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世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2017参加報告(その1)

~AI活用の高度化がもたらすFintechサービスの進化~

2017年5月12日(金曜日)

弊社では2012年より、毎年春に開催されるFinovate Springに参加しています。すでに多くの国内メディアでも取り上げられているFinovateですが、Fintech向けのピッチイベントとしては世界有数の規模を誇り、世界各国から多くの参加者で賑わいます。本年のFinovate Springでは、新たな試みとして2日目のピッチイベント後にパネルディスカッションが開催されることとなりました。これに伴い、参加企業は前回の70社から59社へと縮小されています。また、参加者自体も昨年と比べると減少しており、会場で見かける日本人もやや少なくなった印象があります。

登壇企業に目を向けると、今回は、特に東欧からのFintech企業の参加が目立ち、Fintechがグローバルで進行していることを想起させます。また、昨今のAIブームの影響を受け、多くの企業が機械学習やディープラーニングを活用して分析を行うサービスを紹介しています。本稿では、こうした独自の分析技術を活用したサービスを提供するFintech企業を紹介します。

独自の音声解析技術による精度の高い本人認証 -SpeechPro-

最初に紹介するのは、ロシア出身のFintech企業であるSpeechProです。その企業名から明らかなように、同社は独自の音声認証技術を有しており、今回のFinovateでは、音声から本人かどうかを短時間で判断する不正検知ソリューション“VoiceKey”を発表しています。デモでは、利用者が10秒程度電話口で話すと、その音声を予め録音されていた音声と比較し、同一のものであるかどうかを100点満点のスコアで判定します。同社によれば、録音した音声から70の分析ポイントを抽出し、これら分析ポイントを解析することで、本人と同一のものであるかどうかを短時間で判断します。また、この音声解析は言語に依存するものではなく、話者の発話上の特徴に基づいて分析されるため、どの言語の音声であっても本人かどうかが短時間で判定可能となっています。

音声認証を採用する金融機関は近年増加傾向にあり、米国では、USAAやU.S. Bankといった大手金融機関がスマートフォン向けサービスのセキュリティ強化のために採用しています。これらのサービスでは決められたフレーズをつぶやくなどの方法で音声認証を行っているほか、英語などの特定の言語にしか対応していないものとなっています。SpeechProが提供するソリューションは、他社の音声認識ソリューションと分析方法が異なり、多言語に対応し、かつ特定のフレーズのみでしか反応しないというものでもありません。このため、同社のソリューションはすでに世界75か国で採用されており、金融機関では米大手金融機関Wells Fargoが同社と実証実験を行っています。オンライン上での金融サービスに対するセキュリティ強化が求められる中、音声のような生体認証技術の採用は、そのUX(顧客経験)を損ねることなく従来のIDとパスワードによる認証よりもセキュリティを高めることができる有効な手段の1つであると言えます。

写真.1 SpeechProのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.1 SpeechProのデモ画面 (筆者撮影写真より)

米国内で流通する80%以上のレシートを認識 -Microblink-

続いて紹介するのは、高い精度を誇る文字認識技術を活用したソリューションを提供するMicroblink社です。昨今、スマートフォンのカメラを用いてプラスチックカード券面上のカード番号を読み取らせるといった文字認識技術の活用が一般化しつつあります。しかし、その読み取り精度は各社によって異なり、中には、一度読み取った内容を人が確認してその精度を高めている企業もあります。Microblink社は、文字認識技術に特化し、その精度を高めるためにディープラーニングのような最新のAI技術を活用しています。同社は複数の関数記号が用いられた複雑な数式を読み取り、その場で数式を計算して答えを表示させるといったデモを冒頭で披露するなど、その文字認識技術が高水準であることを示しています。

同社が金融機関に向けて紹介したソリューションは、“BlinkReceipt”と呼ばれるレシートの読み取りに特化したもので、現状では、米国で流通するレシートの80%について、正確にその内容を読み取ることが可能となっています。同社ではその認識技術を高め、2017年中には米国内で流通するすべてのレシートの内容を完全に読み取ることを目指しています。同社の文字認識技術が高い精度を誇る背景には、ディープラーニングのような最新のAI技術を活用し、独自に開発した文字認識技術を活用していることが挙げられます。これにより、スマートフォンのカメラの精度に依存することなく高性能な文字認識が可能となり、デモ内では、くしゃくしゃになったレシートであっても正確に読み取ることができることを証明しています。BlinkReceiptは、SDK(Software Development Kit)と呼ばれる開発キットとして提供され、既存のシステム環境やアプリケーション上に容易に組み込むことが可能であり、PFM(Personal Financial Management:家計簿サービス)との連携など様々な金融サービスと組み合わせて利用することが考えられます。このほか、同社の文字認識技術を活用することで、金融機関内部で使用する帳票類を読み取り、ペーパーレス化を推進させるなど金融機関の業務を改善するうえで大変有効な技術を有していると言えます。

写真.2 Microblinkのデモ画面 (筆者撮影写真より)写真.2 Microblinkのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.2 Microblinkのデモ画面 (筆者撮影写真より)

購買・取引データを活用したソーシャルグラフの生成 -Alpharank-

最後に紹介するのはソーシャルグラフと呼ばれるWeb上の人間の相関関係をわかりやすく図示したグラフを金融機関のデータから作成するソリューションを提供するAlpharankです。ソーシャルグラフは、主にSNSなどを中心としたWeb上の人間の相関関係をわかりやすく図示したもので、例えば、SNS上のユーザー同士のつながりから、あるユーザーの投稿やつぶやきがどのように他のユーザーに伝播していくのか、投稿が何名程度のユーザーにフォローされたのかといった影響度を測定することができ、マーケティングへの活用が進んでいます。

Alpharankは、主にSNSのデータを活用して作成されるソーシャルグラフについて、金融機関が有するクレジットカードの購買データやその他金融取引に関するデータから生成することを可能とします。ソーシャルグラフを活用する利点の1つとして、ユーザーの口コミ(Word of Mouth)がどのように商品やサービスの購買行動に影響するかを確認できることが挙げられます。調査によれば、若年層、特にミレニアル世代(20~30代前半)の76%は、金融商品の利用や購入に際して友人の意見を最も重視するとされています。ソーシャルグラフの活用は、今後、金融商品・サービスの利用にあたって影響力を有する若年層の購買行動を分析し、金融機関においてマーケティング戦略を立案するうえで有効なツールとなり得るものです。

写真.3 Alpharankのデモ画面 (筆者撮影写真より)
写真.3 Alpharankのデモ画面 (筆者撮影写真より)

AI活用の高度化がFintechサービスの高度化をけん引

今回紹介したサービスは、音声認証、文字認識、ソーシャルグラフ作成とその適用領域は異なりますが、いずれもAIをはじめとした高度な分析技術を活用している点で共通しています。 SpeechPro社やMicroblink社のように音声認証、文字認識といった領域においても、話者や文字を素早く特定するために、ディープラーニング、機械学習といった分析技術が活用されています。これにより、スマートフォンのようなデバイス側の性能に依存せず、高度な認証・認識精度を誇る技術が手軽に活用できることとなります。Alpharank社も同様に、これまでFacebookやAmazonなどの限られた企業でしか利用できなかったソーシャルグラフという最新ツールを金融機関が手軽に利用できるようにした点が特徴です。

AIに関連する技術は広く一般に普及しつつあり、その適用領域が日増しに拡大しつつあります。不正検知や業務プロセスの自動化といった、バックエンドの限られた領域に特化したサービスばかりでなく、本人認証に関するサービスやマーケティング分野での活用など、今後ともFintech企業によるAIの活用は進展していくものと思われます。金融機関はこうしたAIを活用したサービスの適用により、プロセスの効率化とUX(顧客経験価値)の向上を両立させるサービスを顧客に提供していくことが可能となっており、その実現が求められています。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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