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世界最大級のFintech(フィンテック)カンファレンスMoney20/20参加報告

2015年12月9日(水曜日)

2015年の金融業界は、Fintech一色であったと言っても差し支えがないように思われます。特にFintechのトレンドが多くの金融機関、そして公的機関をも巻き込み、大きな潮流となったことは特筆すべきことです。今後、Fintechに関連してどのような新しいサービスが誕生していくのでしょうか? これを紐解く手がかりとして、今回は北米最大のFintechとリテール決済に関するカンファレンスであるMoney20/20への視察結果、ならびにそこから導き出される今後のサービス動向についてご紹介したいと思います。

富士通総研では、Fintechやリテール決済の最新トレンドに関する情報収集を目的に、2013年より継続してMoney 20/20に参加しております。同イベントは、金融業界において世界最大級の規模で開催されるイベントであり、本年は、過去最大の約12,000人が参加し、多くの金融機関関係者ならびにスタートアップ関係者で賑わいました。Money20/20では、毎年、大手金融機関のトップや有力Fintechスタートアップの創業者がキーノートスピーチに登壇し、自社の新たな金融サービスを発表するなど、全世界から注目を集めるカンファレンスとなっています。

Money20/20が対象とするトピックは多岐にわたるため、そのすべてをお伝えすることは難しいのですが、以下では、特に注目を集めたトピックであるモバイル決済、ブロックチェーン、そしてミレニアル世代に焦点を当ててご紹介したいと思います。

競争が激化するモバイル決済サービス

今回のMoney20/20において最も注目を集めた講演が、大手金融機関ChaseのConsumer & Community Banking部門トップであるGordon Smith氏のキーノートスピーチです。同氏は、Chase Payと呼ばれるChase独自のモバイル決済サービスを発表し、会場を大いに沸かせました。このモバイル決済サービスは、2016年中頃にChaseの顧客向けに提供される予定で、その決済手段にはNFCやQRコードの活用が予定されています。さらにWal-Martなどの大手小売事業者を中心に設立され、モバイル決済サービスCurrentCを提供予定のMCX社(Merchant Customer Exchange)との提携も発表されており、これら大手小売店の店頭でも利用可能となる予定です。加えて、加盟店側のネットワーク利用手数料は無料とされ、加盟店側にとってメリットのあるサービスになっているのも特徴です。

Chase は、今や米国の半分の世帯で利用されるなど、その取引ネットワークは拡大しており、約9,400万もの口座を有しています。このため決済取扱件数も莫大であり、1日に3,400万件もの取引が行われているとのことです。Chaseとしては、自行のこうした広大な取引ネットワークを有効に活用することも視野に入れ、モバイル決済の分野へと進出したと言えます。この他にも今回のMoney 20/20では、モバイル決済に関する今後の見通し等に関するセッションが開催され、2016年のモバイル決済の利用者は2015年に比べて、60%以上増加するといった見通しが公表されました。今後、米国においてもモバイル決済の利用が一般化していくことが予想されます。

写真1
写真.1 Chase Gordon Smith氏の講演(筆者撮影写真より)

金融サービスへの本格的な活用が進むブロックチェーン

Money20/20において注目が集まったもう1つの領域にブロックチェーンの活用が挙げられます。キーノートスピーチにおいてNASDAQのCEOであるBob Greifeld氏が登壇し、NASDAQの未公開株式市場での取引にブロックチェーンを活用することを正式に発表し、大いに注目を集めました。同取引システムは、Linqと名付けられ、その開発にあたっては、CitibankやVisa、そしてNASDAQから資金調達を受けたスタートアップであるChainや、デザインコンサルティングファームとして数多くの実績を有するIDEOが参画することが発表されています。

Money20/20開催に先立つ2015年9月、R3というFintech企業と大手金融機関9行が提携し、ブロックチェーンを金融サービスに活用するためのコンソーシアムを設立することが発表されました。その後、多くの金融機関がこの取り組みへの参加表明を行っており、現在では、世界の大手金融機関30行が参加する規模となっています。日本からは、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行のメガバンク2行が参加しています。今後は、金融機関主導によるブロックチェーンの金融サービスへの活用が本格化していくものと思われます。

写真2
写真.2 NASDAQクロージングベルセレモニーの模様(筆者撮影写真より)

ミレニアル世代と親和性の高いFintechサービス

今回のMoney20/20において注目を集めたトピックに「ミレニアル世代」が挙げられます。ミレニアル世代とは、米国における世代の呼称の1つであり、主に1980~2000年生まれを指します。米国のミレニアル世代は、人口のボリュームゾーンを占める一方、その財政的な状況が上の世代より悪化しているとも言われています。リーマンショックの影響を受けた世代であることや年々高騰する学費による学生ローンが借金として重くのしかかるなど、それまでの世代と比較して財政的に困難な状況にある者が多いのも特徴です。米国の金融サービスレビューサイトBankrate.comの調査によれば、ミレニアル世代の63%はクレジットカードを持たずに生活しているという結果まで出ています。

PayPalの元CTOであるMax Levchinは、ミレニアル世代を対象として、クレジットカードを持っていなくともネット上でのショッピングを楽しめるサービスであるAffirmを2012年に創業しました。 Affirmは、ECサイト上の支払い手段として提供され、購入する商品やソーシャルメディア情報などから設定金利を含めた与信判断が行われ、そのECサイト上で分割払いを選択することができる、いわば「月賦払い」を提供するサービスです。これにより、クレジットカードを持たない利用者であってもネットショッピングを行うことが可能です。Affirmを導入したECサイトによれば、顧客1人あたりの売上ならびにリピーター率が向上し、結果として売上増加につながったとしています。月賦払い自体は、古くからある金融商品ですが、Affirmでは、データ分析による独自のスコアリングモデルの構築やECサイトとのシームレスな連携といった顧客向けサービスとしての配慮により、若年層にとって使いやすいものへと変換したことが特徴的です。

顧客本位のFintechサービスの創出に向けて

今回のMoney20/20では、モバイル決済やブロックチェーンといったキーワードを中心に様々なサービス紹介が行われました。モバイル決済については米国においても本格的な普及フェーズに入ったことが窺えます。米国では、2014年よりApple Payがサービスを開始し、モバイル決済に関する一般的な認知度が向上したと伝えられていますが、その利用自体は伸び悩んでいるとも言われています。一方、モバイル決済サービスに参入する事業者は前述のように増加の一途を辿っています。モバイル決済分野で先行する日本では、小売事業者、交通事業者、そして通信事業者と多くのプレイヤーが参入したことにより市場が活性化した経緯がありますが、米国でも日本と同様の動きが見てとれることから、本格的な普及フェーズに入ったと推測できます。

ブロックチェーンについては、金融機関による活用が本格化していることが特徴です。本年7月にはCitibankが自行内で独自に流通する仮想通貨を開発中であるとの報道がなされるなど、今や多くの金融機関が自行サービスの高度化に向けてブロックチェーンを本格的に活用する段階となっています。重要となるのは、金融機関単独で開発を行うのではなく、ブロックチェーンに関して技術を有するスタートアップとの連携を積極的に推進している点です。Fintechにおけるサービス開発においては、スタートアップとの連携抜きには考えられないのかもしれません。

ミレニアル世代向けのFintechサービスであるAffirmは、そのビジネスモデルは旧来からある「月賦払い」を特徴とします。Fintechについては、そこで適用されている最新のテクノロジーに焦点が集まることが多いのですが、そのビジネスモデルについては実は旧来の物を活用していることが多いのも特徴です。重要となるのは、最新のテクノロジーをうまく活用して、その顧客経験を向上させることであると考えます。

今回のMoney 20/20の基調講演において、PayPalのCEOであるDan Schulmanは、世の中の人々がサービスに求めているものは、ブロックチェーンやトークナイゼーションといった技術についてではなく、そのサービスが安全に低コストで利用できることにあると訴えました。今後とも金融機関やスタートアップを中心にFintechのトレンドに合わせてサービス開発が進むものと思われますが、重要となるのは、こうした顧客にとってそれが本当に便利なものであるか、基本に立ち返ることであると考えます。

(シニアコンサルタント 松原義明)

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