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「2018年のFintechトレンド予測」

~銀行業へ進出するテクノロジー企業、テクノロジー企業へと変貌する銀行~

2018年1月22日(月曜日)

2018年最初の当コラムでは、毎年恒例の本年に注目すべきFintechトレンドをご紹介いたします。年末年始にかけて、国内外問わず多くの金融系メディアにおいて1年の振り返りと今後の動向予測についての特集記事が掲載されます。昨今ではFintechに対する関心の高さから、AIやブロックチェーンといった各技術の発展動向、GoogleやAmazonといったテクノロジーを強みとする大手企業“GAFA”(Google, Apple, Facebook, Amazonの頭文字を取った略語)による金融サービスへの参入動向など様々な角度から語られています。特に、Amazonについては、昨年12月、一部報道で2018年中にも米国内の小規模金融機関を買収し、“Bank of Amazon”が誕生するのではと取り上げられ、ひときわ注目を集めました。
一方、2017年には多くの銀行が技術活用による経営の効率化を目指すことが伝えられ、国内では3メガバンクによる経営効率化のニュースが紙面を賑わし、海外では米国の投資銀行Goldman Sachsがトレーダー部門の人員を600名から2名まで削減した代わりに200名のエンジニアを採用して株式の自動売買プログラムを構築したといったニュースが伝えられました。Amazonのようにテクノロジーを強みとする企業が積極的に銀行業への進出を図る一方、既存金融機関においてもテクノロジーを活用し、そのビジネスモデルを高度化させる動きが顕著となってきています。
今後は、こうした動きが更に加速し、GAFAに代表されるテクノロジー企業は「銀行」へとより近づいていき、銀行はそのビジネスモデルを変革させ、「テクノロジー企業」へと近づいていくことが予想されます。以下では、2017年におけるFintechの主要トピックを振り返りながら、上記トレンドを検討したいと思います。

「銀行」としてのサービスを拡大するテクノロジー企業

昨年末、Amazonが金融サービスに参入するのではないかと注目された背景には、大きく分けて二つの動向が影響しています。一つは、米国で8年ぶりに政権交代が実現したことにより、金融法制面で大規模な規制緩和が実現する可能性が高まったこと、そして、もう一つはAmazon自身が金融サービスの充実を図っていることが挙げられます。

2017年11月、米国で開催された金融関連のカンファレンスにおいて、銀行の許認可権を有する通貨監督庁(OCC)の暫定長官Keith Noreika氏が、銀行と商業の分離規制を撤廃することを検討する旨の発言を行いました。Noreika氏の発言は、民主党政権時に制定されたドッド・フランク法ならびにボルカールールを撤廃し、銀行の競争環境を改善することを念頭に置いていたと思われますが、銀行と商業の分離という金融業の根幹に関わる規制についての踏み込んだ発言は、内外で大いに注目を浴び、翌日のメディアでは、Bank of Amazon誕生の可能性について言及する記事が数多く見受けられました。その後、Noreika氏に代わり、銀行業界出身のJoseph Otting氏が長官に就任し、この件についての続報はありませんが、この発言が金融業界のみならず他業界に対しても大きなインパクトをもたらしたことは想像に難くありません。OCCでは、前政権時代である2017年初頭に通称“Fintech Charter”と呼ばれる新規に金融サービスを提供するスタートアップを対象とした銀行免許の創設を検討することを発表しており、金融業界への新規参入を促すための取り組みを既に検討しています。Fintech Charterについては、金融機関のみならずニューヨーク州の金融規制当局から法的に訴えられるなど関係当局からの反発を招きました。しかし、こうした規制緩和が今後も進めば、Bank of Amazonもより現実味を帯びてくるでしょう。

このように、メディア上では既にBank of Amazonと持て囃されている当のAmazonですが、近年では自社のエコシステム上で利用できる金融サービスの充実を図っています。例えば、Amazonマーケットプレイスに出店する事業者を対象とした融資サービスAmazon Lendingは、アメリカに加えて、英国、日本などでも利用でき、2011年のサービス開始以来これまでに2万以上の事業者に対して総額で30億ドル以上の融資を実行しています。また、米Amazonにおいて利用できるギフトカードは、所定の条件でアカウントにチャージを行った場合、最大で5%のクレジットが追加付与されます。このような高還元のサービスは、米Amazonでしか利用できないものの、銀行預金と比較してその「金利」が大変良いことがわかります。Amazonの場合、ECサイトという巨大な経済圏が存在し、その中でユーザーが必要となる金融機能を提供することでそのサービスを拡大しており、同様のことは、中国における阿里巴巴集団(アリババ)などにも当てはまります。アリババの場合、中国最大級のECサイトである淘宝網(タオバオ)を保有し、これらグループにおける決済サービスを拡充する目的で支付宝(アリペイ)を展開しています。現在中国において約5億人が利用する決済サービスであるアリペイの運営は、アリババ傘下の金融サービス会社である蚂蚁金服(アント・フィナンシャル)が行っていますが、同社では、アリペイのほかネット銀行である网商银行(マイバンク)、そして個人の信用スコアを管理する芝麻信用(セサミクレジット)といった金融サービスを展開しています。

既に自社のエコシステム上において利便性の高い「金融」サービスを提供するこれら企業ですが、そのエコシステムが日常で利用する小売店などのリアルな経済圏にまで押し寄せた場合、その影響力は計り知れません。事実、2016年に発表したAmazonアカウントのみで買い物ができる無人店舗Amazon Goは、一説にはAmazonがこの無人店舗運営のノウハウを他の小売店に提供するのではとされています。この場合、商品の支払にあたっては、Amazonアカウントが実質的に利用者の「お財布」かつ「銀行口座」として機能することとなります。近い将来、街中にある店舗でAmazonアカウントのみで物品の購入ができるような環境が実現すれば、銀行免許の有無を問わず、実質的にAmazonが「銀行」として機能することも考えられます。

テクノロジー企業へと変貌する銀行の登場

それでは、自社のエコシステムを拡大し、ユーザーニーズに対応した「金融」サービスを提供するテクノロジー企業がその勢力を拡大する中、既存の金融機関はどのような対応が迫られるのでしょうか。既存の金融機関においては、従来以上に柔軟かつ効率的なバックエンド処理が必要になると共に、従来の金融機能に閉じない新たな収益源の検討も必要になってくると考えます。効率的なバックエンド基盤については、銀行運営に必要となるITシステムをクラウドプラットフォーム上に構築し、API連携により必要な機能を取り込むBanking as a Service(BaaS)と呼ばれるコンセプトが登場し、一部の先進的な金融機関によって実行フェーズに移されつつあります。効率的なバックエンド基盤を実現することにより、例えば、上記テクノロジー企業や新規参入を検討するスタートアップと提携し、その業務処理やコンプライアンスにかかる手続き等を代行する、完全なバックエンド銀行として存立することも考えられます。例えば、ドイツにおいて初のデジタルバンクとして創業されたFidor Bankは、自社内で金融機関に必要な機能を開発してきたノウハウを活かし、これらシステムをパッケージとして取りまとめ、Banking as a Platformとして展開する他、欧州内で通用する銀行ライセンスやその他必要となるコンプライアンス機能を加えて、Banking as a Serviceとして金融機関に新規参入を目指す異業種の企業に対してサービスとして提供しています。更には、これらプラットフォーム上で必要となる個々の金融サービスについては、Fintechスタートアップが提供するサービスを外部調達することで、一からサービスを構築する手間を省くことを目的にBanking as Marketplaceとして、必要となるFintechサービスをAPI連携で簡単に導入できるサービスにまで発展させています。

更に、テクノロジーへの対応力を強みとして、新たな収益源の拡大、プラットフォームとしての影響力拡大を目指す金融機関も登場しています。米国の大手金融機関であるCapital Oneでは、前述のBaaSのコンセプトを採り入れ、API活用により積極的に外部サービスとの連携を図る金融機関であり、同時に自行内のシステム開発部門の育成にも力を入れています。Capital Oneでは、自行内のシステム開発を手掛けていたスタートアップを買収し、そのスタートアップが販売していたサービスの更なる開発を進めてセキュリティ面を強化することで他金融機関向けに販売するビジネスに乗り出しています。いわば、金融機関がシステムベンダー事業を手掛けるものであり、銀行であることの強みを生かし、セキュリティ面に配慮した信頼性の高いサービスを外部に提供していくことを目指しています。

ドイツの大金融機関Deutsche Bankは、2017年10月、同行が機関投資家向けに提供する専用ソフトAutobahnのオープンソース化を図り、15,000行にも及ぶ開発コードを外部に公開することを発表しました。Autobahnは、同行が法人顧客に対して提供するソフトウェアであり、同ソフトを通じて投資家はマーケットデータの検索や実際の売買注文を行うことができます。ソフトウェアのオープンソース化は、ソフト提供から得られる収益を放棄する一方で、無料であることを強みとして同ソフトウェアの市場での影響力を拡大させることができます。また、オープンソース化に伴い、今後はその開発リソースを外部に委ねることが可能となり、例えば、オープンソースソフトウェアの代名詞とも言えるLinuxの場合、いくつもの派生プロジェクトが誕生し、業界ごとに専用のソフトウェアが開発・運営されるといったエコシステムが誕生しています。Deutsche Bankによる主力ソフトのオープンソース化も、外部リソースによるソフトウェア高度化と同ソフトウェアを中心としたエコシステムの発展を目指す取り組みと言え、業界において同行のソフトウェアがデファクトスタンダード(事実上の標準)として君臨していくことも考えられます。

おわりに

2018年は、Amazonやアリババのようなテクノロジー企業が自らのエコシステム内で金融サービスを充実させることにより、その基盤をより一層強固なものとしていくことが予想されます。日本をはじめとした先進諸国では、依然として低金利環境が続き、金融機関はその収益改善が見込めないため、自行の内部資源の見直し、有効活用を図ることが求められています。折しも日本においては、2016年、2017年と立て続けに銀行法改正が行われ、自行でITに関する会社の設立・保有が可能となった他、Fintechスタートアップとの連携を推進しやすい環境が整いつつあります。これまで金融機関は、顧客の資産を預かり、安全に運用するという「信頼性」を価値としてその顧客基盤を拡大してきました。一方、短期間で顧客基盤を急拡大させるFintechスタートアップの場合、利便性や使いやすさといった「顧客経験」を価値としてそのサービスの浸透を図っています。これらFintechスタートアップに勝るとも劣らない顧客経験を金融機関が提供することは勿論重要ですが、一方でこれまで長年に亘り築き上げてきた信頼性については、Fintechスタートアップが一朝一夕で確立できるものではない重要な価値であると考えます。金融機関は、自行が有する本質的な価値と向き合い、その価値を十分に生かすことで新たなビジネスモデルを確立することも考えられるのではないでしょうか。

それでは、本年もIdeatankをどうぞよろしくお願いいたします。

(チーフシニアコンサルタント 松原義明)

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