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  5. 「お金に関するアプリの利用促進」に向けた示唆

「お金に関するアプリの利用促進」に向けた示唆-スマートフォンユーザーのアンケート調査結果より-

2017年3月29日(水曜日)

最新の総務省通信利用動向調査の結果によると、国内のスマートフォン普及率(世帯ベース)は7割に達しています。スマートフォンは、消費者との新たな日常接点として位置づけられ、様々な企業がアプリケーションを提供しています。金融の分野においても、お金の管理や金融商品・サービスの利用がより便利に行えるようになる消費者向けアプリが次々に提供されています。アプリの提供にあたっては、金融機関とアプリを提供するベンチャー企業(いわゆるFintech企業)との提携事例も増加しています。

富士通総研では、金融ソリューション企画支援活動の一環として、お金に関するスマートフォンアプリに着目し、消費者のニーズや課題について調査を実施しています。

日本の金融分野におけるICT活用を促進し、消費者の利便性をさらに高めるために、本稿では特にお金に関するアプリについて、その認知や普及状況を俯瞰したうえで、利用に至る阻害要因やその解決策の考察を行います。

調査概要

  • 調査目的
    • アプリの認知から継続利用に至るプロセスを他分野のアプリと比較し、お金に関するアプリの推進において消費者に訴求する効果的なアプローチ方法を明らかにする。
    • アプリの利用状況を「利用している」「ダウンロードをやめた」「利用を中断した」の3種類と定義し、辿ったプロセスの違いや利用に至っていない理由からアプリの利用促進に向けた示唆を得る。

【図1】アプリ利用プロセスとアプリのカテゴリー
【図1】アプリ利用プロセスとアプリのカテゴリー

  • 調査対象:日本国内在住のスマートフォンユーザー
  • サンプル数:2,160(居住地、年齢、性別を人口区分に普及率を掛けた値に調整)
  • 実施時期:2016年3月

アプリの認知、普及の動向

お金に関するアプリの認知度はカテゴリーによってばらつきがあります(【図2】)。ローンや保険のシミュレーションアプリは、特定の金融商品・サービスの販売に直結しやすい一方、利用シーンが限定的なため認知度が低い傾向が認められます。他方、インターネットバンキング、家計簿、電子マネーアプリといったアプリは、日常生活での利用が想定されることからスマートフォン利用者の4割近くがアプリ名を知っているなど認知度が高くなっています。

【図2】お金に関するアプリのカテゴリー別、認知度
【図2】お金に関するアプリのカテゴリー別、認知度

アプリの普及率については、各カテゴリーともに低い値となっており、調査時点では、最も利用者が多いインターネットバンキングアプリであってもスマートフォン利用者の1割程度の利用にとどまっています(【図3】)。消費者がアプリを知っていても利用しない理由は何でしょうか?

【図3】お金に関するアプリのカテゴリー別、普及度
【図3】お金に関するアプリのカテゴリー別、普及度

試行錯誤する消費者

ここまで、アプリの認知、普及の状況を見てきましたが、アプリの利用拡大にあたっては、利用の開始に加えて、利用の継続がポイントとなります。スマートフォンアプリの成否は、アプリを知って利用に至らしめることと利用が継続することによって評価されます。これらは、ダウンロード数とアクティブユーザー数といった指標で表現されることが一般的です。

本調査では、お金に関するアプリにおいて、「ダウンロードしたものの利用を開始せずにやめてしまう」、「利用してみたもののその後、利用をやめてしまう」といった状態がどのように発生しているのか明らかにするため、アプリのカテゴリー別に「(興味は持ったが)ダウンロードをやめた」「(ダウンロードしたが)利用を中断した」経験の有無を調査しました。

調査の結果、スマートフォン保有者は、複数のカテゴリーで現在アプリを利用している割合と同等かそれ以上の割合で「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」経験があることが明らかになりました(【図4】)。家計簿アプリでは「ダウンロードをやめた」割合が高く、「興味は持っても何らかの理由でダウンロードをやめてしまう」、「利用までに複数のアプリを検討する」といった試行錯誤をする消費者が多いものと考えられます。

インターネットバンキングやクレジットカード利用履歴・明細閲覧、電子マネーアプリは「利用している」割合が高く「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」割合が低いことが特徴です。これらのアプリは、カード利用履歴等の情報照会や日常の決済が利用目的の中心であるため、利用が継続していると推測されます。

【図4】カテゴリー別、お金に関するアプリの利用状態の経験割合
【図4】カテゴリー別、お金に関するアプリの利用状態の経験割合

利用に至るまでの障壁

それでは、どのような要因によって消費者はダウンロードや利用をやめてしまうのでしょうか?「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」理由は、セキュリティと操作性、機能という回答が多くなっています(【図5】【図6】)。特に、お金に関するアプリでは、セキュリティに対する不安が他のアプリと比べて高いことが特徴です。情報漏えいや不正取引のおそれといったお金の情報を取り扱うことに対する漠然とした不安を抱えている消費者が多いと推測されます。特に、一部の家計簿アプリ等においては、インターネットバンキングの取引履歴を閲覧するためIDやパスワードの登録を求められます。金融機関以外が提供するサービスにIDやパスワードを登録すること、口座の情報を連携することに抵抗感のある消費者が多いと推測されます。先日の金融審議会においても、消費者保護の観点から、家計簿アプリ事業者を登録制とし、顧客情報の管理体制を構築することを事業者に求める方向で法改正の検討に入ったことが発表されました。

アプリの提供元に対して不安を感じる消費者にダウンロードや継続利用を促すためには、金融機関によるアプリ提供であることを強調し、提供元の信頼性の高さを消費者に訴求することが有効に作用するかもしれません。また、金融機関のアプリ提供にあたっては、機能を限定し、個人情報の登録を必要としない、親しみやすいアプリから提供し、利用者を拡大することが有効と考えられます。

【図5】「ダウンロードしなかった」理由
【図5】「ダウンロードしなかった」理由

【図6】「利用しなかった」理由
【図6】「利用しなかった」理由

利用が続かない消費者の行動

「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」消費者はダウンロードまでの段階において、どのような行動をとっているのでしょうか?

本調査では、消費者が「利用している」、「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」それぞれのアプリについて、そのアプリを知った情報源を比較しました(【図7】)。比較の結果、情報を入手する段階において、「利用している」消費者の場合、提供元のWebサイトから情報を収集している割合が高く、「ダウンロードをやめた」、「利用を中断した」消費者の場合、バナー広告による情報入手の割合が高いことが明らかになりました。この結果から、アプリの利用目的が明確であり、検索行動を経て提供元のWebサイトから情報収集を直接行っている消費者の場合は継続利用につながりやすく、一方、Webサイト上のバナー広告等がきっかけでアプリを知った場合は利用が継続しにくいと推測されます。

アプリの利用継続にあたっては、ダウンロードの前段階で消費者が能動的な検索行動をとるように、「お金の管理の必要性等を消費者に意識させる」、「アプリ利用による利便性向上を理解させる」といった動機づけが有効であることが示唆されます。したがって、金融機関による普及促進策においては、マス広告による多数の消費者へのリーチではなく、自社メディアや対面の顧客接点を活用し、顧客に直接必要性を語りかけ、利用意欲を高めるプロモーションが有効であると考えられます。

【図7】経験別、お金に関するアプリの情報源
【図7】経験別、お金に関するアプリの情報源

金融機関提供スマートフォンアプリの利用促進に向けた示唆

現在、スマートフォンの普及はパソコン並みの水準まで進んでおり、金融分野における活用拡大が期待されます。デバイスの普及とともに金融機関とアプリを提供するベンチャー企業の提携実績も増加しています。今後は、いかに利用者を獲得し、スマートフォンアプリを金融機関のビジネスに貢献するチャネルに育てていけるかが課題となるでしょう。今回の調査結果より、お金に関するアプリは、他のアプリと比較してセキュリティが利用の障壁となりやすいこと、マス向けのプロモーションは不向きである可能性があることが示唆されました。金融機関によるアプリ提供にあたっては、金融機関の特徴である信頼感や安心感を消費者に訴求することが不安の解消に有効と考えられます。また、利用継続には利用開始時点の動機づけが重要です。例えば、金融機関による家計簿アプリの利用促進であれば、窓口等の対面の接点を活用し、振込や送金等のお金の移動や残高確認のシーンで家計管理のメリットを説明することが有効であると考えられます。

富士通総研では、利用者にとってより便利な金融サービスの実現を目指し、新たな金融ソリューションの企画活動を支援しています。利用者の課題やニーズについては、定期的な動向調査に加え、Fintechやスマートフォンアプリといったテーマにフォーカスした調査も実施しております。金融機関様のお役に立てるよう情報提供を継続して参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。


石山 大晃

石山 大晃(いしやま ひろあき)
株式会社富士通総研 金融・地域事業部 コンサルタント
2013年富士通総研入社。入社以来、地域経済と金融をテーマに金融商品・サービスの顧客動向調査に基づくチャネル、セールス、IT戦略に関するコンサルティングに従事。


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