マネジングコンサルタント 大塚宏子
『情報大航海』という言葉をお聞きになったことはありますか?
この言葉が初めて登場したのは、2005年12月~2006年7月に経済産業省主管で開催された「ITによる『情報大航海時代』の情報利用を考える研究会」です。テキスト、画像、音楽、映像など、膨大なデジタル・コンテンツ(=情報の大海原)があふれる社会で、利用者(=航海者)がより簡便に、より的確に必要な情報を探し出し、知的欲求や価値創造に活かせるようにするためには、「知的情報アクセス」(=羅針盤)が非常に重要になるとの認識の下、議論が開始されました。富士通総研は、この研究会および調査研究の取りまとめ業務を行ったほか、研究会と分科会の委員として参画しました。また、成果の一部は、IT新改革戦略や骨太の方針といった今日の国家戦略にも組み込まれています。
こうした、いわゆる“国プロ”の仕事は、企画段階から関与することが肝要です。国家戦略だから検討することになったというのではなく、研究会の成果が国家戦略として必要だと認識され、反映されることが重要なのです。したがって、研究会や分科会の議論のネタになる資料作成においても、単に調査結果を取りまとめるだけではなく、議論を誘導するような方向性を盛り込むことが重要になります。
また、今回、技術開発における実験・調査は、10の大学や研究所に再委託し、CEATEC(*1)での展示や成果発表会等、一緒にプロジェクトを推進して頂きましたが、協調連携して国家プロジェクトを成功させるには、再委託先等との信頼関係が必要不可欠です。そのため、再委託先等との良好な関係構築とその維持継続のために日々の努力が必要になります。
今回のプロジェクトは、
●富士通総研が保有する通信・放送分野並びに研究開発・技術開発分野における専門性と、多くのコンサルティング実績から得た経験や見識を活かし、「知的情報アクセス」という新しい領域に対応できたこと
●デリケートな対応が要求される、経済産業省や研究会の先生方、再委託先とのコミュニケーションを真摯に行い、深い信頼関係を構築できたこと
により、無事に終えることができました。
今年度、『情報大航海』プロジェクトは、46億円の予算措置がなされ、昨年度のプロジェクト成果を踏まえた具体的なサービス開発や技術開発に向けた取り組みが実施されています。現在、富士通総研では、経済産業省や昨年度の再委託先から支援要請を受けているところです。
(*1)CEATEC : Cutting-edge IT & Electronics Comprehensive Exhibition