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エコポイントの経済波及効果

2009年6月10日(水曜日)

5月15日に、平成21年度補正予算の成立を前提にスタートしたエコポイント制度は、冷蔵庫、地上デジタル放送対応テレビ、エアコンの購入に対してポイントが付与されるものである。

もし、エコポイント制度が省エネ効果に対してポイントを付与するものであるならば省エネ対策となろうが、現実には製品の大きさや価格によってポイント数が決定されるため、定額給付金と同様、100年に一度と言われる不況に対する経済活性化策と受け取る方が自然であろう。

本稿では、このエコポイント制度が日本経済に与える影響について、最新の産業連関表を基に推計を行った結果を示す。具体的には、平成17年産業連関表(統合小分類・190部門表)を用いて、産業全体に与える影響や大きな影響を受ける産業に関する分析を行った。なお、産業連関表(190部門)上、エアコンおよび電気冷蔵庫は「民生用電気機器」部門に、テレビは「民生用電子機器」部門に分類される。

経済全体に与える影響

まず、経済全体に与える影響を分析するため、影響力係数に着目した。影響力係数とは、その部門の最終需要が1単位増加した場合に、産業全体に対する生産波及効果について相対的な大きさを示すものである。

これら2部門(「民生用電気機器」と「民生用電子機器」)の影響力係数は1.15程度であり、1を下回る公共事業などに比べれば大きいものの、1.5程度の乗用車に比べると小さい。したがって、純粋に経済成長を促進させることだけを考えれば、公共事業の積み増しよりは望ましい政策であるが、エコカー減税よりは劣る政策であるということになる。

仮にエコポイントの事業予算2,946億円分だけ民生用電気機器の最終需要が増加した場合は、6,211億円分の生産誘発効果が存在する。

個別産業に与える影響

次に「民生用電気機器」の需要増加が個別の産業にどのような影響を与えるのかを分析した。その結果、卸売、企業内研究開発、その他の電子部品、プラスチック製品、金融、その他の対事業所サービス、その他の非鉄金属製品、冷延・めっき鋼材、その他の金属製品、半導体素子・集積回路、電力などが大きな恩恵を受ける産業であることが分かった。なお、「民生用電子機器」についても分析を行ったが、ほぼ同じ結果が導き出された。

エコポイント対象商品の多くは家電量販店などで購入されるため、一部では小売業者対策と揶揄する声もある。しかしながら、物流の面を通じて、小売業より卸売業の方が大きな影響を受けることが分かる。

直接的に製品の部品となる「その他の電子部品」や「プラスチック製品」などの部門が大きな影響を受けていることは当然であるが、先進的な技術を用いていることから、企業内研究開発にも大きな影響を与えることが予想される。

耐久消費財の購入に当たっては、割賦やクレジットカードを用いることが多いため、金融部門にも大きな波及効果があることが分かる。

家電製品の生産工程においても、派遣労働者を多数受け入れている。こうした産業構造を反映し、労働者派遣サービスを含むその他の対事業所サービス部門も大きな影響を受けることが分かる。

やや皮肉な結果ではあるが、電力部門も大きな影響を受けている。これは、部品の製造や卸売業などの物流の過程において電力を使用するためである。長期的には省エネ家電の普及で電力消費量が抑制される可能性が高いが、短期的にはエコポイント制度が流通過程や製造過程を通じて電力消費量を押し上げる可能性もあることには留意が必要であろう。

一方、介護、医療、社会保障や乗用車といった部門においては、これらのエコポイント制度が与える波及効果はほぼ0であることが分かる。こうした少子高齢化社会で必要とされる産業や今回の不況で深刻な影響を受けている産業に対しては、介護報酬の増加やエコカー減税など、別の対策が効果を発揮することを期待したい。

以上のことから分かる通り、エコポイントは省エネ対策と景気対策の両者を追い求めた結果、いくつかの問題をはらんでいる。

同じ大きさ・同じ価格の商品であれば、たとえ省エネ効果に差があっても、同じポイントが付与されることや、一時的に電力消費を押し上げる可能性があることから、最終的に省エネにつながるのかどうかが明らかではない。また、景気対策としては公共事業よりは経済波及効果が大きいが、エコカー減税など、乗用車に対するものに比べると経済波及効果は小さくなる。結果として、「二兎を追って一兎も得ず」となりかねない。

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河野顔写真

河野 敏鑑(こうの としあき)
(株)富士通総研 経済研究所 研究員
2002年 東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2006年 (株)富士通総研経済研究所入社。2009年 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位修得。
専門領域は公共経済、社会保障・医療経済、制度の経済学。