよう求められます。時価ですべての資産価値を計測し、その資産の変動分が利益、あるいは損失と定義されれば、実際には取引しなくても金融証券や不動産の価格の変動だけで、利益にも損失にもなります。これで企業業績や経営者の能力を測ることになれば、経営者としては本業でまじめに利益を上げるよりも、金融市場の動きに関心を払わざるを得ません。

特にエコノミストが問題視するのは、時価会計の持つ景気変動の振幅を拡大する効果です。景気後退期には銀行や企業が保有する証券は値下がりします。銀行であれば、その分だけ自己資本が減少するので、その12.5倍(8%の自己資本比率を想定)だけ貸し出しを減らすことになり、貸し渋りや貸しはがしが起こります。こうして実態以上に景気が悪化します。景気上昇期にはこの逆が起こります。

日本企業は外国企業と比べて株や国債などリスクの高い金融資産を多く抱えています。東証上場企業の時価総額320兆円のうち、銀行や法人所有が持っている割合は半分を超えます。ほとんどが持ち合い株で、最近また増えています。特に金融機関が31%の100兆円近くの株式を持っているのが問題で、この状態では銀行の与信能力が景気変動により大きく影響されることになり、是正されるべきでしょう。

IFRS導入は日本企業にとっても負担が少なくないようですが、積年の問題を解決する機会にもなるかも知れません。株の持ち合いや銀行の株保有は以前からも指摘されていることでもあり、関係者の努力を期待します。

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【調査・研究】


根津 利三郎

根津 利三郎(ねづ りさぶろう)
【略歴】
1948年 東京都生まれ、1970年 東京大学経済学部卒、通産省入省、1975年 ハーバードビジネススクール卒業(MBA) 国際企業課長、鉄鋼業務課長などを経て、1995年 OECD 科学技術産業局長、2001年(株)富士通総研 経済研究所 常務理事、2004年(株)富士通総研 専務取締役、2009年 取締役 エグゼクティブ・フェロー
【執筆活動】
通商白書(1984年)、日本の産業政策(1983年 日経新聞)、IT戦国時代(2002年 中央公論新社) など