GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. オピニオン >
  4. セカンドライフはマーケティングに有効か

セカンドライフはマーケティングに有効か

2007年7月20日(金曜日)

今年に入り、何かと話題の多いセカンドライフ。欧米だけでなく日本の企業も参入し、キャンペーンや新商品紹介などの取り組みをおこなっている。少しブームは落ち着く方向にあるものの、電通がセカンドライフで土地開発事業に乗り出し、「バーチャル東京(1)」を2007年夏頃に開設すると発表したこともあり、今年半ばにはまたひとしきり話題になっているかもしれない。

一般ウケしそうな初の三次元空間

ただ、セカンドライフを取り巻く議論は賛否両論。おそらく、コレは何だ、何に使えるのか、と社長から聞かれた社員は、調べれば調べるほど返答に窮するのではないだろうか。 これだけセカンドライフが取り沙汰される理由は、単なる3DゲームでもなくWebの延長線上でもなく、単なるコミュニティでもなくECでもない新しい世界に見えているからだろう。ゲームにしてはストーリーやゴールがない。現実の生活を便利にしてくれるWebとは異なり、現実にできないことを体験できるのがセカンドライフである。一時的に人が集まることはあっても、コミュニティとして運営されているわけではないし、リアルマネートレード(2) を介した売り買いの取引はあるものの、その対象はセカンドライフ内の土地や建物、アバター用の服や小物などバーチャルな世界のモノが主であり、現在のECとは同一視できない。要するに今までの概念のどれとも位置づけにくいものなので、どう捉えたらいいかがわからない新しい存在なのである。

あえて言えば、ゲーマーではなく一般人に受け入れられそうな可能性を感じさせる初の三次元空間、ということだろうか。ここでは、セカンドライフをマーケティング目的で使うことを考えた場合に気にしておくべきことを挙げておこうと思う。

イノベーターにアプローチできる場所

一度でもトライしたことがある方はご存知だろう。セカンドライフを楽しむには、高スペックのパソコンと高速ネットワークを揃える財力、使いにくいインタフェースを克服する気力と時間を注ぎ込むことになる。そのような手間をかけて未知の「面白そうなもの」にチャレンジするユーザーは、マーケティングでいうところのイノベーターだろうと察することができる。セカンドライフはゲームと紹介されることもあるものの、シナリオもなくその操作性も極めて悪いなど、開始から楽しむ境地に至るまでには様々な障壁が立ちはだかる。それもあってか、実際にセカンドライフを賑わせているのは、ゲーマーではなく、むしろネットユーザーであると考えるほうが適切だろう。というわけで、セカンドライフは、ネットユーザーの中でも、現時点ではイノベーターに近い人たちに訴求する場として考えることができる。

お試しで投資できる場所

何しろ参入費用が安い。島13個を買い取り土地開発事業に参入かと話題になった電通でも、初期投資は260万円、維持費46万円/月、これに多少のコンテンツ費用が積まれる程度。しかも、本年中であるならば、セカンドライフを対象としてちょっと面白い取り組みを発表した企業は、各メディアで1度ならず取り上げてもらえるだろう。よくも悪くも限られた人向けの閉じた世界なので、多少のトライアルも社内で許され易いし、セカンドライフ内での取り組みが自社の現業に近いビジネスであれば取り組みやすい。電通の場合も、土地開発事業といっても結局はセカンドライフというメディアの中でのスペース切り売りであり、現業の得意分野をそのまま生かせる領域だ。参入して仮に事業が失敗しても、この程度の投資であれば大きな痛手にはならない。むしろ、セカンドライフへ参入、というニュースが駆け巡った時点で初期投資回収というところだろう。このように考えれば、セカンドライフは電通も含めWeb2.0をアピールしたい企業にとってはお試しで参入するにはもってこいの場所、ということになる。少ない投資で大きな効果と新市場での可能性を追求できる場所として、今ならまだ有効であるだろう。ただし、この効果、「セカンドライフ」の話題性がある間に限る、という時限性のものではあるだろうが。

飽きられつつあるセカンドライフ

この時限がいつまでもつか、が問題である。自販機での自動車販売や、企業の新商品のキャンペーンで話題を呼んだセカンドライフだが、まだ正式な日本語版が始まってもいないのに、実はファーストユーザーの熱は冷めつつある。自分のキャラクターを多少のお金を注ぎ込んで見栄えよくしたり、あちこち噂の島を飛び回ったり、ひとしきり体験した後、やることが無くなってしまっていることが一つの原因。昔盛況だった島も、今では閑古鳥。このことは、参入している企業がキャンペーンで話題を呼んだ後の継続的な来訪を促すような仕掛けや、とんがった面白さを継続的に提供していない、ということと大いに関係がある。普通のWebであればイノベーターに訴求して話題づくりをしていけば普及のきっかけが作れるが、セカンドライフでは、先に述べたような参加の障壁が高いため、そのままでは裾野は広がらず、話題はイノベーター内で閉じてしまう。飽きっぽいイノベーターは、とんがった面白さが無ければ再訪はしない。

セカンドライフでイノベーターを相手に訴求するなら、彼らを面白がらせるような仕掛けを継続的に提供していくことが大前提、そしてこの先参加の障壁が低くなった際にアーリーアダプター、アーリーマジョリティに普及を広げていくのであれば、セカンドライフの出来事をWebも含めた現実の世界と繫げていけるような連動を仕掛けることが不可欠ではないだろうか。時限の期間は企業自身の取り組みによる、ということだ。

三次元とリアルとの連動

連動の兆しは既にある。スイスのNTTともいえるスイスコム・グループの取り組み(3)がいくつかのメディアでも紹介されている 。スイスといえば、美味しいチョコレートと美しい花が有名。スイスコム・グループは、セカンドライフ内でチョコレートと花束のギフト販売の屋台を開業したのである。この屋台がセカンドライフとリアルの世界を繋げてくれるサービスを提供してくれる。例えばセカンドライフ内で男性がデートの前にこの屋台で花束を買い、女性にプレゼントとして手渡し、女性を喜ばせる。その後女性は花束をクリックして実際の住所を入力すると、本物の花束が届く。実は屋台で花束を購入した費用の中には現実に本物の花束を届ける費用も含まれており、女性はバーチャルとリアルで2度喜ぶ、という仕掛けである。チョコレートに関しても同様のことができるという。セカンドライフ内の女性がリアルでも女性であるという保証はないという議論はさておき、このような連動は、バーチャルとリアルの世界の差異をきちんと踏まえた上で両者を繋げたという点で興味深いし、この逆の取り組みも考えることができれば更に世界は広がる。少なくとも現実の商品をいきなりセカンドライフの中で販売しても購入されないという問題点は、クリアしている。このような繋げ方が全てとは思わないが、一つの例示にはなるだろう。

リアルの世界では、ユビキタスでいつでもどこでもシームレスに連携という世界の実現が望まれている。セカンドライフのようなバーチャルな世界も例外ではなく、リアルとのシームレスな連携が発展の切り口になるのでないかと考える。

バーチャル東京:
http://rblog-biz.japan.cnet.com/it_bigbang/2007/05/second_life_fa85.html
リアルマネートレード:
バーチャルな世界の仮想通貨を現金で売買すること
スイスコム・グループの取り組み:
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/eigyo/rensai/yamazaki.cfm?i=20070628eb000eb

碓井 聡子(うすい さとこ)
流通コンサルティング事業部シニアマネジングコンサルタント
Webを含むITや先進テクノロジーを活用したビジネスおよびマーケティングの企画立案、戦略設計に従事。ユビキタスの先を読み、現在の企業に必要な施策を設計・提案・実施までを支援する。CI、企業統合の実績も有する。
富士通コンサルタント認定資格:マネジングコンサルタント(経営)
著書:「インターネットビジネス白書2002」、「既存企業VSドットコム企業」(監修)、「図解B2Beコマース」(共著)