GTM-MML4VXJ
Skip to main content

English

Japan

  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. IdeaTank for Financial Services >
  4. 2017年 >
  5. 「世界最大のFintechカンファレンスMoney20/20参加報告」

「世界最大のFintechカンファレンスMoney20/20参加報告」

2017年11月17日(金曜日)

弊社では、Fintechやその他金融サービスの最新動向に関する調査を目的として、Fintech、決済分野に関するカンファレンスであるMoney20/20に毎年参加しています。Money20/20は、2012年より始まった同分野で世界最大級のカンファレンスであり、毎年秋にアメリカのラスベガスで開催されています。

本年は、開催直前に現地ラスベガスにて痛ましい事件が発生したこともあり、会場もどこか物々しい雰囲気が漂っていました。街中にあるデジタルサイネージ上では、「#VegasStrong」と呼ばれる人々の結束を呼びかけるメッセージが幾度となく表示され、事件から立ち直ろうとする姿勢が窺えました。このような状況にも関わらず、本年のMoney20/20も初日より世界中から訪れた多くの金融関係者で賑わうものとなりました。特に今回は、初日に金融サービスに対するAIの影響を論じた特別セッション 「AI Deep Dive」が開催されたことも大いに影響しています。同セッションには、人工知能の生みの親と言われるレイ・カーツワイル、Appleの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック、そして弦理論の生みの親である物理学者ミチオ・カクといった各界の著名人が参集し、大盛況となりました。

この他にMoney 20/20では、キーノートスピーチにて大手金融機関、有力Fintech企業のトップが自ら登壇して自社の今後の戦略や新サービスについて発表し、一般セッションにてFintechや決済分野の最新動向が論じられます。今回は、キーノートスピーチ、一般セッション双方において、特に注目を集めたトピックである「Z世代」、「Financial Inclusion(金融包摂)」、「Banking as a Service(BaaS)」という3テーマについてその最新動向をご紹介したいと思います。

写真1. Money20/20の様子(筆者撮影写真より)
写真1. Money20/20の様子(筆者撮影写真より)

これからの主要顧客はZ世代に?

Z世代とは、1990年代後半に生まれた10代後半から20代前半の若者世代を指す言葉です。今回のMoney20/20では、このZ世代に対して金融機関は今後どう向き合うべきか、様々な角度から分析がなされていました。こうした世代論が注目される背景に、この世代に属する彼/彼女らの思考様式、行動様式が他世代の人々と大きく異なることが挙げられます。例えば、Z世代の一つ上の世代であるY世代(ミレニアル世代)は、その多感な時期に金融危機を経験したことが影響し、倹約志向が強い一方で、伝統的金融機関よりもFacebookやGoogleといったネット企業のサービスを好むと言われ、こうした価値観がFintechの流行に大きく影響を及ぼしたと言われています。

それでは、Z世代はどのような特徴を有しているのでしょうか? セッションでは、Z世代がY世代と比較して、よりデジタルサービスとの親和性が高いことが挙げられていました。Z世代の若者は、物心つく頃からモバイル端末を利用してきたため、モバイル端末に対する依存度が他世代よりも高いとの結果が出ています。Z世代を対象としたアンケート調査では、「一日の生活において、テレビかモバイル端末どちらかを断念せざるを得ないとしたらどちらを断念するか?」という質問に対し、80%もの人々がテレビを断念してモバイル端末を取ると回答しています。同様に、「友人とモバイル端末、どちらを取るか?」という質問に対しては、28%もの人々がモバイル端末を取ると回答しています。また、Airbnbなどに代表されるシェアリングサービスの利用率が他世代と比べて11倍も高いといった調査結果が出ています。

このようにモバイル端末への依存度が高いZ世代に対して、今後どのようなマーケティング施策が望まれるのでしょうか。Z世代は、2017年現在では10代後半から20代前半の若者となります。金融サービスとの接点が他世代と比べて未だ少なく、また、経済的にも自立しておらず、お金の使い方を自分自身で決定できない人々が大半です。このため、金融機関としては、今すぐ何らかの施策を行う必要性は薄いかもしれません。しかし、2020年代には、米国における消費者の4割がZ世代で占められると想定されます。金融機関は、来るべき時代に備え、モバイル端末を中心とした金融サービス提供に向けて、その商品・サービスの構成を見直すなどの対応を今から進めていく必要があると考えます。

Financial Inclusion(金融包摂)に本腰を入れ始めたグローバル金融機関

日本で暮らす人々には想像しづらいかもしれませんが、世界では20億人もの人々が金融サービスにアクセスすることができないと言われています。また、米国における調査では、全人口の50%が400ドル未満の貯金しか有しておらず、英国における同種の調査でも、労働人口の40%が100ポンド(約15,000円)未満の貯金しか有していないとされています。このように世界全体に目を向けると、金融サービスに自由にアクセスでき、且つこれら金融サービスを使いこなせる水準の資産を有する人々は限られていることがわかります。金融サービスにアクセスできない人々のことをUnbanked/Underservedと呼び、世界銀行などの国際機関が貧困問題対策の一環として対処しているほか、近年では、金融機関においても同問題に対処しようとする動きが広がっています。

Money20/20においてもグローバル金融機関のトップが、Financial Inclusionへの取り組みについて発表しています。PayPalのCEOであるDan Schulmanは、前職のAmerican Express時代から同問題に取り組んできた第一人者であり、今回のキーノートスピーチでは、PayPalが他の金融機関やFintech企業とのパートナーシップを拡大することで、同問題に積極的に対応していくことを表明しました。この他、MasterCardでは、Financial Inclusion推進のためにUnileverといった異業種とのパートナーシップ推進を行っていることを発表しています。

Financial Inclusionへの取り組みと関連して具体的なサービスを発表したのが、Intuit社です。同社は、米国市場において中小企業向け経費管理サービスQuicken、個人向け納税管理サービスTurbo Tax、そして個人向け財務管理(PFM)サービスMintを提供するFintech企業であり、今回のMoney20/20では、これらサービスで蓄積された個人の納税データや支出に関するデータを活用し、個人向けに信用スコアを向上させる新サービスTurboを発表しました。米国では、金融サービスの利用、特にクレジットカードの申込みやローンの借入れにあたって信用スコアが活用されていますが、このスコアが一定の水準にない場合、金融サービスを利用することができません。Turboは、個人の信用力や資産状況などを総合的に査定した上で、機械学習を用いて一人一人のお金の使い方の傾向を分析し、信用スコアを向上させるアドバイスを行います。また、Goldman Sachsが提供する個人向けローンサービスであるMarcusとも連携し、他のローン事業者よりも優遇された金利での借入れを可能とします。

このように金融機関、Fintech企業問わず、多くの企業がFinancial Inclusion推進に向けた取り組みを行っています。背景には、Fintechの普及に伴い、AIなどの技術活用が本格化し、マスカスタマイゼーションされたサービスの提供が一般化したことが挙げられます。これにより、Unbanked/Underserved層に対しても個々のニーズに合わせた低コストなサービスの提供により、十分に収益化を図ることが可能となったのです。グローバル金融機関にとって、世界中に20億人も存在するUnbanked/Underserved層は最後の未踏市場であると言え、今後ともこれら階層に対して様々なFintechサービスが提供されていくことが予想されます。加えて、グローバル金融機関として、これら社会的課題にしっかりと対処していくことは、道義的責任として十分に意識すべきことでもあります。

写真.2 Intuit社によるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)写真.2 Intuit社によるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)
写真.2 Intuit社によるキーノートスピーチ(筆者撮影写真より)

先進金融機関におけるBanking as a Service(BaaS)の取り組み

最後にご紹介するのが、Banking as a Service(BaaS)に対する先進金融機関の取り組みです。BaaSは、未だ発展途上の概念であり、各人によって様々な解釈がなされていますが、Money20/20のあるセッションでは以下のとおり定義されます。すなわち、「プログラム可能な銀行(Programmable Bank)であり、商品・サービス提供に係る費用が限りなくゼロ(Zero Marginal Cost)となるシステム/プラットフォーム」というものです。Money20/20では、BaaSに取り組む金融機関の実践例がいくつか紹介されています。

BaaSについて、最も先進的な取り組みを行っている金融機関として取り上げられているのが米大手金融機関Capital Oneです。同行は、米国でいち早くAPI基盤の公開を行い、Fintech企業との連携を積極的に目指す金融機関です。Capital Oneの担当者によれば、同行がBaaSを実行するにあたり、ベンチマークとしているのが自動運転の分野で注目を集めるTeslaです。Teslaは、自動運転を実現するにあたり、様々な外部サービスとの連携を行っています。例えば、Teslaのモニターにおいて表示される地図は、API連携によりGoogle Mapが表示されます。Teslaでは、バッテリーなどコアとなる技術にその経営資源を集中し、それ以外の必要なものは外部から調達して賄っています。同行によれば、多様な顧客のニーズに対応した金融サービスの提供には、Teslaのように外部企業とうまく連携し、コアとなる機能のみ自行で提供する体制が最も適しているとのことです。Capital Oneでは、こうした思想に基づき、若者に人気の音楽配信サービスSpotify、動画配信サービスNetflixと連携し、顧客フロントにおけるサービスの利便性を大いに高めています。

この他、ドイツ発のデジタルバンクFidor Bankも、自行におけるBaaSの取り組みについて紹介しています。同行では、コアバンキングシステムなどの基幹系システムを自行で一から開発するなど、システム開発能力に秀でていることが特徴の一つでもあり、これら銀行システムの基幹機能をFidor OSとして外部の金融機関に提供しています。更に、同行の銀行運営に関するノウハウを活用し、銀行ライセンスやコンプライアンス対応機能などを外部に提供するサービスも行っています。これは、銀行事業への進出を検討する異業種の企業に向けたものであり、低コストでの事業進出を可能とします。2018年には、Fintech企業との提携により、金融機関向けのFintechサービスに関するマーケットプレイスを提供予定です。(Fidor FinanceBay)Fidor BankにおけるBaaSでは、単なるシステム提供の段階から銀行ライセンス、Fintechサービスの提供にまで拡大されており、まさに限界費用ゼロで銀行サービスの提供を可能とするものです。

写真.3 Fidor Bankによる自行におけるBaaSの取り組み紹介(筆者撮影写真より)写真.3 Fidor Bankによる自行におけるBaaSの取り組み紹介(筆者撮影写真より)
写真.3 Fidor Bankによる自行におけるBaaSの取り組み紹介(筆者撮影写真より)

おわりに

今回のMoney20/20では、この他にもカンバセーショナルバンキングと呼ばれるAIによる自動対話型の金融サービスに関するデモンストレーション、ライドシェアサービスUberが英大手金融機関Barclaysと提携して自社クレジットカードを発行する、といった発表がなされ、多くの参加者の注目を集めていました。Money20/20は、全世界100の国と地域から1万人以上の参加者を集める金融業界で最大級のイベントであり、大手金融機関もこのイベントに合わせて商品発表を行うことが一つの目玉となっており、Intuit社のTurboやUberによるクレジットカードの発表はまさにこの流れに沿うものです。一方、PayPalやMasterCardのように自社の総合的な戦略を披露するのではなく、Financial Inclusionといったグローバル規模での課題に対して時間を割いて発表したことは新たな流れであると言えます。また、Z世代に対するマーケティングやBaaSへの取り組みなど、まさに時代の最先端の取り組みについて、いち早く情報発信がなされることも見逃せません。今回のMoney20/20で発表された内容についても、今後のFintech、金融業界の動向を占う上で大変示唆に富むものであったと言えます。弊社では、今後ともこうしたFintechならびに金融業界の最新のトレンドに関して継続的に情報収集を行い、皆様に還元していきたいと考えます。

写真.4 Money20/20における富士通ブースの様子(筆者撮影写真より)
写真.4 Money20/20における富士通ブースの様子(筆者撮影写真より)

(チーフシニアコンサルタント 松原義明)

※弊社では、Facebookページも開設しております。当記事に関するご感想・ご意見は以下のリンク先までお願いいたします。
富士通総研 Facebookページ「Ideatank for Cross Industry Business」: https://www.facebook.com/Fujitsufrikc/

参考リンク