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再度気を引き締めよう

2006年1月1日(日曜日)

新年明けましておめでとうございます。
日本経済は「失われた90年代」のあと、2003年、4年と久しぶりに活況を取り戻しました。年末にかけて株式市場は毎日続伸し、投資家の間にはかつてのバブル期に似た強気一辺倒のマインドが広まりました。今年もそのような好況が続くと当然視されているようですが、私は景気は転換点に近づいており、もう少し慎重に考えたほうがよいと思っています。

四年目に入る景気回復

経済統計を見ると今回の回復は2002年1月から始まっていることがわかります。つまり昨年末で47ヶ月も続いているのです。これは60年代後半のいざなぎ景気、80年代後半のバブル景気に次ぐ戦後三番目に長い回復です。今年の秋まで続けば最長になります。そのようなことは大規模イノベーションなど特別の成長要因がなければ考えにくいことですが、そのようなものは見当たりません。私は昨年までは日本で最初に商業化されたデジタル家電、つまりDVD、薄型テレビ、デジカメが数年の間日本経済を牽引すると予測していました。ところが韓国と台湾、そして中国がわずか一年足らずで追いつき、低価格で日本市場をかく乱しました。この結果日本の電気メーカーは急激な収益悪化に見舞われてしまいました。二十世紀にはありえなかった新しい事態です。逆に鉄鋼、造船、自動車、エネルギー、化学や金融、商社などの従来型の産業が復活しました。

2006年は減益になる恐れ大

復活したのは、設備、雇用、借り入れの三つの過剰を整理し、コストを極限まで下げたところに中国など海外からの需要が増えたからです。その結果企業収益は大幅に改善し、それをうけて株価は急上昇し、不良債権もこの二年で迅速に処理されました。しかし、そもそもこのようなリストラによる収益の改善には限界があります。設備はいずれ更新、拡大しなければなりませんし、そうすれば減価償却費が増えます。また雇用が増えて労働市場がタイト化すれば賃金はあげざるを得ません。要するに景気が拡大局面に転じるとともに、逆のサイクルが回りはじめたのです。他方市場は来年度名目で1%程度の成長に止まるでしょう。売り上げが伸びずに、コストが上がれば企業収益は悪化せざるを得ません。原油価格の高騰にともなうコストアップは今年も続くでしょうし、円安は遠からず反転して、輸出にとっては環境が厳しくなるでしょう。前年度に22%伸びた経常利益は2005年度は5%程度の伸び地止まり、2006年度には減益に転じる可能性が高そうです。

2006年度の最大の不安要因は9月に予定されている小泉首相退陣以降の日本の政局です。昨年8月以降日本の株価が急上昇したのは、もっぱら小泉首相が郵政改革に対して  見せた断固たる決意と、それを国民が選挙で圧倒的に支持したことによります。それまで日本は変わらないと考えていた外人投資家が、日本の将来を再認識し始めました。しかし誰が総理になろうとも、小泉首相ほどの決意はないでしょうから、改革の遅れを懸念する投資家は日本株の売りに出るでしょう。後継者争いがもつれるとそのマイナス効果はさらに大きなものになります。その結果株市場は夏くらいから軟調に転じる可能性大でしょう。

足元をしっかり見よう

2003年からの三年間で日本経済はよい材料を使い果たしてしまいました。これからは団塊世代が退職するなかで財政や社会保障の問題など本当に難しい問題に取り組んでいかなくてはなりません。経済はよくて実質2%程度の伸びに止まるでしょう。株価の多少の値上がりで浮かれているような情勢ではありません。足元をしっかり見つめた堅実な企業経営が求められているといえましょう。


根津 利三郎(ねづ りさぶろう)
【略歴】
1948年 東京都生まれ、1970年 東京大学経済学部卒、通産省入省、1975年 ハーバードビジネススクール卒業(MBA) 国際企業課長、鉄鋼業務課長などを経て、1995年 OECD 科学技術産業局長、2001年(株)富士通総研 経済研究所 常務理事、2004年(株)富士通総研 専務取締役
【執筆活動】
通商白書(1984年)、日本の産業政策(1983年 日経新聞)、IT戦国時代(2002年 中央公論新社) など