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Japan

英国富士通サービスのコンサルティング

2008年2月1日(金曜日)

日本経済は、成熟・縮小の方向にあり、今後、日本企業が成長を続けるためには、国際競争力の強化、即ち、グローバル化が焦眉の急である。当社、富士通総研(FRI)としても、昨年4月の富士通コンサルティング事業本部との統合による新生FRIの発足を機に、グローバル対応の一環として、海外のグループ会社とのコンサルティング分野での連携を強化している。本稿では、富士通グループの中で欧州を中心に活動する富士通サービス(本社:英国)のコンサルティングを紹介する。富士通サービスは、富士通(株)の100%子会社であり、欧州で数少ない日系IT企業として富士通グループのグローバル活動の重要なプレーヤーである。近年、目覚しい実績をあげており、そのコンサルティング活動も成功の一因と考えている。

富士通サービスとその戦略

富士通サービス(以下、FS)の前身は、英国の国策IT企業であったICL(International Computers Limited)である。ICL自身も幾多の合併・統合を繰り返して変遷してきたが、そのおおもとは、20世紀初頭にも遡る。その時点では、IBMの兄弟会社でもあった。1980年代より、富士通が資本参加し、2004年に富士通サービスと改称し、今日に至っている。活動の中心は英国であるが、欧州大陸、南ア、中東にも及び、従業員数は計2万人を超え、売上規模も約6,000億円となっている。

富士通サービスの戦略は、日本発の企業であることの特徴を最大限に活用することであり、その原点は、彼らの言葉でいうところの「リアリズム」である。これは、一言でいうと、「実現可能な提案を行い、それを確実に実行する」ということである。特に、IBMに代表されるような米系IT企業との差別化、例えば、お客様との長期的な信頼関係、サービス・製品の品質重視、また、トヨタ方式に代表される徹底した効率の重視、といった面を欧州のお客様にも強力にアピールすることである。

FSのコンサルティング

FSでは、ここ数年、コンサルティング能力を強化してきた。これは、お客様がIT投資を行うにあたり、その戦略的な意味、ビジネス上の利益への貢献を常に求めるようになってきたからである。お客様の経営課題に対し、ITのもつ問題解決能力を駆使して、お客様のビジネス上の利益の最大化を図っていくことが重要である。FSのコンサルティンググループは、5年前に発足したが、既に、約300名のコンサルタントを擁し、前項に述べたFSの強み、差別化要因をお客様のビジネス上の利益に結びつけ、更に、それを管理統制(ガバナンス)、維持、発展させるためのコンサルティングを行っている。

「Sense & Respond」

FSが強調しているもののひとつが、「Sense & Respond」である。これは、お客様へのサービスの改善のために、「事実を把握・可視化(Sense)」し、サービス提供者の意識を変え、自律的に、問題の根本的解決・サービスの継続的改善を図って(Respond)いこうとするものである。「Sense & Respond」は元々コールセンターのビジネスから生まれたものであるが、お客様との接点において、人の知恵を活用し、継続的に無駄を排除していく、という思想に基づいており、その意味では、トヨタ方式(Lean Production)を、サービスに適用(Lean Service)しようとするものとも言える。

「Sense & Respond」は、以下に示す5つの行動理念を基本として、特に、ITサービス提供要員が、該当のサービス提供を上意下達ではなく、自らリーダーシップを持って能動的に改善を実現していくアプローチならびに方法論である。

(1) お客様の価値観を理解する

お客様のビジネス目標を達成させるために何をしなければならないのか、お客様のIT利用部門本来の根本的な要件・悩み(“Customer Demand”)を徹底的に分析し、提供するサービスの適正化を実現していく。

(2) プロセスの価値連鎖を訴求する

お客様のビジネス成果を成就させるために、提供サービス個別・縦割りでの改善を考えるのではなく、絶えず”End-to-end”でのサービスの可視化・改善を実施していく。

(3) あるゆる様式の無駄を排除する

想像や仮説ではなく、実際にIT運用の現場で起こっている事実に基づき、建設的かつシステム的に無駄(不必要な作業・プロセス)を徹底的に排除していく。

(4) 合理化・簡素化・自動化の追求

排除することができない作業・プロセスは、合理化・簡素化・自動化を徹底的に考え抜いていく。

(5) 継続的な改善を創出する

組織内に継続的改善を実現させるためのカルチャーを醸成し、顧客接点を中心にノウハウ集約・啓蒙教育を実践し、継続的な改善を組織的に実践していく。

このユニークな方法論は、富士通グループのITサービスビジネスにおける付加価値として、お客様ならびに市場から高い評価を戴いている。

関連サイト

【富士通の英国公開サイト】


長井 篤司 (ながい あつし)
(株)富士通総研 常務取締役 第一コンサルティ ング本部長代理
1971年富士通(株)入社。システムエンジニアとして、主に海外ビジネスに従事。この間、スペイン(FESA)、オーストラリア(FAL)、イギリス(FS)のいずれも富士通の現地法人にて、計16年の駐在経験あり。2006年より富士通総研にて現職。