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世界最大のFintechカンファレンスMoney 20/20参加報告

2016年12月2日(金曜日)

筆者は、毎年10月にラスベガスで開催されるMoney 20/20に参加し、Fintechや決済に関する最新動向の情報収集に努めています。今年で5回目を迎えるMoney 20/20ですが、その参加者数は過去最大の1万1,000人を数え、全世界70か国以上から参加者が集まりました。また、本年のMoney 20/20では、日本をはじめとするアジア各国からの参加者が増えたことも特徴です。各国の金融機関、ICTベンダーによるソリューション/サービスが展示されるExpoコーナーには多くの日本企業が出展しており、富士通をはじめとして、みずほフィナンシャルグループ様、大日本印刷様、そしてFintechスタートアップである財産ネット様などが自社のソリューション/サービスを世界中の参加者に紹介していました。

Money 20/20は、キーノートスピーチやトラックセッションにおいて金融業界の著名人が登場し、自社の戦略や新サービスの発表を行うことでも知られています。本年は、Squareの創業者であるJack Dorsey氏が登壇し、多くの注目を集めました。(同氏は、昨年も登壇予定でしたが、直前に控えたIPOの準備のため、急きょ欠席となっていました。)また、VisaやBank of Americaといった大手金融機関が自社の新サービスに関する発表を行っており、毎年Money 20/20の前後に新たなFintechサービスが発表されるため、全世界の金融関係者にとって見逃せないイベントになりつつあります。以下では、今回のMoney 20/20におけるいくつかの注目トピックから今後のFintechの動向について占ってみたいと思います。

写真1 Money 20/20会場の様子
写真.1 Money 20/20会場の様子(筆者撮影写真より)

スタートアップ主導で実用化が進むブロックチェーン

初日のキーノートスピーチでは、Visaによるブロックチェーンを活用した新サービスに関する発表がありましたが、この際、同時に登壇したのがブロックチェーンプラットフォームを手掛けるスタートアップであるChainです。Chainは、Visaと共同で登壇したキーノートスピーチにおいて自社のエンタープライズ向けブロックチェーンプラットフォームであるChain Coreを発表しています。VisaではこのChain Coreを活用し、参加金融機関同士でその法人顧客向け送金をリアルタイムに行える送金プラットフォームを2017年以降に提供することを発表しています。同プラットフォームは、金融取引を円滑に行えることを目指したものであり、今回のVisaとの提携によるサービス発表が金融取引実務に活用する初めての事例となります。

ブロックチェーンの活用に関しては、スタートアップが主導となり実用化に向けた開発や実証実験が進んでいます。昨年のMoney 20/20では、米国の証券取引所であるNASDAQが未公開株式の取引市場向けにブロックチェーンを活用することを発表して大きな注目を集めましたが、この時、提携パートナーとして挙げられたのがChainでした。この他、FintechスタートアップであるR3が組織する金融機関向けブロックチェーンコンソーシアムにも注目が集まっています。今後もブロックチェーンの開発を得意とするFintechスタートアップと大手金融機関が提携し、新たなサービスの提供が進むことでしょう。ブロックチェーンが今後本格的に普及するためには、今後多くの課題を解決していく必要があります。例えば、今回のセッションにおいて言及された課題として、現行のブロックチェーンの技術水準では、1秒間に7回程度の取引を処理することが限界とされています。このため、世界中の金融取引をすべて置き換えるといった用途には利用できません。しかしながら、ブロックチェーン関連のスタートアップに対しては毎年多くの開発資金が提供され、優秀な技術者によるサービスの開発が日夜進められています。このため、こうした技術的課題が解消される日も案外早く到来するかもしれません。

API連携による決済ネットワークの拡大

今回のMoney 20/20において目玉の1つとなったのが、大手決済サービスプロバイダーによる相次ぐ外部事業者との提携の発表です。今回は、世界最大級のモバイル決済サービスAlipayを手掛けるAnt Financial、Apple Payに対抗してNFCによる非接触決済サービスのAndroid Payを提供するGoogle、そして昨年IPOを果たしたPayPalがそれぞれ外部事業者とのパートナーシップを発表し、自社の決済ネットワークの拡大を目指していることが明らかとなりました。

最初に発表を行ったAnt Financialは、中国の大手EC事業者であるAlibabaグループ傘下の決済サービスプロバイダーであり、中国を中心に4億5,000万人のユニークユーザーを抱えています。同社は今後、中国以外の地域においても決済サービスを展開していくことを目指しており、今後は10年間でそのユニークユーザーを20億人にまで増加させる野心的な目標を掲げています。同社は今後本格的に米国市場に進出する予定であり、米国の大手ペイメントプロセッサーであるFirst Data、POS大手のVerifoneとの提携を発表しています。続いて発表したGoogleは、非接触決済サービスであるAndroid Payについてオフラインのみならずオンラインにおいても利用できるようにすべく、国際カードブランドであるVisa、MasterCardとの提携を発表しています。これにより、ECサイトなどのネット決済においても利用できることとなり、Apple Pay同様にオンライン/オフライン双方で利用できるモバイル決済サービスとして利用を拡大していくことを目指しています。そして、PayPalは、ソーシャルメディア最大手Facebookとの提携を発表しており、今後はFacebookが提供するメッセージングサービスであるMessenger上でPayPalを利用して友人に送金することが可能となる他、Facebook内の企業ページにおいて商品やサービスを提供する場合、その決済にPayPalが利用できます。

このように、今回のMoney 20/20においては、グローバルで展開する大手決済サービスプロバイダーそれぞれが自社の決済ネットワーク拡大に向けて外部の事業者との提携を積極的に推進していることが明らかとなりました。また、提携対象は金融機関や決済事業者にとどまらず、Verizon、Facebookといった他業種が含まれていることも特徴です。どの決済サービスプロバイダーも自社の決済ネットワークを短期間で拡大し、利便性の高い決済サービスとして多くの利用者に活用してもらい、トランザクションを拡大することを目指しており、この提携において重要となるのがAPIを通じて両者のサービスを連携させることです。今後とも、APIを活用して外部事業者と提携することにより、短期間で金融サービスの利便性を向上させることが多くの金融機関に望まれていくものと思われます。

大手金融機関に見るFintechサービスへの対抗

個人向け決済サービスの分野では、これまでFintech企業や他業種からのプレイヤーが金融機関に代わって利便性の高いサービスを提供する流れが主流となっていましたが、こうした動きに対して、金融機関側から対抗する動きが起こりつつあります。米国ではこれまで個人向け送金(P2P送金)分野では、PayPalが手掛けるVenmo が若年層を中心に多くの利用者を集めており、“Can you Venmo me?”(「Venmoで送金してくれませんか?」という意味)という言葉が生み出されるほど、若年層の生活に浸透したサービスとなっています。このP2P送金分野における金融機関側の対抗戦略として発表されたのが、Early Warning社によるP2P決済サービスZelleです。

Early Warning社は、Bank of AmericaやJP Morgan Chaseといった大手金融機関がその株式を保有する金融機関向けのセキュリティソリューション等を提供するICTベンダーです。そして同社が手掛けるZelleは、これまでClearXchangeという名称でBank of America、JP Morgan Chase、Wells Fargoといった大手金融機関を中心に利用されていたP2P送金ネットワークを改良し、より利用者にとって使いやすいサービスとなることを目指したものとなります。スマートフォンでの利用を第一に考え、電話番号やメールアドレスで相手に送金できるなど、Fintech企業によるP2P送金サービスと同等の利便性を確保し、かつリアルタイム、無料でセキュリティにも配慮されたサービスとすることで金融機関による“Venmo Killer”サービスとしての利用浸透を目指します。

Venmoがここまで米国の若者に浸透した背景には、「送金」という機能よりもそれに付随する「友人とのコミュニケーション」を意識したサービスとなっていることが挙げられます。Venmoでは、例えば送金時に送るメッセージに“Emoji”を使えるなど、送金よりも相手にメッセージを送ることを意識したサービスとなっており、送金時のメッセージは、FacebookやTwitterと同じようにVenmoユーザー間で公開されます。つまり、米国の若年層の間では、ソーシャルネットワーク上に自分たちの活動を投稿するような手軽さで利用できることが支持されているようです。一方のZelleですが、Venmoのように“Emoji”を使ったメッセージは送ることができないなど、コミュニケーションに関する機能については発展途上にあるようです。Zelleについては、Venmoの対抗手段としてP2P送金に利用してもらうことを目指す以外にも、Venmoと異なり若年層以外にも利用されるサービスとして幅広く浸透していくことを目指していく方向性も考えられるでしょう。

Fintechにおける次世代テクノロジー活用の方向性

Money 20/20では毎年、多くのICTベンダーや金融機関が自社のソリューション/サービスを展示するExpoが、キーノートスピーチなどのセッションと同時に開催されています。Expoでは、現行のソリューション/サービスの紹介に加えて、次世代のテクノロジーを活用したサービスの展示にも力が入れられています。今回注目を集めた展示の1つにVR(Virtual Reality)技術を活用したサービスが挙げられます。VR技術は、最新のビデオゲーム機に活用されるなど急速に注目を集めていますが、ここに来て金融機関のサービスとしてどのように活用できるのか、その方向性を示した展示が紹介されています。

大手ATMメーカーであるDiebold Nixdorfは、様々なハードウェアを活用し、新たな決済空間を顧客に提供することを目指しています。その一環として同社では、今回、VR技術を活用した新たな決済体験が行えるサービスを紹介しています。同社のサービスでは、スマートフォンを活用したVR用デバイスを装着すると、利用者の眼前にバーチャルなスーパーマーケットが展開され、実店舗さながらに店内を歩き回り、気に入った商品を選択することができます。そして、レジが置かれた場所に移動し、決済を行うこととなります。

展示されていたサービスはデモ段階のものであり、実際に商品を購入することはできないのですが、この展示において重要となるのは、活用されているデバイスやバーチャル空間を生み出すソフトウェアが特殊なものではなく、スマートフォンとアプリといった一般的な方法で提供できる点です。(同社が作成したVRアプリはアプリストア上で配布され、厚紙を利用した簡易のVRデバイスさえあれば誰でも簡単に体験することができます。)つまり、VR技術を活用することにより、新たな顧客経験を提供できるサービスが低コストで開発可能であり、近い将来、VR技術が顧客向けの新たな接客手段として普及していくことも大いに考えられます。

写真2 Expo会場(富士通ブース)の様子とVRサービスのデモ風景
写真.2 Expo会場(富士通ブース)の様子とVRサービスのデモ風景(筆者撮影写真より)

おわりに

冒頭でもご紹介したとおり、今回で5回目を迎えたMoney 20/20では、例年にも増して開催地の米国以外からの参加者やサービスの展示が増加しており、グローバルに注目されるFintechイベントとして認識されつつあることが窺えます。例えば、ハッカソンイベントでは、中国系、インド系の参加者が多く見受けられました。これはシリコンバレーにおける技術者の人種構成と似通った傾向であるとも言え、新たなサービスが生まれる分野では、グローバルに優秀な人材が集まっていることが示唆されます。

また、各セッションやExpoにおいて紹介されたサービスでは、チャットボットやVR技術が活用され、金融以外の分野でも注目を集めている最新のテクノロジートレンドに沿ったものであることも特徴です。また、PayPalとFacebookの提携に代表されるように、そのサービス提供領域が金融に閉じることなく拡大しています。

Fintechにおいては、今後も金融の領域のみに閉じることなく、その周辺領域にあるサービスとの連携や、最新のテクノロジートレンドをうまく取り入れて発展していくことが窺えます。また、巨大な金融機関が多く存在する欧米地域ばかりでなく、アジアのような今後の経済成長が見込まれる地域において、世界を席巻するようなサービスがある日、生まれることも考えられます。本年のMoney 20/20に参加し、こうしたFintechを取り巻く多様な成長機会に出会えたことが大きな収穫であったと思います。

(米国富士通研究所 松原義明)

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