シニアコンサルタント 菊池 貴文
1.はじめに
J-SOX2年目も、既に残り半年を切りました。「あと半年しかない」と思われている内部統制推進担当の方も多いのではないかと思われます。
本稿では、J-SOX2年目以降の対応をより高度に効率的に進めていくに当たっての課題とその対応シナリオを紹介します。
2.J-SOX2年目以降の取り組みの課題と対応シナリオ
(1)内部統制監査コストが大きな負担となっている。
[課題]
取り組みの2年目は、「整備状況評価の作業が削減される」、「習熟により作業効率化される」などの要因で、初年度よりコストが下がると予想していた企業が多いのではないでしょうか?しかし、初年度に積み残した不備の改善が必要となったり、監査人の内部監査への要求が高度化し、作業効率化分が帳消しになったりで、想定していたよりも削減幅が小さいという状況が実際には多くみられます。
[対応シナリオ]
内部統制監査コストは、「テスト対象コントロール数」と「1コントロールあたりのコスト」の2要素に分けて考えることができます。
「1コントロールあたりのコスト削減」は、以下によって実現できます。
リスクを正しく捉え、必要以上に複雑なコントロールにしないことが重要です。
「テスト対象コントロール数の削減」は、以下によって実現できます。
(2)統制の運用(コントロールの実施)が現場の負担となっている。
[課題]
初年度に導入された統制は、「リスクの低減」の面だけを考えたものになっていることが多く、「業務効率」の面が考慮されておらず、現場の負担となっています。
[対応シナリオ]
統制の手続きが簡潔なコントロールに変更することで、現場の負担を軽減できます。これは、監査コストの削減にも寄与します。また、従来より行っている現場の業務を生かす工夫をすることで、統制のためだけの業務を増やさないようにできます。
(3)J-SOX対応の取り組みについての、運営管理が効率的にならない。
[課題]
プロジェクト管理について、初年度の取り組みとして行った管理方法が明文化されておらず、効率化を検討するための土台ができていないこと、また実施者に周知徹底できていないため、間違い、手戻りが多くなるという状況が見られます。
[対応シナリオ]
初年度と2年目に行っている取り組みを明文化することで、取り組みの非効率な部分や、他社の好事例を取り込む余地がないかを検討することができます。
また、現場に依頼する業務の品質を保つことで、手戻りを防ぐことができるため、現場への教育、および周知徹底が重要になります。
3.おわりに
初年度にとにかく「重要な欠陥を出さない」レベルにもっていければ、2年目以降は負担が軽くなると考えていた企業にとっては、初年度より高度な内部統制が要求され、初年度の混乱を収拾することで手一杯で効率化につなげられないというのが2年目の実情ではないでしょうか。しかし、この流れを断たなければ、統制の重みに耐え忍ぶだけの期間を続けることになります。
先進的な企業では、J-SOXの文書を、業務の見える化の共通基盤として活用するなど、攻めの内部統制を構築し始めています。
富士通総研の内部統制・リスク管理コンサルティングでは、企業の社会的責任の履行とリスクマネジメントによる経営基盤強化を支援します。