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世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2016参加報告(その2) ~Unbanked向けサービスに見るFintechの本質~

2016年6月29日(水曜日)

Finovate Spring 2016参加報告の第2回では、経済的に困難な状況にある人々を支援する目的で提供されるFintechサービスをご紹介いたします。Unbanked/Underbankedというキーワードに代表される一般的な金融サービスを利用できない人々は、全世界で20億人を超えると言われ、米国だけでもその数は、1億人余りに上ります。この他にも米国では、大学入学にあたって加入した学生ローンの返済に悩む人々が多数存在し、大統領予備選挙において主要な争点の1つとして取り上げられています。このように海外に目を向けると、経済的に困難な状況にある人々を支援する目的の金融サービスには、かなりのニーズがあることが窺えます。

Finovateでは例年、いわゆるUnbanked/Underbanked向けサービスがいくつか登壇しており、優秀な発表に対して送られるBest of Showを毎年受賞しています。今回も同ジャンルのサービスが多数出展されており、2社がBest of Showを受賞しました。今回は、こうした経済的に困難な状況にある人々を支援するサービスを中心にご紹介いたします。

Unbanked向けバーチャル給与口座提供サービス -PayActiv-

最初にご紹介するのは、Finovateが開催されている地元San JoseのスタートアップであるPayActivです。PayActivは、銀行口座を持てない/持たない人々に対して、バーチャルの給与受取口座を提供するサービスを展開しています。米国では、前述のようにUnbanked/Underbankedと呼ばれる銀行サービスを利用できない人々が1億人程度存在します。また、別の統計によると、米国に居住する約9,000万人は、その貯蓄額が500ドルを下回り、急病などの急な出費が必要となった場合に何の備えもない状態にあるとされています。このような人々は、銀行口座を持てない、もしくは持っていたとしても十分な貯蓄が無く、2週間に1度支給される給与小切手を換金することで生計を立てています。この際、街中にある小切手換金事業者を利用せざるを得ず、換金にあたっては高い手数料が取られてしまいます。

PayActivでは、このような人々に対して雇用元の企業と提携してバーチャルの給与口座を提供します。PayActivを導入した企業では、従業員向けにMyMoNowと呼ばれる専用サービスが提供されます。このMyMoNowでは、従業員の給与がその働いた日数分だけ振り込まれており、2週間ごとに支給される小切手を待つ必要がありません。また、MyMoNowと提携するATMから現金が引き出せるほか、公共料金の支払い等を設定することができます。加えて、毎月の給与から一定額を自動的に貯蓄できる機能が備えられており、貯蓄習慣を根付かせることも意識されています。PayActivでは、企業と提携して同サービスを導入していくことで、その福利厚生を充実させる役割を担っています。これにより、Unbanked向けという収益化しづらいサービスにおいても収益化を可能とするビジネスモデルを形成しているのです。

写真1
写真.1 PayActivのサービス画面 (筆者撮影写真より)

学生ローン債務返済サポートサービス -Student Loan Genius-

続いてご紹介するのは、学生ローン債務の返済をサポートするサービスを提供するStudent Loan Geniusです。米国の大学はその授業料が高額であり、多くの学生は入学にあたって、金融機関等から学生ローンを借り入れていることはよく知られています。学生ローンは大学卒業後に返済を始めますが、雇用情勢が不安定な昨今、安定した職に付けない、もしくはリストラにより突然職を失ってしまう可能性もあり、米国の若年層にとって学生ローンは後々まで重くのしかかってきます。米国の学生ローンに関する調査機関であるNational Student Loan Data Systemの調査によれば、米国で学生ローンの借り入れを行っている人々は約4,200万人に及び、その債務残高は約1兆2,000億ドル(約125兆円)を超えます。このように巨額な学生ローン債務は米国において社会問題化し、今回の大統領予備選挙において民主党候補であるバーニー・サンダース上院議員がこの問題を争点として取り上げたことが若年層から多くの支持を得る要因の1つになったと言われています。

創業者自身が学生ローンの返済に悩まされた経験から創業されたStudent Loan Geniusでは、企業と連携して従業員の学生ローン返済をサポートします。具体的には、従業員向けの福利厚生サービスの一環として提供され、従業員である利用者が専用サイトで年収、クレジットスコアなどを入力し、現在借り入れているローン債務を入力していくと最適な借り換えプランが提示されます。また、給与口座から自動的に毎月返済を行えるよう設定でき、学生ローンの計画的な返済をサポートします。さらに、Student Loan Geniusでは、学生ローンの返済負担により将来に備えた貯蓄ができない人々が多数に及ぶことから、企業が提供する確定拠出年金と連携させたローン返済と貯蓄を同時に行うプランを用意しています。Student Loan Geniusでは、Pay Activ同様に企業との提携により、社会問題への貢献とビジネスとしての成立という問題をうまく両立させています。

写真2
写真.2 Student Loan Geniusのサービス画面 (筆者撮影写真より)

ブロックチェーンを活用した難民支援ソリューション -BanQu-

最後にご紹介するのは、ブロックチェーンを活用した難民支援ソリューションを提供するBanQuです。昨今の不安定な世界情勢を受け、中東地域から発生した難民の受け入れが世界的な課題となっています。難民となった人々は、避難先において難民キャンプを形成し、国際赤十字やNGO、そして国連といった公的機関からの支援を受け、その生活を再建していくこととなります。難民キャンプでは、生活インフラの立ち上げなどハード面で多くの問題を抱えますが、これに加えて、その難民たちの素性が分からず、一人ひとりに対して十分な援助を行えないことも問題となっています。多くの難民は、かつて居住していた地域から命からがら逃げ延びているため、本人を証明する公的書類を持たないケースがほとんどです。このため、「本人」であることを証明するのに時間がかかり、その支援が遅れてしまうことが懸念されます。

BanQuは、実際に難民キャンプで生活した経験のある創業者が生み出したソリューションであり、ブロックチェーンを活用して難民に対して新たなアイデンティティーを付与し、その生活を支援するソリューションを発表しています。具体的には、難民キャンプにおいて顔見知り同士がお互いを承認し合う状況をそのままブロックチェーン上に再現します。つまり、公的なIDが無くても家族や友人、隣人といった顔見知り同士がお互いのことを知っていれば、お互いがお互いを認め合うことで「本人」であることが証明されます。こうして本人であることを証明された人々がそのネットワークをブロックチェーン上に構築することで、新たにアイデンティティーを構築できます。このアイデンティティーを活用して、外部の援助を行う人々から送金などの支援を受けられるようにし、最終的にはその他の金融サービスの提供へと発展させます。BanQuのソリューションは現時点で正式に立ち上がっていませんが、今後はNGOや国連、政府系組織などと提携し、難民支援や貧困状態にある人々の支援に活用されることを目指しています。

写真3
写真.3 BanQuのサービス画面 (筆者撮影写真より)

Unbanked向けサービスから見えてくるFintechの本質

今回は、Finovate Spring 2016の登壇企業の中から、Unbakned/Underbankedと呼ばれる主に経済的に困難な状況にある人々に向けて提供されるサービスを中心にご紹介いたしました。ご紹介したサービスのうち、PayActivとBanQuは前述のとおりBest of Showを獲得するなど、Unbanked/Underbanked向けサービスは、Finovate会場において総じて注目度が高く、発表後のネットワークセッションにおいても多くの人々に囲まれていました。多くの人々が日常的に金融機関/サービスを利用する日本では、Unbaked向けサービス自体想像しづらいかもしれません。それでは、海外のFintechシーンにおいて、なぜ、Unbanked/Underbanked向けサービスが現在注目を集めるのでしょうか?

1つには、その市場規模の大きさが挙げられます。前述のようにUnbanked/Underbankedと呼ばれる人々は全世界で20億人も存在し、米国においても人口の約3分の1近くを占めます。一人ひとりから得られる収益は限られたものであっても、その人口規模は大きく、潜在的にビジネスチャンスが窺える領域であると言えます。加えて、近年のテクノロジーの発展によりUnbanked/Underbanked向けの人々にとっても使いやすい、低コストなサービスを短期間で提供できるようになったことも重要です。クラウドサービスやスマートフォンの普及は言うに及ばず、近年ではAIやブロックチェーンといった新たな技術が急速に発展しており、これらの技術を用いることで、金融サービスを低コストで提供することが可能となったのです。

このように、Unbanked/Underbanked向けサービスにおいては、元々、多くの金融ニーズが存在しており、それらのニーズに対してテクノロジーの活用で応えるというFintechの本質的な側面が反映されています。今回ご紹介したサービスにおいては、単にテクノロジーの活用方法として優れているばかりでなく、企業や政府系機関との提携により、収益面で課題となるUnbanked向けサービスにおいてもビジネスとしてうまく成立することを目指しているのも特徴的です。今後ともUnbanked/Underbanked向けサービスにおいて、有望なFintechサービスが続々と誕生していくのではないでしょうか。今回のFinovate Spring 2016は、こうした可能性が大いに感じられるイベントでした。

(富士通研究所アメリカ 松原義明)

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