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地方自治体における新地方公会計制度の導入

~行政経営への活用を視野に入れた導入支援コンサルティング~

シニアコンサルタント 櫻田 和子

2009年10月27日(火曜日)

国や地方自治体では、単年度の現金の歳入・歳出に基づいて予算書・決算書をとりまとめ、議会で審議するという、現金主義・単式簿記による会計制度をとっています。近年は、国や地方における長期債務残高の増加などを背景として、より適切な財政運営及び財務状況の開示が求められており、資産や負債の累計額などのストックの情報を体系的に把握することができる、企業会計的な考え方を導入した新たな公会計の整備が進められています。

平成19年度には、総務省から新たな公会計制度に関する指針が提示されるとともに、人口3万人以上の地方自治体においては、平成21年度秋を目処に財務諸表を作成するよう、総務省自治財政局から通知が出されました。全国の地方自治体では、この新地方公会計制度の導入に向けて取り組みを進めているところです。

富士通総研では、この指針が出される以前から都内の地方自治体様向けに企業会計的手法を用いた財務諸表の作成支援を行ってきた実績を生かし、現在、複数の地方自治体様向けに新地方公会計制度の導入支援コンサルティングを行っています。そこで、富士通総研が提供するコンサルティング業務の3つのポイントをご紹介します。

[ポイント1:活用方針に応じたモデルや作成基準の検討]

多くの地方自治体で陥りがちなのは、新地方公会計制度を導入する目的=財務諸表を「作成すること」だと思い、作成した財務諸表を国や県に提出して満足し、あとは来年の決算時期まで本棚の隅で眠らせておくだけという、ただ作業負荷がかかって終わるというパターンです。この新地方公会計制度の導入で最も重要なことは、作成した財務諸表などの情報を「活用すること」により、より効率的・効果的な行財政運営を行っていくことであり、導入にあたっては、まず第一にどう活用していけるか庁内で合意形成をとっておくことが必要です。

こうした考えから、富士通総研では、まずお客様と一緒に「誰が」「何を目的として」「どのように活用していくのか」を検討させていただいた上で、その活用方針に合った財務諸表のモデル及び作成基準を設定することから支援を行っています。

作成した財務諸表や固定資産情報の活用イメージ
作成した財務諸表や固定資産情報の活用イメージ

[ポイント2:ファシリティ・マネジメントへの活用を見据えた台帳整備]

新地方公会計制度の導入にあたっては、固定資産台帳を作成することが必要になります(簡易的には建設事業費の情報を積み上げて算定)。縦割り行政と揶揄されるように、地方自治体の多くは管財、道路管理、教育委員会、営繕、上下水道部門など資産を管理する部門が異なるが故に、地方自治体全体として、施設の新設・改修・売却・貸付などを含めたファシリティ・マネジメント(*1)ができていない状況にあります。こうした状況を踏まえ、富士通総研では、新地方公会計制度導入支援コンサルティングの中でファシリティ・マネジメントへの活用を踏まえた固定資産台帳の整備方針の検討を支援しており、お客様の中にはファシリティ・マネジメントの必要性を認識し、今後の方針検討を始められた団体も出てきています。

[ポイント3:作成した財務諸表のわかりやすい分析・評価]

作成した財務諸表は、単に諸表を見せるだけでは、馴染みの無い職員の方や一般住民からはなかなか理解してもらえません。そのため富士通総研では、作成した財務書類について、経年変化や他の地方自治体との比較、分析指標の基準値などの情報を活用して評価・分析し、わかりやすく解説して報告書としてまとめて提供しています。それらの情報は、地方自治体のホームページなどの媒体を通じて公開されるとともに、政策・施策・事業の方向性を検討するための材料として活用いただいています。

富士通グループでは、パソコン上にインストールして使用することのできるIPKNOWLEDGE財務諸表作成システム(改訂版)を開発すると共に、IPKNOWLEDGE財務会計システムと連動して財務諸表を作成することのできるシステム開発を進めています(*2)。富士通総研では、こうした取り組みとも連携しながら、今後も富士通グループ全体として、お客様の新地方公会計制度の導入の支援を進めてまいります。

注釈

*1 ファシリティ・マネジメント :

企業や地方自治体等が、土地や施設等を経営資源として多面的に捉えて、組織目標を実現するための戦略として積極的に企画、管理、活用する経営活動のこと。多くの地方自治体では、高度成長期の人口増加に伴って公共施設を大量建設しており、今後10~20年のうちに施設の維持更新のための多額の投資が集中することが見込まれる。また、近年の全国的な人口減少や市町村合併などにより、公共施設の数・立地・用途などの需要と供給のバランスがとれなくなり、非効率的な行政サービスを続けることになりかねない。このような将来リスクに備えるために、ファシリティ・マネジメントに早期に取り組む必要がある。

*2 IPKNOWLEDGEの新公会計制度への対応 :
http://jp.fujitsu.com/solutions/localgovernment/featurestory/090813.html

関連サービス

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富士通総研の公共コンサルティングは、国や地方自治体などの行政機関が抱える課題解決を支援します。