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海外金融業界動向「使い勝手の良いWebsite」

2007年2月1日(木曜日)

最近、しばしば見かけたり、耳にしたりする「Web2.0」と総称される新たなユーザ・インターフェースは決して保険業界のみならず、もちろん銀行業界でも着目されています。近年、資産運用に対する関心の高まりから、従来、富裕層に焦点を当てていたプライベート・バンクとなどもインターネットを有力な顧客接点として積極的に活用しようとしています。そこで今回は、対面型の営業スタイルが主流だった欧州におけるプライベート・バンキングにおいて資産運用商品のマーケティング戦略を推進する上で、Websiteがいかに活用されているか、その一端をご紹介したいと思います。

1. 多岐にわたる金融取引と顧客接点の横断的な活用

一言で「金融取引」と言っても、残高照会や資金移動、あるいは株式の売買注文のような単純な取引もあれば、説明責任を伴うリスク商品の販売、それらを組み合わせた高度なファイナンシャル・プランニングや資産運用アドバイスのように複雑な取引など、実に多岐にわたっています。このような金融商品の多様化に呼応して、金融機関は情報通信技術を活用することによって、単純な金融取引については可能な限りダイレクト・チャネルへと誘導する一方で、伝統的な顧客接点である営業店や営業担当などの有人チャネルを複雑な金融取引を担う対面チャネルとして位置づけることでデリバリー・チャネルを再構築しようとしています。今や各金融機関が凌ぎを削っている「総合金融サービス」は、そうした金融商品と顧客接点との組み合わせによって提供されています。

2. 利用者が使いやすいチャネル機能の提供

このような「総合金融サービス」を展開する上で、戦略的にクローズ・アップされているテーマがチャネル戦略です。

それぞれの金融機関がWebsiteを通じて提供する金融商品知識やそうした個別の情報を比較するPortal Siteなどを利用することによって、今や一般個人の金融知識は格段に充実されています。従って、「知識と情報」を有する有力顧客を自らのWebsiteに誘導して、競合相手とは一味違った付加価値を印象づけることができなければ顧客を囲い込むことは難しいでしょう。

ダイレクト・メールやカタログとは異なり、Websiteをアクセスした利用者はかならず痕跡を残していきます。そうした情報は、新たな商品開発や効果的なプロモーションを行う上でまたとない貴重なヒントとなっています。

3. プライベート・バンキング部門でのWebsiteの評価

プライベート・バンキングと言うと、重厚な応接室でベテランの銀行員から複雑な金融商品のスキームの説明を聞くようなイメージが一般的でしょうが、最近ではこの業態にも情報通信技術を積極的に取り入れようという機運は高まっているようです。

改めて言うまでもなく、マス・マーケットを対象とするリテール・バンキングと対比すると、プライベート・バンキングはインターネットの活用という点では相対的に後塵を拝してきました。しかしながら、近年では新規の顧客を獲得する上ではインターネットのようなチャネルは非常に有効であることに気付き、今では販売チャネルの重要な一翼を担うようになっています。ある顧客サーベイによれば、Coutts & Deutsche Bankは卓越したデザインによるWebsiteを通じて、有用な情報を使いやすい形で提供することで高い評価を得ているようです。

数年前から、いわゆるベビー・ブーマー世代が次の世代に金融資産を継承することが金融業界で注目されており、近年では「ウェルス・マネジメント」というコンセプトも定着しつつあります。そうした世代交替の局面ではなおさらインターネットのような販売チャネルは効果を発揮するのではないかと期待されています。実際、最近、着目されているブログなども顧客とのコミュニケーション・ツールとして試行しようとする動きも見られます。以前の富裕層からマス顧客へと顧客層が拡がるにつれて、チャネル戦略も次第に変貌していくのではないでしょうか。

4. わが国金融機関に対する示唆

最近、わが国の金融機関でもWebマーケティング戦略を見直そうとする動きが始まっています。インターネット利用者が総人口の60%を超えたことから、利用方法も多様化しつつある状況です。例えば、手軽さや利便性を評価して単純な金融取引を中心にインターネットを活用している顧客セグメントもあれば、豊富な金融知識を基にブログや消費者主体のWebsiteで意見やコメントを発信している顧客層もあるように思われます。特に、マス顧客向けにはこのような「口コミ」情報が意外と有効であることを勘案すると、これからの金融商品・サービスのマーケティング戦略を企画、推進する上で、インターネットをいかに活用するかというテーマはあらためて極めて重要性をもってきました。このような意味で、「市場の声」や「顧客の反応」を常に正確にモニタリングしながら、マーケティング活動を自己革新してきた金融機関が市場ないし顧客から選ばれていく時代になったのではないかと思われます。

今やインターネットは年齢や世代を超えた取引チャネルとして確実に定着しつつありますが、いわゆる「デジタル・デバイド」や「ウィルス感染」などが更なる普及に対する障碍となっていることは否めません。こうした弊害を除去する観点からも新たな情報通信技術の活用が求められています。

使い勝手の良いWebsite [514KB]


田村 雅靖(たむら まさやす)
金融コンサルティング事業部 プリンシパルコンサルタント
1979年富士通(株)入社。1986年(株)富士通総研へ出向。銀行、証券、保険及びノンバンク(クレジット・信販、リース)など広義の金融業界の顧客向けに「経営管理」や「マーケティング」などのアプリケーション企画、ソリューション企画等を中心としたビジョン策定型、問題解決型コンサルタントとして活動中。
中小企業診断士、システム監査技術者、特種情報処理技術者、富士通コンサルタント認定資格:シニアマネジングコンサルタント(経営)