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世界最大級のFintechピッチイベントFinovate Spring 2016参加報告(その1) ~金融分野において本格活用が進むチャットボットサービス~

2016年6月3日(金曜日)

富士通総研では2012年より、毎年5月に開催されるFinovate Springに参加しています。本コラムにおいても幾度となくご紹介させていただいているFinovateは、Fintech関連のピッチイベントとしては世界有数の規模を誇り、世界各国から多くの参加者で賑わいます。また、近年は多くの日系企業が参加しており、Finovate Spring 2016では、日本からの参加者が実に100名を超えています。Finovate Springはシリコンバレーの中心地であるサンノゼで開催されることから、ニューヨークやロンドンといった他の地域で開催されるFinovateと比較して最新のテクノロジートレンドを意識したサービスが多く出展される傾向にあります。

今回のFinovate Springにおいて特に注目を集めたのが、コンピュータがユーザーと対話を行う「チャットボット」と呼ばれるサービスです。昨今ではMicrosoftが自社のチャットボットをTwitter上で公開し、Facebookが自社のメッセンジャーアプリ上に容易にチャットボットを展開できる開発プラットフォームを公開するなど急速に注目を集めるチャットボットサービスですが、金融分野においてもチャットボットを活用したサービスが実用化に向けて前進しつつあることが窺えます。

フィナンシャルアドバイザー向け専用チャットボットサービス -ForwardLane-

最初にご紹介するのは、昨年ニューヨークで起業したばかりのスタートアップであるForwardLaneのチャットボットサービスです。同社のサービスは、フィナンシャルアドバイザー(FA)といった金融の専門家向けに特化して開発することで完成度の高いものとなっています。

ForwardLaneのチャットボットサービスでは、トムソンロイターやモーニングスターといった大手金融・経済情報提供会社や、マーケットデータ専用のAPIを多数提供するXigniteと提携し、各社が提供する情報を個々のFA向けにカスタマイズして提供します。例えば、FAが自身の運用ポートフォリオに昨今の世界経済の状況がどう影響するか知りたい場合、FA側の知りたい内容を対話形式で確認し、提携先からの情報をFA向けにカスタマイズして提供します。この時、運用ポートフォリオに最も影響を与えると判断された情報を自動的に抽出して表示し、さらに、過去の情報入手傾向から判断して詳細な情報を引き続き提供し続けるといった個々のFAの嗜好に合わせた情報提供を行います。これらの情報はログ形式で保存され、コンプライアンス面も意識されています。

ForwardLaneが提供するサービスは、ユーザー(FA)とチャットボットが定型文を用いてコミュニケーションを行うことで、ユーザーが必要とする情報に即座にアクセスできます。FAという金融リテラシーの高い人々に特化して開発を進めることで、短期間で金融分野において必要となるノウハウを取得でき、サービス改善へとつながります。

写真1
写真.1 ForwardLaneのサービス画面(筆者撮影写真より)

金融機関ごとにパーソナライズされたチャットボットサービスの提供 -Kore-

続いてご紹介するKoreは、チャットボットやメッセージングアプリに特化してサービス提供を行っており、これまで企業ごとにカスタマイズされたチャットボットを提供してきた実績があります。

Koreのチャットボットサービスでは、金融機関の既存システムと連携し、最適な応答を行うことが特徴です。具体的には、CRMシステムやワークフローシステム、グループウェアなどの既存システムと連携し、ローンを申し込み中の顧客が必要書類の一部を提出し忘れている場合にその旨をメッセージとして通知したり、貯蓄口座の開設を希望する顧客に対して懇意にしている行員のスケジュールを参照して空いている日程をお伝えしたりするといったサービスを提供できます。

Koreでは、チャットボットエンジンに特化して開発を行い、既存システムとの連携を重視することで、金融機関ごとにパーソナライズしやすいチャットボットサービスの提供を実現しています。

写真2
写真.2 Koreのサービス画面(筆者撮影写真より)

チャットボットを活用したワンストップサービスの提供 -Sberbank-

最後にご紹介するのはロシア最大の金融機関であるSberbank(ロシア連邦貯蓄銀行)が提供する顧客向けチャットボットサービスです。1841年に創業された同行はその顧客数の多さ(預金者数:約1億3,500万人)からリテールチャネルを特に重視しており、2015年にはリテール顧客向けにオンラインバンキングのポータル画面を前面刷新するなどの変革を行っています。今回のFinovateでは、モバイルバンキングプラットフォーム上で動作するチャットボットサービスを紹介しています。

同行のチャットボットサービスでは、送金などの基本的な金融サービスをテキストによる指図で実行できるほか、提携する加盟店情報を組み込み、顧客に対して商品提案とその商品の決済までをワンストップで実現しています。例えば、旅行のお土産として最適な商品がないか問い合わせると、利用者のスマートフォン上の位置情報やこれまでのクレジットカード上の取引履歴などのデータを分析し、最適な商品とそれを取り扱う加盟店を画面に表示し、購入する場合はスマートフォン上で決済が完了します。

Sberbankの提供するチャットボットサービスは、金融機関独自のプラットフォーム上に展開することで、金融機関内の様々なデータを連携して活用することができます。これにより、利用者である顧客をうまく取り込み、利用頻度の高いサービスとして提供することが可能となります。

写真3
写真.3 Sberbankのサービス画面(筆者撮影写真より)

チャットボットサービスの適用による顧客コミュニケーションの高度化

今回ご紹介したサービスはいずれもチャットボットを切り口として、ユーザーとのコミュニケーションを改善することを目指したサービスです。これまでのチャットボットサービスは、必ずしも人間の言語を理解しているわけではなく、あらかじめ設定された特定の言語に反応して自動的にメッセージを返信するものでしたが、自然言語処理技術やディープラーニングをはじめとするAI関連技術の急速な発達により、人間の言葉を一部ながらも理解し、最適な応答が行えるまでに進化しています。今回ご紹介したチャットボットサービスは、プロユースや顧客業務の一部など、いずれも限られた領域での適用ですが、このような限られた領域においては、すでに実用に足る水準にまで到達しつつあることを示しています。

チャットボットサービスは、自然言語という方法を取ることで、ユーザーエクスペリエンス(UX)を毀損せずに顧客とのコミュニケーション対応に係る人手を減員することができるなど、金融機関にとっては、UX向上とコスト削減の両面から導入のメリットが見込まれます。それ以上に重要となるのは、これらチャットボットサービスは、ユーザーとのコミュニケーションを図る上で多くの顧客に関するデータを蓄積・分析できます。これらの顧客データを用いた分析の高度化により顧客が意識していない、いわば潜在的なニーズや欲求に対して的確に応対するようなサービスが期待されています。チャットボットサービスは、「言葉」という自然なインターフェースを通じて顧客から抵抗なく多くの情報を収集し、これに基づき最適な提案を行うことができる基盤となり得ます。チャットボットサービスは、将来的に金融機関と顧客のコミュニケーションのあり方そのものを抜本的に変革していくものになるかもしれません。

(富士通研究所アメリカ 松原義明)

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