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中国市場開拓における日台企業アライアンスの役割を再認識せよ

2009年11月30日(月曜日)

近年、中国市場開拓における日台企業アライアンスのニュースが減ってきている。中国での経営を深めてきた日系企業にとって台湾企業の伝統的な優位性が弱まっているように見える。しかし、金融危機以降、中国の内需市場開拓に対中ビジネスの重点を置き始めた日本企業の経営戦略の変化や両岸(中台)急接近を背景に、日台企業アライアンスを再認識する必要がある。

1.相互の優位性を発揮した日台企業のアライアンス

これまで、日本企業の持つグローバルなブランド力や高い技術力と台湾企業の持つローカル市場力(中国大陸における人脈、商慣習の深い理解、政府関係など)と低コスト生産力を補完させてきた日台アライアンスが中国で有効に機能してきた。具体的には、日本企業にとって以下の分野で台湾企業を活用するインセンティブがあった。

第1に、中国における台湾企業の生産や販売ネットワークの活用。生産分野では、台湾企業の生産拠点を利用すれば、中国での投資リスクを低減することができ、しかも台湾企業が有する低コスト生産ノウハウを活かすことができる。現在、日系PCメーカーやその他の電気機器メーカーは資本関係のない台湾EMSメーカーに大量に委託生産し、近年では電子レンジなどの白物家電製品に、そして最近では薄型テレビまで製品分野を拡大してきている。ただし、中国市場における台湾企業の持つ販売網の活用では成功事例が少なく、販売分野でのアライアンスは難しいと考えられる。

第2に、部品供給のサプライヤーとしての活用である。特に、自動車、電機電子及び食品飲料分野ではその事例が多くみられた。例えば、自動車部品メーカーである台湾企業の「六和機械」は、92年から05年までに日系企業8社と中国で12の合弁企業を立ち上げ、日系自動車メーカーに部品を供給している。また、資本関係はないが、台湾企業と部品調達関係にある日系企業は数多く存在している。

第3に、台湾を中国大陸市場進出のテスト市場として活用する例がある。政治的な原因で中台統一は実現されていないが、文化・言語・消費習慣などの同一または類似性から台湾を中国大陸市場に進出のテスト市場として活用する日本企業が多い。特に、小売や内需型企業に多くの事例が見られた。例えば、ファミリーマートは台湾ファミリーマートを、中国市場で豊富な経営資源を有する台湾企業「頂新集団」の協力を得て上海エリア中心に展開し、大きな成果を収めた。最近では、中国大陸の市場を睨みながら、台湾に進出したABCマート、富士ソフトなどの事例が見られる。

2.台湾企業の持つ伝統的な優位性の低下

ところで、近年台湾企業とのアライアンスを組むインセンティブが日本企業側に弱まっており、日本企業にとっての台湾企業の優位性、特に生産分野での優位性が低下してきている。かつて中国市場進出に香港を活用した欧米企業の状況に似ていると考えられる。これには以下の理由が考えられる。

第1に、日本企業自身が中国での経験を積んできていることがある。中国大陸における事業展開の拡大と深化により、日本企業は、中国の制度環境、文化環境、ビジネス環境などに次第に適応し、数多くの人材(本社人材と地場人材を含む)を育成し、経験を積んできている。台湾出身のマネージャーや経営者を中国拠点で採用する日本企業も少なくなかった。このため台湾企業の持つ伝統的な優位性(言語、人脈、商慣習など)が低下してきている。

第2に、日本企業のパートナーとしての中国企業が成長していることである。技術や品質レベルが向上し、コストパフォーマンスが台湾企業と互角になってきた地場企業が多く成長してきている。中国の内需市場開拓に舵を切った日本企業にとって、ホームの主役である中国地場企業をパートナーに選ぶケースが増えてきている。例えば、ダイキンが中国地場の「格力電器」を、三井化学、三菱化学が地場のシノペック(Sinopec)をパートナーに選んだのは好事例である。

第3に、中国市場において競争相手となった台湾企業もあったことが挙げられる。技術力や産業経験を積んだ一部の台湾系OEM/ODM或いはEMSベンダーは、サプライヤーの分野を抜け出して中国市場で有名なブランドベンダーとして台頭してきた。世界PC市場第2位の「Acer」や中国食品市場での有名ブランド「康師傅」、「旺旺」を持つ「頂新集団」、「旺旺集団」などは、日本ブランド企業の競争相手となり得る実力を持つようになった。このような競争環境の変化を背景に、一部の日本企業は積極的に台湾企業とアライアンスを図ることから、技術流出の防止や買収防止に姿勢を傾きはじめた。

3.台湾企業に新たな優位性

しかし、生産分野のアライアンスに着目した台湾企業の持つ言語、人脈、人材、低コスト生産などといった伝統的な優位性が薄れてきているとはいえ、中国の内需市場開拓に着目した台湾企業の優位性はむしろ高まってきている側面がある。日本企業は日台企業アライアンスの役割を再認識すべきである。以下、中国市場における台湾企業の新たな優位性を強調したい。

第1に、政策と制度的優位性がある。台湾との融和を積極的に図っている中国では、台湾企業に対する中央政府の優遇政策の他に、特に各地方政府では、市場優先的参入、土地資源の優先的使用、証券市場上場や銀行融資の優先的なアクセス、公的保険の優先的適用など、人材、検疫、通関などの公的サービスの優先的適用などを含む、各種の優遇政策を打ち出している。また、中国では、台湾企業をサポートする「台湾事務弁公室」という全国的な行政ネットワークが存在する。最近では、国家開発戦略として台湾海峡西岸に位置する「海西経済区」開発戦略では、台湾企業に対して「先行」実施政策を打ち出している。特に注目すべきは、中台間FTAに相当するECFA(Economic Cooperation Framework Agreement)「両岸経済協力枠組協議」が来年早々に締結される見込みであることだ。台湾企業は、ECFAを通じて中国市場への優先的アクセス権を手に入れることになる。特に、規制の多いサービス分野への対中進出を狙っている日本企業は、台湾企業とのアライアンスに大きなメリットが見い出せる。

第2に、経営力が蓄積されてきた台湾企業のリスクテイク能力がある。これまで日台アライアンスは基本的に垂直分業の理念に基づいて結ばれるケースが多かった。しかし、日本企業の対中ビジネスは、一般組立て産業から資本集約・技術集約の化学などの素材産業、プラント産業、省エネ・環境産業、インフラ産業、金融・通信などの高付加価値産業、教育サービス・医療サービス、ネットサービスなどの知的集約産業にシフトしつつある。また、ハイエンド市場からミドル市場開拓に目を向けるようになってきている。さらに、内需市場開拓にはM&A戦略も選択肢になってくる。日本企業にとってこのような新分野、新消費者、新投資方式において、より地域密着的な経営が求められ、リスクもより大きくなると考えられる。したがって、中国市場開拓に豊富な経験を積んだ台湾企業と水平分業体制の構築によって投資リスク、経営リスクのヘッジを行う可能性が考えられる。実際、台湾企業も経営力や資本力が増してきており、水平分業のパートナーとして期待される。

第3に、日本の中小企業の国際経営を手助けする優位性である。日本の中小企業は長年、生産や技術開発に特化し、市場開拓は系列企業や商社の力、或いは地場市場に依存してきた。グローバル化の進展により日本の産業組織や企業戦略が激変し、中小企業も単独で海外市場開拓、なかんずく中国市場開拓に乗らざるを得なくなってきた。これらの中小企業は生産技術や品質管理経験は豊富だが、中国市場での経験や人材が欠けている。したがって、台湾企業は、日系中小企業にとって良き理解者であり、国際化の水際案内役になり得る。実際、台湾企業「旺旺」と岩塚製菓とのアライアンスは中国市場で大成功している。中国市場における「旺旺」の市場力と岩塚製菓の技術力が相乗効果を発揮した結果である。中国市場における「旺旺」の業績は、売上高で年平均30%以上の成長、純利益で年平均15%以上の成長を収めている。他方、岩塚製菓は「旺旺」から豊富な配当金を引き受けているだけでなく、「旺旺」の資本協力で昨年以来の金融危機を乗り越えた経緯もある。

「モノ作り」が得意な日系中小企業と中国市場で「コト作り」に長ける台湾企業のアライアンスは、Win/Win関係を築くことができると確信する。

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【調査・研究】


金 堅敏(ジン ジャンミン)
【略歴】1985年 中国浙江大学大学院修了、1985年9月 中国国家科学技術委員会勤務(~1991年12月)、1997年 横浜国立大学国際開発研究科修了、1998年1月 富士通総研入社、経済研究所主席研究員
【著書】『華人経済師のみた中国の実力』 日本経済新聞出版社 2009年5月 共著(柯隆、朱炎)、『新資源大国を創る』(執筆) 時事通信社 2002年10月、『中国の世紀 日本の戦略』(共著) 日本経済新聞社 2002年6月