シニアコンサルタント 岩貞正樹
ソフトウェア分野で著名なトム・デマルコの言葉にあるように、測定できないものはコントロールできません。コントロールできないものは、改善もできません。つまり、「見えていないものは改善できない」のです。
今回ご紹介するお客様(社会基盤関連の大手エネルギー企業)でも、業務プロセスの実態が「見えていない」状態でした。2年間に及ぶ業務改革を実施後、運用状況を評価する必要がありましたが、労働組合の力が強く現場部門にインタビューなどを行うことは困難な状況にあったため、お客様はどのようにして評価すればよいか、困られていました。
このような中、我々がお客様に提案・実施した問題解決のアプローチは、「データを分析することによる業務の可視化」でした。
1. システムデータ分析を通じたシステム活用実態の可視化
システム化された業務プロセスの履歴は、システム上のDBテーブルにデータとして記録されます。例えば、注文を受注した場合、「○月○日に受注番号XX番」の注文データが記録されます。こういった業務データを受注→納期回答→出荷→売上といった形でトレースすることにより、「業務プロセスの実態」を追うことができます。
これを実現するにあたり、富士通研究所の「BPM-E(*1)」を活用しました。その結果、「メンテナンス開始記録の業務は行われているが、メンテナンス終了記録の業務が行われていない」などの“事実”を可視化することができ、お客様に確実な業務運用の推進を具体的に提言することができました。
2. ヘルプデスクのQAデータや障害報告データの分析を通じたシステム総合品質の可視化
当初、お客様は日々発生する現場部門からの障害報告などの問合せ対応を行う中、「障害が多いのはシステム品質が悪いせいだ」と漠然と考えられていました。
現場部門からの問合せはヘルプデスクのQAデータベースや障害データベースなどに蓄積されていることに着目し、これらを「質問、障害、要望」の3つに体系立て、総合的なシステム品質の分析を行いました。その結果、「障害も問題だが、操作性などシステム機能に関する質問が73%と多い」という“事実” が明らかになりました。
また、富士通研究所のテキストマイニング技術を活用して、問合せ内容の分析を行い、「○×機能は帳票の流用作成の操作方法に関する質問が多い」など、課題点を具体的に特定しました。その結果、お客様もシステム総合品質の改善に向けた取り組みを具体的に計画することができるようになりました。
富士通からの新しい提案であるフィールドイノベーションもそうですが、全ての業務/システム改革は「事実の可視化」から始まります。この可視化は、業務改革後の業務評価のみならず、システム構築を行うにあたっての現状業務調査においても不可欠です。富士通総研では、数多くのプロセス可視化の実績を持っておりますので、是非ご活用下さい。
(*1) BPM-E : Business Process Management by Evidence