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新しい高齢者像の構築に向けての支援

シニアコンサルタント 名取直美

2007年10月24日(水曜日)

自治体予算における高齢者関連費の割合は年々増加し、その多くを占めるのは介護・医療関連の費用となっています。では、高齢者と言われる65歳以上のうち、一体どのくらいの人々が要介護・要支援となっているのでしょうか。

平成18年の全国平均で、介護保険の第1号被保険者(65歳以上)のうち要介護・要支援の高齢者は16.1%に過ぎません。この大半である13.5%は後期高齢者(75歳以上)が、2.6%を前期高齢者(65歳~74歳)が占めています。これを各年齢階層別の人口で見ると、65歳~74歳では95.3%が、75歳以上でも70.4%の人が自立しています。

このように、高齢者の中でも圧倒的多数なのは、元気高齢者と呼ばれる自立している人々です。高齢者自らも保険料を支払うことで保険制度は成り立っているものの、その利用は一部の人々に限られており、多くはその効果を自ら実感する機会は少ないのが実状です。一方、今後の高齢者数の増加を受けて、自治体予算の介護・医療関連費は増加が予想されており、自治体では要介護高齢者を減らす、すなわち元気高齢者を増加することが大命題となっています。そして、住民サービスという視点からも、自立している高齢者に対する施策がどうあるべきかという課題が、団塊世代の高齢期突入を迎えて新たに検討されています。

こうした状況から、今自治体では2つの視点での施策の検討が進んでいます。それは、要介護等となる人々の数と割合の抑制と、現在自立している高齢者の心身の健康維持・向上です。高齢者が要医療・要介護となるには、病気や怪我を契機とすることが多くあります。身体の衰えという具体的な老いの実感に加え、社会での暮らしにくさ・役割の減少などを感じることは高齢者の社会参加へのモチベーションを下げ、更には心理的な抑うつ状態を呼び、それは再び身体の状態に反映されるという負のスパイラルは、高齢者の状態を徐々に悪化させます。従って、まずはこの状態に陥らないための支援が必要であり、現状では予防・保健など主にヘルスケア分野である身体的側面、社会参加・就労支援などの社会的側面の双方からのアプローチによって実施されます。また、それ らは高齢者を含む全世代、ステークホルダーである地域・学校・企業に対しても行われることが必要とされています。

要医療・要介護へ向かう高齢者の負のスパイラル

【図1】要医療・要介護へ向かう高齢者の負のスパイラル

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現在、私たち富士通総研での自治体からの受託業務も、新しい高齢者像と高齢者施策の構築についての業務受託が増加しています。そして、そのベースにあるのは、如何に元気な高齢者を増やすかということです。今年度も、身体的側面の課題として、来年度に控えた「特定健診・保健指導」導入に際し、A区の健康診査・健康意識・医療費分析を行い、その地域の実状にあった計画の策定支援を行っています。社会的側面からは「高齢者のあり方研究」として、B区で既存の高齢者像と団塊世代の新しい高齢者像のギャップを調査し、高齢者クラブ等、旧来の地縁を媒介とした団体のリニューアル、既存事業・高齢者施設の見直し、企業を巻き込んでの就労支援として来年度からの施策展開を計画しています。また、それらを包括して行うべく、C市では医療・保健・福祉の 複合施設を計画し、連携体制の構築・PFI (*1)をはじめとするPPP (*2)導入も含めてアドバイザリー業務を行っています。

元気な高齢者の増加・・・負のスパイラルを正のスパイラルへ

【図2】元気な高齢者の増加・・・負のスパイラルを正のスパイラルへ

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少子・高齢社会下では、高齢者を従来のような弱者と定義づけることは不可能であり、そのパワーを如何に活用し、継続する仕組みをつくれるかが自治体の明暗を分けることになります。土地や人々に合った計画の創意工夫こそが、地方分権に進みつつある時代下での自治体の優位性を左右すると考えられます。よって、いずれの案件についても継続中ではありますが、ある意味先端の案件として他自治体から注目されております。

こうしたことにお悩みの自治体様、またはそのサービサーとなることをお考えの事業者様からのご相談の際には、是非私どもにもご連絡下されば幸いです。

(*1) PFI : Private Finance Initiative

(*2) PPP : Public Private Partnership

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