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激動のヨーロッパにおけるFintech最新事情 ~MoneyConf 2016に見るBrexit後のFintechとは?~

2016年7月13日(水曜日)

2016年6月23日、イギリスにおいて歴史的な判断が下されました。ご存知のとおり、イギリスではEUからの離脱を問う国民投票を実施し、離脱が残留を上回ったのです。Brexitと呼ばれるこの一連の出来事は、世界の経済情勢に多大な影響を及ぼしています。ヨーロッパにおいて政治・経済をめぐる混乱が続く中、筆者はイギリスの国民投票日前日まで、スペインの首都マドリードで開催されたFintechカンファレンスMoneyConf 2016に参加していました。

MoneyConfは、昨年より開催されたヨーロッパにおける大規模なFintechカンファレンスであり、その参加者数は1,000名を超えます。スペイン大手金融機関BBVAのCEOやイギリスの海外送金スタートアップTransferWiseのCEOなど著名人が多数参加し、急速に発展を遂げるヨーロッパでのFintech事情を探る上で良い機会となりました。イギリスでの国民投票直前ということもあって、MoneyConfにおいてもBrexitが大きな論点となり、TransferWise CEOであるTaavet Hinrikus氏や、ロンドンに拠点を置くベンチャーキャピタリストなど多くの当事者・専門家がBrexitについて言及していました。

この他にも、今後のヨーロッパにおけるFintechの方向性についても幅広く議論が展開されています。今回はこのMoneyConfで行われた議論を紹介しつつ、BrexitがヨーロッパのFintechシーンにもたらす影響や次世代のFintechのあり方について考えていきたいと思います。

写真1
写真.1 MoneyConf 2016会場の様子(筆者撮影写真より)

Brexit後のヨーロッパFintechシーンはどう変化するのか? ~Brexitが“Global Fintech Capital”ロンドンに与える影響~

前述の通り、MoneyConfにおいて最も注目を集めた議論が、BrexitがFintechのトレンドに与える影響についてです。特に“Global Fintech Capital”として発展を続けるイギリスの首都ロンドンが、Brexitにより今後どう変化していくのかについて活発な議論が行われていました。ここでは、なぜロンドンがこれまでヨーロッパにおけるFintech発展の中心地としての役割を果たしてきたのかを整理した上で、その影響を検討したいと思います。

ロンドンがこれまでGlobal Fintech Capitalとして発展した背景には以下の2点が考えられます。1つは、Fintechが近年のように注目される以前からロンドン自体がグローバル金融の中心地として栄え、多くの人材や資源を抱えてきたことです。ロンドンは、シティと呼ばれる地域を中心に大手金融機関ならびに中央銀行、そして、多くの海外金融機関がその拠点を構え、従来から金融業に従事する多くの「専門家」が集まる環境です。また、EU加盟国の雄としてヨーロッパ各国から多くの移民を呼び込み、これに伴い、多くのIT技術者が暮らしています。このように、Fintechを推進するに当たって重要となる優秀な人材が多く存在する環境下、ロンドンでは、官民が協力してFintechを推進させる取り組みが行われているのです。例えば、Fintech向けインキュベーションオフィスLevel 39や英国金融行為監督機構(FCA)によるProject Innovateなどはその際たる例であると言えます。

環境面での要因に加えて特筆すべきものとして、法規制面での優遇措置が挙げられます。ロンドンに拠点を置く金融機関ならびにFintechスタートアップは、送金等の一部金融規制に関してイギリス国内で認可を受けた場合、基本的に他のEU加盟国でも自由にビジネスを展開できます。これは、ヨーロッパの自由貿易推進を図る取り組みである欧州経済領域(EEA)加盟国で共有する“Single Passport”制度を適用したものであり、EEA加盟国となっているヨーロッパの30カ国に対して事業展開が行えます。EEA加盟国の人口は5億人を超え、このような巨大な「単一市場」は、他地域に存在しないものです。FCAによるProject Innovateにより法規制面から他国よりも手厚いサポートを受け、その上で5億人市場へと事業を展開できることは、Fintechスタートアップにとってこの上ないメリットであると言えるでしょう。

このように、ロンドンの置かれた社会・経済環境ならびにEU加盟国としての法規制面での優遇措置により、ロンドンがこれまでGlobal Fintech Capitalとして発展してきたことがうかがえます。今後、イギリスが正式にEUから離脱となった場合、こうした環境が毀損されてしまうのではないかという懸念が多くの参加者から寄せられていました。EU離脱に向けた交渉は長期化が予想され、大手金融機関がその中核拠点をロンドンからEU内の他国に移すといった検討を行っているとも言われています。EU離脱に向けた交渉期間中にもFintechスタートアップがその拠点を他のEU加盟国に移転させることも考えられます。例えば、ドイツのフランクフルト、アイルランドの首都ダブリン、そしてルクセンブルクなどは、Fintechスタートアップの誘致に向け様々な優遇措置を講じています。また、スペインのCaixa Bank、BBVA、Santanderといった大手金融機関はFintechサービスへの投資に積極的であることが知られています。Brexit後のロンドンにおいて現在同様の多様性が失われる場合、Fintech推進の機能がこれらの国々へと分散していくことも考えられるでしょう。

写真2
写真.2 Brexitの影響について語るTransferWise CEO Taavet Hinrikus氏(中央)
(筆者撮影写真より)

大手金融機関vs Fintech企業で異なる次世代Fintechのあり方 ~オープンプラットフォームの重要性とその主導権争い~

続いて多くの注目を集めたのが、今後のFintechのあり方についてです。ここでは、スペイン大手金融機関であるSantander、そして、イギリスの決済系スタートアップKantox双方が、次世代のFintechのあり方について発表しています。両者の講演を比較すると共通点ならびに相違点が浮かび上がり、大変興味深いものとなっています。

まずは、その共通点として、両者ともFintechがこれまで発展した要因を金融機関との関係性で捉えていることが挙げられます。つまり、Fintechスタートアップの多くは、金融機関という巨大組織の存在を前提としてそのビジネスを拡大した経緯があり、金融機関よりも安価で使いやすい代替的なサービスを提供する、もしくは、金融機関のサービスに機能を付加するというもので、どちらも既存金融機関の存在があってこそ、そのビジネスが拡大できたと言えます。

両者は、今後、Fintechが更なる発展を遂げるためには、金融機関とFintechスタートアップがコラボレーションを行っていくことが必要との認識でも一致します。これからの主要な顧客となる若年層は、UberやAirBnB、Instagramなど仲間内でのサービス共有を前提としたUI/UXの優れたサービスに好意を持ち、積極的に活用します。このようなサービスを金融機関単体で生み出すことは非常に困難であり、必然的にオープンなプラットフォーム上で多様な外部サービスを提供することが必要になるとの認識です。

しかし、このオープンプラットフォームの提供主体が誰になるのかで、両者の見解が大きく分かれます。Santanderでは、金融機関自身のプラットフォーム上で外部の優れたサービスを提供することを目指すのに対し、Fintech企業であるKantoxは、こうしたプラットフォームを提供するのは、FacebookやAmazon等の巨大プレイヤーに加えて、Uberのような日常的に活用されるサービス事業者になると予想します。Kantoxでは、今後はUnbankedと呼ばれる銀行サービスを利用できない人々に対してどのように金融機能を提供するかが重要となり、この際、スマートフォン上で日常的にサービスを提供する事業者が優位に立つと予想しているためです。

写真3
写真.3 次世代のFintechのあり方について語るSantander Victor Matarranz氏(左)と
Kantox Philippe Gelis氏(右)(筆者撮影写真より)

おわりに

今回参加したMoneyConf 2016では、Brexit、次世代のFintechのあり方など、注目度の高いテーマが扱われ、それぞれに対して興味深い議論が展開されていました。両テーマから、ヨーロッパにおけるFintechの発展では、金融機関、Fintechスタートアップ、そして規制当局といった立場を異にする三者の連携を強く意識していることがうかがえます。こうした多様な主体を受け入れ、新たなサービスを生み出していくためにオープンプラットフォームを形成していくことが重要であるのは言うまでもありません。Brexit後のロンドンに対しても、こうしたオープンなプラットフォームとしての機能が失われるのではないかという懸念が多く寄せられているように見受けられます。

今後、こうしたプラットフォームにおいて主導的な立場となるのが金融機関であるのか、新興企業であるのかは議論が分かれるところです。Brexitに伴う今後のロンドンならびにヨーロッパのあり方を含め、その推移を引き続き見守っていくことが重要でしょう。

(富士通研究所アメリカ 松原義明)

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