シニアマネジングコンサルタント 合田俊文
経済発展がめざましいアジア地域、特にインド、ASEAN諸国においては、道路、鉄道、港湾、空港、電力、上下水道等のインフラ整備が喫緊の課題です。 日本も、開発途上国に対してはODA(*1)という形で支援を行っていますが、ODA予算が削減される中で、今後はこの分野における官民連携(PPP: Public Private Partnership)による支援策が求められています。
この観点から、日本においては、2006年1月に富士通をはじめとする民間企業約50社の参加によるアジアPPP推進協議会(http://www.asia-ppp.jp/)が設立され、電力、上下水道、都市交通、IT・公共サービスの4分野で、経済産業省、国土交通省、JBIC(*2)、JICA(*3)等の政府関係部署にもオブザーバー参加をいただきながら検討を進めており、富士通総研は今年度から本協議会の全体事務局を担当しています。
また、経済産業省からアジアにおけるPPPスキームによる具体的な案件発掘を目指した調査案件の公募がなされ、富士通総研は、昨年度はインドネシアにおける医療・防災のテーマで、今年度もインドにおけるインフラ整備状況全般とITネットワークインフラならびにインドネシアにおける行政情報提供サービスの3テーマについて受託し、今後調査を行う予定です。
この調査事業では、現地調査の実施、国内有識者委員会の開催、現地における官民政策対話(セミナー)の実施を行うことになっており、富士通政策渉外本 部、APAC総代表室、セキュリティソリューション本部、テレコム事業推進室、FNETS(*4)の協力もいただき、富士通グループ海外拠点(インドはFIL(*5)、インドネシアはFID(*6))と連携しながら調査を行う予定です。
具体的には、インド及びインドネシアについて、次のような点を調査、検討 します。
今年度はこれらの明確化を行い、来年度以降、より詳細なフィージビリティスタディ(FS)につなげたいと考えています。
特にインドは、BRICs(経済成長が著しいブラジル、ロシア、インド、中国の総称)の一員であり、日本からのODA重要供与国(2005年度実績額7,146万ドル)であるとともに、PPPに対しても積極的に取り組んでおり、政府インフラ委員会には3兆5,000億円、345件のPPP案件が登録されていますが、実際に受注しているのは、インド企業のほか、外国企業では英国・米国の企業が主で、日本企業は殆ど参加できておりません。本調査を通して、何故日本企業が参加できないのかという観点での課題の抽出と対応策を検討し、具体的な現地ビジネスに結びつく調査を行っていきます。
富士通総研では、ここ数年海外調査案件を継続して行っており、コンタクト先の選定やロジスティクス関係も含めた海外調査についてのノウハウや、委員会の運営、海外でのセミナーの開催などのノウハウも蓄積しております。
このような調査で得られた成果につきましては富士通グループとも情報を共有し、今後の富士通の海外ビジネスにも大いに寄与してまいりたいと存じます。
(*1) ODA : Official Development Assistance (政府開発援助)
(*2) JBIC : Japan Bank For International Cooperation (国際協力銀行)
(*3) JICA : Japan International Cooperation Agency (国際協力機構)
(*4) FNETS : (株)富士通ネットワークソリューションズ
(*5) FIL : Fujitsu India Limited
(*6) FID : PT. Fujitsu Indonesia